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第77話 シス圧勝
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一瞬、何が起きたか分からなかった。
今にも噛まれそうだった首筋に、もうロウの牙の感覚はない。
え、なんで、どうして――。
蔦が這う地面に押し付けられていた顔を、頑張って上げる。頭や顎を激しく打ち付けた所為で、まだクラクラした。
でも、そんな状況だって、間違えることなんてあり得ない。
「小町は! 俺のだあああっ!」
「キャンッ!」
嗚咽が溢れて、もう止まらなかった。
「……うう、うあああ……っ!」
ドウウウンッという衝撃音と同時に、砂塵と枯葉が舞う。痛みを堪えつつ、上半身を起こした。
やっぱりそこにいたのは、青髪の吸血鬼だった。
壁に叩きつけられたロウが、震えながらも起き上がる。シスはひと蹴りで瞬時にロウの前に立ちはだかると、重そうな回し蹴りを決めた。
「キャウンッ!」
ロウは再び壁にドウウウンッ! と激しくぶつかると、今度はすぐには起き上がらなかった。そんなロウの前にツカツカと進むと、シスは全身に怒気を纏わせながら怒鳴る。
「馬鹿狼が! 小町に何した!」
ロウは人型では不利と考えたのか、狼の姿に戻ると牙を剥き恐ろしげな咆哮を上げた。
「いつもいつも俺の邪魔をしやがって! お前さえいなければ、お前さえいなければあああっ!」
ロウがシスに飛びかかった。シスはそれをヒョイと避ける。襟首をむんずと掴むと、両手でギギギ、とロウの首を締め上げていった。
「グ……ッグアア……ッ!」
ロウは、手足をばたつかせて、拘束から逃げようと試みる。でも、シスのリーチが長過ぎて届かなかった。みるみる内に、ロウの身体から力が抜けていく。
……これ、死んじゃうんじゃない!?
私は慌てて声を張り上げた。
「シ、シス! まだ大丈夫だったから! まだ番にされてないから!」
四つん這いで近寄ろうとして、足を蔦に取られて滑って地面に倒れ込んだ。ああもう、こんな肝心な時に――!
怒り過ぎて興奮状態にあるのか、シスの黄金色の瞳だけが異様に輝き、私の声かけには反応を示さない。
「俺から小町を攫う奴は、二度とそんな真似が出来ない様にしてやる……っ!」
「クウウン……ッ」
「シス……ッ!」
私は、きっと甘いんだろう。
だけど、やっぱりシスには亜人もヒトも殺してほしくないから。
私は、渾身の力で叫んだ。
「シス! 私の為に他の人を殺さないで!」
シスがビクッと反応する。よかった、今度は聞こえてる!
私は更に続けた。どうか伝わります様にと祈りながら。シスは優しい亜人だから、きっと分かってくれる筈だと信じて。
「お願いシス! 私に大事に思っている人がいる様に、ロウを大切に思っている人もいるだろうから!」
お願い、届いて。
「私の所為でその人がシスを恨むのなんて、嫌なの! シスは優しい人なのに、シスばっかり犠牲になるのは嫌!」
驚愕に見開かれた目が、私を真っ直ぐに見つめる。
「弟を……小夏を助ける為にここまで来たのに、代わりに別の大切な人の心を傷つけたくない!」
「小町……? 大切な人って、それって……」
ギリリ、と絞めていた手が、少しだけ緩んだ。
この、鈍感!
あまり人のことは言えない台詞を心の中で吐くと、私は無我夢中で叫ぶ。
「シスのことに決まってんでしょ! このアホ吸血鬼!」
「俺のことが……大切……」
鬼の形相だったシスの顔に、いつもの子供みたいな笑みが広がっていく。
「好きって言ったでしょ! 何で忘れてるのよ!」
「わ、忘れてないぞ! ちゃんと覚えてるぞー!」
ワタワタと慌て出すシスの様子は、もういつもの明るい太陽みたいなシスだ。
よかった、届いた。ほっとしたと同時に、身体の強張りが緩み、上半身がずるりと滑って床に伏せてしまった。起きあがろうと足を動かそうとしたら、あれ、動かない。
「小町! 大丈夫か!?」
シスが焦り顔で尋ねてきた。私は多分相当情けなくなっているだろう笑顔を、シスに向ける。
「はは、腰が抜けたみたい……」
「え!? ちょっと待ってろよー! あ、コイツどうしよう」
シスが、手の中のロウを困った様に見た。
うう、と苦しそうに喘ぐロウの目は虚で、涙が流れている。
シスはひとつ頷くと、ニカッと笑った。
「小町、ロウは殺さないから安心しろ! 小町が怖がる様なことはしないからな!」
あれ? あまりちゃんと伝わってなかったかも。でもまあ結果が一緒なら今はとりあえずいいか、と頷く。
「暫く動けない様にして、逃げられない様にするだけだから! な!」
