810 / 820
連載
三度目の首都㉕
しおりを挟む
『あの雌臭いのだーっ』
飛び出してきたのはいいが、アレスがきゃいんと言わんばかりの顔で、私達のところに一瞬で移動。
『臭いのだ、あの雌臭いのだっ、水で流していいのだ?』
「ダメよ、遥か彼方に吹き飛ばすやろ」
『くうーん、臭いのだー』
あの魔女みたいな聖女は、どんな臭いを纏っとるんやろ?
最初からいたのと、槍を持ち突撃かましてきた、機能性の低そうな鎧の聖騎士達と、成金神官達がすべて倒れている。ほとんどオスヴァルドさんとエドワルドさんがのしたけどね。
僅か数分間の間。
「はあ、いい加減降参せんね。どうしたらうちらに勝てると思っとるん?」
私はギリギリとしている魔女みたいな聖女に声をかける。早く、女の子を救出したい。女の子は馬車の中だが。
『ユイ、童は起きているのでが、反応がないのです』
『これだけの騒ぎになれば、童なら怯えるか、興味を引くのにおかしいわね』
ビアンカとルージュが様子を教えてくれる。これだけの騒ぎなのに、全く動じない? 起きているのに反応がない? なんや、すごい不安になってきた。もしかして、精神状態がかなり疲弊しているんやないかな? 回りの騒ぎに、心が引き付けられない程に。
あ、想像以上に、不味い状況やない。
魔女みたいな聖女は、高いヒールの靴を踏み鳴らす。ヒール? 聖女のイメージが、清楚なイメージが。
だいたい、聖女ってのはこの世界で生まれない。よその異世界から来た人が称号として持つ以外は存在しない。聖女に近しい存在で、こちらの世界で生まれる称号が神子だ。いまでも混在して勘違いされて使われている。事実、この異世界で『聖女』の称号を実際もっているのはあの華憐だけだ。
地団駄を踏む魔女みたいな聖女は、ますます魔女感が増す。品がないなあ。
「我らの神はっ、お前達のような異端者を許さないっ、さあ聖騎士達よ、誇る高き神官達よ、立ち上がるのですっ」
魔女感が増した聖女が、高らかに響き渡る声。
「優衣、あん人の魔法は本物や。広範囲に影響を及ぼす治療魔法や」
て、父が後ろから教えてくれる。
後でチュアンさんに聞いただけど、これは高ランクの治療魔法になるそうだ。見た目魔女だけど、凄腕のヒーラーなんや。晃太よりランクの高い支援魔法まで使えるし。
…………革新派なんてところに身をおかなければ、別の道が、たくさんあったんやないかな?
今は、女の子の保護が先や。
立ち上がられるのは、もう面倒や。
「ルージュ、拘束して」
『分かったわ、えいっ』
ルージュの足元から黒い触手が伸びて、まとめでぐるぐるごちん。
「アレス、黙らせて」
『分かったのだー』
とことこと、ぐるぐるごちんした集団のところに向かうアレス。聖騎士達も成金神官達も必死に踠いているが、ルージュの闇の触手が簡単にちぎれるわけない。
アレスが踠く集団の前に。こちらからはシュッとしたお尻しか見えない。
こちらにも、なにやら冷気が伝わる。踠き罵声を浴びさせていた集団の顔色が一気に悪くなる。
『黙れ』
いつか、アレスから放たれた強烈な冷気。もっと強烈なものが放たれて、踠く集団が一斉に白目向く。
『主よ、黙らせたのだ。ご褒美はあんパンがいいのだ。あの臭い雌は埋めるのだ?』
ついでに卵でも買おっかな、みたいに言わんで。
「アレス、もうよかよ。さて」
私はさらに魔女度が増した聖女に向き合う。すぐ側にホークさんとチュアンさん。オスヴァルドさんとエドワルドさんもいる。もちろんビアンカとルージュもだ。イシス達もゆっくり着地している。
「この穢らわしい異教徒めっ、我らの神は、お前達に、怒りの鉄槌を下そうぞっ」
