雨宮課長に甘えたい

コハラ

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庶務係

《4》

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夜7時。定時で会社を出たあとは予定通り飲み会に参加した。
居酒屋『久兵衛』は軒先に赤提灯がぶら下がるこじんまりとした居酒屋で、何だか懐かしい雰囲気がした。

席はカウンターとお座敷があり、私たちは奥のお座敷に案内された。
ビールで乾杯をしてから、風見係長おすすめの卵焼き、お刺身、焼き鳥などを頂きながらみんなの話に耳を傾ける。

実はみんな、私と同じように異動になって庶務係に来たらしい事がわかった。意外だったのが風見係長が経営企画部という、うちの会社ではエリート社員ばかりが集まる物凄い部署にいた事だった。
 
それに栗原さんは秘書課で社長秘書をしていたらしい。私にとって曇の上の存在の社長と仕事をしていたなんて栗原さんも凄い人だ。
 
で、後藤さんもどんな凄い所にいたかと思ったら、「あ、僕は普通にシステム部から来ました。風見係長と栗原さんに比べたら全然スゴくないので」と言われた。

後藤さんの発言を受けてまりえちゃんが「そんな事ないです。後藤さんは頼りになるんですよ!」と凄い勢いで話し出す。

「パソコンで困った事があったら後藤さんです。庶務係で一番の売れっ子で、いろんな部署から指名入るんです」
へえー、そうなんだと、まりえちゃんに相槌を打つと、風見係長も栗原さんも「確かに一番の売れっ子は後藤くんだね」と口をそろえる。

言われてみれば今日、防災訓練から帰って来たあと、後藤さんだけが席にいなかった。きっと他部署に呼ばれていたんだ。パソコンに強い人がいるのは心強い。

「みんなさ、いろいろあって、庶務係ここに飛ばされたワケ。あ、まりえちゃんは違うけどね」
 アルコールですっかり頬をピンク色に染めた栗原さんが言った。

「中島さんも宣伝部から異動になって悔しいと思うけどさ、ここにいる人たちは、そういうのよくわかるからさ。ここも楽しいよ。定時で帰れるし、自分の人生を見つめ直すいい機会だと思うな」

栗原さんがポンッと宥めるように私の肩を叩いた。
その途端、今日まで我慢していた感情が溢れる。
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