「う、うん?」
何をするんだろう。すると、シスがロウの首筋にカプリと噛み付いた。喉仏が上下し始める。またロウの血を飲んでいるらしい。
ある程度ゴクゴク飲んだ後、ぐったりして目を瞑ってしまったロウ片手に、キョロキョロと辺りを見回す。
ロウを足許に置いた。壁を伝う頑丈そうな蔓を引っ張ってくると、それでロウの四つ足と顎をグルグルと巻く。あれは自力じゃ抜け出せそうにもない。
そのままロウを抱えて、外に向かった。……何してるんだろう。
シスが、ロウを管制塔前広場に放り投げる。銀色の機体が、シスの前でホバリングを始めた。Z2213くんだ。
「コイツが逃げ出さない様に見張っていてくれ! 殺しちゃ駄目だぞー!」
『済世区ノ小町サマノオ連レ様、承知致シマシタ』
二人のやり取りで、何となく察した。大方、全く空気を読まないZ2213くんが、シスが来た時に例のご用件はどうのっていうのを聞いたに違いない。
シスはその点素直だから、小町に用があるとでも答えたんだろう。
『済世区ノ小町サマノオ連レ様、『神の庭』トノ対話ハイカガイタシマショウカ』
マイペースだなあ。思わず感心していると、シスは同じように呑気に答えた。
「ちょっと先にやることがある。終わったら声を掛けるなー!」
『カシコマリマシタ。私ハコチラデ待機スレバヨロシイデショウカ』
Z2213くんの問いかけに、シスがうーんと唸って首を傾げる。
「……外で待機しててくれー! 小町は恥ずかしがり屋だからな、多分他の奴に見られるのは嫌だと思うんだ!」
『カシコマリマシタ』
Z2213くんは、そのままふわりと管制塔内から出て行ってしまった。その後ろ姿を腰に手を当てて見ていたシスが、くるりと私を振り返る。
嬉しそうにひょこひょこしながら戻ってくると、床にへばりついていた私を軽々と抱き上げた。いつもの横抱きに、この腕の中に帰ってこれたという安堵が広がる。
「小町! 間に合ってよかった」
「シス! 置いていってごめんね……っ」
ひし、とシスの首に抱きつくと、シスは私の首に顔を埋めてすりすりした。そしてピクリという反応の後、突然顔を上げる。
超絶美形な顔には、明らかな怒りが浮かんでいた。な、なに――!?
無言のまま、枯葉がこんもりと積まれたエレベーターホール最奥にスタスタと向かう。
赤茶のポンチョを片手で着ていた脱ぐと、枯れ葉の上に敷いた。腰が抜けたって言ったから、休む場所を用意しているのかも?
やっぱりシスって優しいな、ふふ、なんて思ったけど。
シスはそこに私をそっと下ろすと、私の上に覆い被さる様にして、スンスンと鼻を鳴らし始めた。
眉間に深い皺を寄せると、低い低い声を出す。
「馬鹿狼の匂いは、さっさと消さないとな……」
「へ?」
間抜けな声を出すと、超至近距離にあるシスの黄金色の瞳が、キランと妖しく瞬いた。
今にも噛まれそうだった首筋に、もうロウの牙の感覚はない。
え、なんで、どうして――。
蔦が這う地面に押し付けられていた顔を、頑張って上げる。頭や顎を激しく打ち付けた所為で、まだクラクラした。
でも、そんな状況だって、間違えることなんてあり得ない。
「小町は! 俺のだあああっ!」
「キャンッ!」
嗚咽が溢れて、もう止まらなかった。
「……うう、うあああ……っ!」
ドウウウンッという衝撃音と同時に、砂塵と枯葉が舞う。痛みを堪えつつ、上半身を起こした。
やっぱりそこにいたのは、青髪の吸血鬼だった。
壁に叩きつけられたロウが、震えながらも起き上がる。シスはひと蹴りで瞬時にロウの前に立ちはだかると、重そうな回し蹴りを決めた。
「キャウンッ!」
ロウは再び壁にドウウウンッ! と激しくぶつかると、今度はすぐには起き上がらなかった。そんなロウの前にツカツカと進むと、シスは全身に怒気を纏わせながら怒鳴る。
「馬鹿狼が! 小町に何した!」
ロウは人型では不利と考えたのか、狼の姿に戻ると牙を剥き恐ろしげな咆哮を上げた。
「いつもいつも俺の邪魔をしやがって! お前さえいなければ、お前さえいなければあああっ!」
ロウがシスに飛びかかった。シスはそれをヒョイと避ける。襟首をむんずと掴むと、両手でギギギ、とロウの首を締め上げていった。
「グ……ッグアア……ッ!」
ロウは、手足をばたつかせて、拘束から逃げようと試みる。でも、シスのリーチが長過ぎて届かなかった。みるみる内に、ロウの身体から力が抜けていく。
……これ、死んじゃうんじゃない!?
私は慌てて声を張り上げた。
「シ、シス! まだ大丈夫だったから! まだ番にされてないから!」
四つん這いで近寄ろうとして、足を蔦に取られて滑って地面に倒れ込んだ。ああもう、こんな肝心な時に――!
