雨宮課長に甘えたい

コハラ

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庶務係

《5》

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阿久津から宣伝部から外されると言われた時、納得できなくて理由を聞いた。そしたら「お前が使えないからだ」と言われ、腸が煮えくり返るような想いをした。阿久津が宣伝部に来てから、私はいい仕事が出来ていなかった。阿久津から見たら確かに使えない部下だった。

言い返せない自分が死ぬほど悔しかった。だから阿久津を見返してやりたい。だけど、今の私に何ができるの?

ぐびっと切子グラスに注がれた冷酒を飲んだ。

「いい飲みっぷり」と言って栗原さんが空のグラスに注いでくれる。それもすぐに飲んで、次に後藤さんが注いでくれて、それも飲んで、次にまりえちゃんが注いでくれて、だんだん意識が遠くなる。

「中島さん、帰るよ」
もう帰る時間なんだ。
よいしょと立ち上がった時、何かに滑って転んだ。

「危ない」

畳に倒れる寸前で、誰かが支えてくれた。
甘い香りがする。いい匂いだなと思って見上げると雨宮課長の顔があった。

「あ、雨宮課長?」

びっくりして瞬きしていると雨宮課長が笑った。
夢でも見てるのかと思って頬をつねる。痛い。ちゃんと痛みがあるから現実だ。

「雨宮課長、いらしてたんですか? いつから?」

飲み会の最初には間違いなくいなかった。

「酷いな。中島さん、30分前から僕も一緒に飲んでいたじゃない」

そうだっけ?
クスクスと笑うみんなの笑い声がした。

「中島ちゃん、酔っ払いすぎ」
栗原さんにポンっと背中を叩かれた。

「雨宮課長は中島ちゃんの為に出張から帰ってくるなり駆けつけたのよ」
「栗原さん、余計な事を言わないで下さい。さあ、帰りますよ」

よくわからないまま、みんなと居酒屋を出た。

「雨宮課長、ごちそうさまです」
雨宮課長が最後にお店から出てくるとみんなが言った。お会計は雨宮課長が払ってくれたよう。

「では、お疲れ様でした」
庶務係のみんなが散っていく。
気づくと雨宮課長と2人だけになっていた。

2人きりだと思ったら急にドキドキして来た。
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