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第49話 もういい
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翌朝目が覚めると、枕元にサーシャさんが腰掛けていた。白い翼に日光が透けてキラキラしている。
私が起きたのに気付いたサーシャさんが、穏やかな笑みを浮かべた。
「小町ちゃん、おはよう」
「……サーシャさん、なんで……?」
寝ぼけ眼を擦り、起き上がる。
サーシャさんは私を見てクスリと笑うと、頭をヨシヨシと撫でてくれた。
「聞いたわよ。倒れた後に勝手に着替えさせられたんですって?」
あのアホ吸血鬼。またペラッとそういうことを喋ってしまったらしい。
思わずブスッとしてしまったけど、それでも気になって尋ねた。
「……シスは今どうしてますか?」
今ここにいるサーシャさんが聞いているということは、まだ近くにはいるのかな。懐きかけてたペットがいきなり噛みついたから、呆れてどこかに行っちゃう可能性もあるかなって思ったけど。
あ、血が欲しいんだからいるか。だって私は食糧だもんね。
サーシャさんが、出口の方に一瞥をくれた。
「今もずっとドアの外で粘ってるわよ」
「は?」
「小町ちゃんをひとりに出来ない、でも怒らせたから入れないって、追い出された後はあそこで番をしてたみたいよ。ふふ」
ふふ、て。ということは、私がギャンギャン泣いてたのも聞こえてたのかもしれない。……嫌だな。
サーシャさんが肩を竦めた。
「下で待っても全然降りてこないしと思って店主に聞いたら、夜中に大喧嘩してる声が聞こえたって聞いてね。それでタロウと様子を見にきたら、ドアの前でしょんぼりしてるシスくんを見つけたっていう訳よ」
それでシスに何があったか尋ねたところ、どうも勝手に脱がせて着替えさせたのが悪かったらしい、と語ったそうだ。
分かっていたけど、やっぱりシスには伝わってなかったんだなあと思うと、悲しくなってきた。それも確かに怒りの対象ではあるけど、そうじゃないのに。私を女の子としてちっとも見てくれてないことが嫌だったのに。
ぽろり、と涙が溢れた。
サーシャさんが、優しく私の頭を撫でる。優しい大人の笑みを浮かべて、柔らかく囁いた。私もこれくらい色気があったら、少しは女として見てもらえたのかな。でも駄目か。だって私は亜人じゃないもん。
「ほら、泣かないの。可愛いお顔が台無しよ」
「……可愛いって言ってたのも、ペットとしてですもんね。だから別にいいです。もういいんです……っ」
「あら……」
安全な済世区を出てここまできたのは、シスと両想いになる為じゃない。私は小夏の病気を何とかしたいと、『神の庭』にコンタクトを取る為にはるばるここまでやって来た。その目的は今も変わっていない。それが可能かどうかの答えは、大分手に届く範囲へと入ってきた。
だから、シスが亜人のくせに格好よくて案外いい奴だったから、ちょっと逆上せて優先順位を見失っていただけ。冷静さを取り戻せば、自分が間違ってたことなんてすぐ分かる。
「小町ちゃん。シスくんはデリカシーはないけど、ペットとは思ってないと思うけど」
頭を撫で続けられながら、サーシャさんが優しく慰めてくれた。でも、私は首を横に振る。
「慰めてもらわなくて、大丈夫ですから」
「小町ちゃんってば」
「シスとの契約は、ネクロポリスまで。元々そういう話だったし」
いっそのこと、この町で別れるのもありかもしれない。サーシャさんとタロウさんなら、ヒトがひとりで旅が出来る様な方法も知っているかもしれないし。
……でも、血がほしいアホ吸血鬼は嫌がるかな。私は喋る家畜なんだし。
サーシャさんが、首を傾げる。
「昨日、シスくんから話を聞いてないの?」
「負けたから護衛失格か、みたいなのは聞きましたけど」
「あんの馬鹿が……」
低い声でサーシャさんが呟いた。よく分からないけど、いつまでも管を巻いている訳にもいかない。こうしている間にも、小夏は少しずつ死に近づいていってるんだから。
アホなシスと一緒に過ごしていたから、そんな事実に目を背けてちょっと気が緩んでいた。
涙を腕でグッと拭くと、無理やり笑顔を作る。
「……支度しますね。地図屋への案内、お願いします」
「小町ちゃん、あのね、シスくんは……」
「もうシスの話はいいですから」
きっぱりと告げると、サーシャさんは何か言いたげだったけど、ちゃんとやめてくれた。
「部屋の外で待ってるわね」
「はい、すみません」
サーシャさんがドアを開けると、一瞬だけ壁にもたれかかってこちらを見ているシスと目が合った。