怒り過ぎて興奮状態にあるのか、シスの黄金色の瞳だけが異様に輝き、私の声かけには反応を示さない。
「俺から小町を攫う奴は、二度とそんな真似が出来ない様にしてやる……っ!」
「クウウン……ッ」
「シス……ッ!」
私は、きっと甘いんだろう。
だけど、やっぱりシスには亜人もヒトも殺してほしくないから。
私は、渾身の力で叫んだ。
「シス! 私の為に他の人を殺さないで!」
シスがビクッと反応する。よかった、今度は聞こえてる!
私は更に続けた。どうか伝わります様にと祈りながら。シスは優しい亜人だから、きっと分かってくれる筈だと信じて。
「お願いシス! 私に大事に思っている人がいる様に、ロウを大切に思っている人もいるだろうから!」
お願い、届いて。
「私の所為でその人がシスを恨むのなんて、嫌なの! シスは優しい人なのに、シスばっかり犠牲になるのは嫌!」
驚愕に見開かれた目が、私を真っ直ぐに見つめる。
「弟を……小夏を助ける為にここまで来たのに、代わりに別の大切な人の心を傷つけたくない!」
「小町……? 大切な人って、それって……」
ギリリ、と絞めていた手が、少しだけ緩んだ。
この、鈍感!
あまり人のことは言えない台詞を心の中で吐くと、私は無我夢中で叫ぶ。
「シスのことに決まってんでしょ! このアホ吸血鬼!」
「俺のことが……大切……」
鬼の形相だったシスの顔に、いつもの子供みたいな笑みが広がっていく。
「好きって言ったでしょ! 何で忘れてるのよ!」
「わ、忘れてないぞ! ちゃんと覚えてるぞー!」
ワタワタと慌て出すシスの様子は、もういつもの明るい太陽みたいなシスだ。
よかった、届いた。ほっとしたと同時に、身体の強張りが緩み、上半身がずるりと滑って床に伏せてしまった。起きあがろうと足を動かそうとしたら、あれ、動かない。
「小町! 大丈夫か!?」
シスが焦り顔で尋ねてきた。私は多分相当情けなくなっているだろう笑顔を、シスに向ける。
「はは、腰が抜けたみたい……」
「え!? ちょっと待ってろよー! あ、コイツどうしよう」
シスが、手の中のロウを困った様に見た。
うう、と苦しそうに喘ぐロウの目は虚で、涙が流れている。
シスはひとつ頷くと、ニカッと笑った。
「小町、ロウは殺さないから安心しろ! 小町が怖がる様なことはしないからな!」
あれ? あまりちゃんと伝わってなかったかも。でもまあ結果が一緒なら今はとりあえずいいか、と頷く。
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「う、うん?」
何をするんだろう。すると、シスがロウの首筋にカプリと噛み付いた。喉仏が上下し始める。またロウの血を飲んでいるらしい。
ある程度ゴクゴク飲んだ後、ぐったりして目を瞑ってしまったロウ片手に、キョロキョロと辺りを見回す。
ロウを足許に置いた。壁を伝う頑丈そうな蔓を引っ張ってくると、それでロウの四つ足と顎をグルグルと巻く。あれは自力じゃ抜け出せそうにもない。
そのままロウを抱えて、外に向かった。……何してるんだろう。
シスが、ロウを管制塔前広場に放り投げる。銀色の機体が、シスの前でホバリングを始めた。Z2213くんだ。
「コイツが逃げ出さない様に見張っていてくれ! 殺しちゃ駄目だぞー!」
『済世区ノ小町サマノオ連レ様、承知致シマシタ』
二人のやり取りで、何となく察した。大方、全く空気を読まないZ2213くんが、シスが来た時に例のご用件はどうのっていうのを聞いたに違いない。
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Z2213くんの問いかけに、シスがうーんと唸って首を傾げる。
「……外で待機しててくれー! 小町は恥ずかしがり屋だからな、多分他の奴に見られるのは嫌だと思うんだ!」
『カシコマリマシタ』
Z2213くんは、そのままふわりと管制塔内から出て行ってしまった。その後ろ姿を腰に手を当てて見ていたシスが、くるりと私を振り返る。
嬉しそうにひょこひょこしながら戻ってくると、床にへばりついていた私を軽々と抱き上げた。いつもの横抱きに、この腕の中に帰ってこれたという安堵が広がる。
「小町! 間に合ってよかった」
「シス! 置いていってごめんね……っ」
ひし、とシスの首に抱きつくと、シスは私の首に顔を埋めてすりすりした。そしてピクリという反応の後、突然顔を上げる。
超絶美形な顔には、明らかな怒りが浮かんでいた。な、なに――!?
無言のまま、枯葉がこんもりと積まれたエレベーターホール最奥にスタスタと向かう。
赤茶のポンチョを片手で着ていた脱ぐと、枯れ葉の上に敷いた。腰が抜けたって言ったから、休む場所を用意しているのかも?
やっぱりシスって優しいな、ふふ、なんて思ったけど。
シスはそこに私をそっと下ろすと、私の上に覆い被さる様にして、スンスンと鼻を鳴らし始めた。
眉間に深い皺を寄せると、低い低い声を出す。
「馬鹿狼の匂いは、さっさと消さないとな……」
「へ?」
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