泣きそうな顔をして、馬鹿みたい。馬鹿吸血鬼。
すぐにドアが閉じられたので、私は支度を始めた。
私が起きたのに気付いたサーシャさんが、穏やかな笑みを浮かべた。
「小町ちゃん、おはよう」
「……サーシャさん、なんで……?」
寝ぼけ眼を擦り、起き上がる。
サーシャさんは私を見てクスリと笑うと、頭をヨシヨシと撫でてくれた。
「聞いたわよ。倒れた後に勝手に着替えさせられたんですって?」
あのアホ吸血鬼。またペラッとそういうことを喋ってしまったらしい。
思わずブスッとしてしまったけど、それでも気になって尋ねた。
「……シスは今どうしてますか?」
今ここにいるサーシャさんが聞いているということは、まだ近くにはいるのかな。懐きかけてたペットがいきなり噛みついたから、呆れてどこかに行っちゃう可能性もあるかなって思ったけど。
あ、血が欲しいんだからいるか。だって私は食糧だもんね。
サーシャさんが、出口の方に一瞥をくれた。
「今もずっとドアの外で粘ってるわよ」
「は?」
「小町ちゃんをひとりに出来ない、でも怒らせたから入れないって、追い出された後はあそこで番をしてたみたいよ。ふふ」
ふふ、て。ということは、私がギャンギャン泣いてたのも聞こえてたのかもしれない。……嫌だな。
サーシャさんが肩を竦めた。
「下で待っても全然降りてこないしと思って店主に聞いたら、夜中に大喧嘩してる声が聞こえたって聞いてね。それでタロウと様子を見にきたら、ドアの前でしょんぼりしてるシスくんを見つけたっていう訳よ」
それでシスに何があったか尋ねたところ、どうも勝手に脱がせて着替えさせたのが悪かったらしい、と語ったそうだ。
分かっていたけど、やっぱりシスには伝わってなかったんだなあと思うと、悲しくなってきた。それも確かに怒りの対象ではあるけど、そうじゃないのに。私を女の子としてちっとも見てくれてないことが嫌だったのに。
ぽろり、と涙が溢れた。
サーシャさんが、優しく私の頭を撫でる。優しい大人の笑みを浮かべて、柔らかく囁いた。私もこれくらい色気があったら、少しは女として見てもらえたのかな。でも駄目か。だって私は亜人じゃないもん。
「ほら、泣かないの。可愛いお顔が台無しよ」
「……可愛いって言ってたのも、ペットとしてですもんね。だから別にいいです。もういいんです……っ」
「あら……」
安全な済世区を出てここまできたのは、シスと両想いになる為じゃない。私は小夏の病気を何とかしたいと、『神の庭』にコンタクトを取る為にはるばるここまでやって来た。その目的は今も変わっていない。それが可能かどうかの答えは、大分手に届く範囲へと入ってきた。
だから、シスが亜人のくせに格好よくて案外いい奴だったから、ちょっと逆上せて優先順位を見失っていただけ。冷静さを取り戻せば、自分が間違ってたことなんてすぐ分かる。
「小町ちゃん。シスくんはデリカシーはないけど、ペットとは思ってないと思うけど」
頭を撫で続けられながら、サーシャさんが優しく慰めてくれた。でも、私は首を横に振る。
「慰めてもらわなくて、大丈夫ですから」
「小町ちゃんってば」
「シスとの契約は、ネクロポリスまで。元々そういう話だったし」
いっそのこと、この町で別れるのもありかもしれない。サーシャさんとタロウさんなら、ヒトがひとりで旅が出来る様な方法も知っているかもしれないし。
……でも、血がほしいアホ吸血鬼は嫌がるかな。私は喋る家畜なんだし。
サーシャさんが、首を傾げる。
「昨日、シスくんから話を聞いてないの?」
「負けたから護衛失格か、みたいなのは聞きましたけど」
「あんの馬鹿が……」
低い声でサーシャさんが呟いた。よく分からないけど、いつまでも管を巻いている訳にもいかない。こうしている間にも、小夏は少しずつ死に近づいていってるんだから。
アホなシスと一緒に過ごしていたから、そんな事実に目を背けてちょっと気が緩んでいた。
涙を腕でグッと拭くと、無理やり笑顔を作る。
「……支度しますね。地図屋への案内、お願いします」
「小町ちゃん、あのね、シスくんは……」
「もうシスの話はいいですから」
きっぱりと告げると、サーシャさんは何か言いたげだったけど、ちゃんとやめてくれた。
「部屋の外で待ってるわね」
「はい、すみません」
サーシャさんがドアを開けると、一瞬だけ壁にもたれかかってこちらを見ているシスと目が合った。
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すぐにドアが閉じられたので、私は支度を始めた。
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