はぁ。
「なら、やってみたら?」
できもせんで、さ。
聖女には『聖女の奇跡』という力がある。これは『聖女』が『神様』に『祈り』と共に『魔力』と『あるもの』を代償にして発動する力。内容は色々だけど、歴代ほとんどの聖女は、人助けの為に使っていると聞いた。魔力以外にも代償を差し出して、人助けをするから、人々は感謝を込めて『聖女』と呼び、慕うのだ。
歴史の中で、魔物に襲われた村を救おとして、『聖女の奇跡』を使い、魔物を一掃した記録もある。
攻撃に使えない訳ではないって事だ。
だけど、この人は、聖女ではない。
今までバレなかったのは、色んな理由があるやろうけど。今は、別によか。早く、女の子を保護したか。
「な、何をっ」
私がそんな反応すると思っていなかったのか、少したじろんでいる。
「やから、やってみんね。私はここや、逃げも隠れもせん、その神の鉄槌とやら、使ってみんね」
私は、顔を醜い歪ませた、魔女みたいな聖女に挑発した。
飛び出してきたのはいいが、アレスがきゃいんと言わんばかりの顔で、私達のところに一瞬で移動。
『臭いのだ、あの雌臭いのだっ、水で流していいのだ?』
「ダメよ、遥か彼方に吹き飛ばすやろ」
『くうーん、臭いのだー』
あの魔女みたいな聖女は、どんな臭いを纏っとるんやろ?
最初からいたのと、槍を持ち突撃かましてきた、機能性の低そうな鎧の聖騎士達と、成金神官達がすべて倒れている。ほとんどオスヴァルドさんとエドワルドさんがのしたけどね。
僅か数分間の間。
「はあ、いい加減降参せんね。どうしたらうちらに勝てると思っとるん?」
私はギリギリとしている魔女みたいな聖女に声をかける。早く、女の子を救出したい。女の子は馬車の中だが。
『ユイ、童は起きているのでが、反応がないのです』
『これだけの騒ぎになれば、童なら怯えるか、興味を引くのにおかしいわね』
ビアンカとルージュが様子を教えてくれる。これだけの騒ぎなのに、全く動じない? 起きているのに反応がない? なんや、すごい不安になってきた。もしかして、精神状態がかなり疲弊しているんやないかな? 回りの騒ぎに、心が引き付けられない程に。
あ、想像以上に、不味い状況やない。
魔女みたいな聖女は、高いヒールの靴を踏み鳴らす。ヒール? 聖女のイメージが、清楚なイメージが。
だいたい、聖女ってのはこの世界で生まれない。よその異世界から来た人が称号として持つ以外は存在しない。聖女に近しい存在で、こちらの世界で生まれる称号が神子だ。いまでも混在して勘違いされて使われている。事実、この異世界で『聖女』の称号を実際もっているのはあの華憐だけだ。
地団駄を踏む魔女みたいな聖女は、ますます魔女感が増す。品がないなあ。
「我らの神はっ、お前達のような異端者を許さないっ、さあ聖騎士達よ、誇る高き神官達よ、立ち上がるのですっ」
魔女感が増した聖女が、高らかに響き渡る声。
「優衣、あん人の魔法は本物や。広範囲に影響を及ぼす治療魔法や」
て、父が後ろから教えてくれる。
後でチュアンさんに聞いただけど、これは高ランクの治療魔法になるそうだ。見た目魔女だけど、凄腕のヒーラーなんや。晃太よりランクの高い支援魔法まで使えるし。
…………革新派なんてところに身をおかなければ、別の道が、たくさんあったんやないかな?
今は、女の子の保護が先や。
立ち上がられるのは、もう面倒や。
「ルージュ、拘束して」
『分かったわ、えいっ』
ルージュの足元から黒い触手が伸びて、まとめでぐるぐるごちん。
「アレス、黙らせて」
『分かったのだー』
とことこと、ぐるぐるごちんした集団のところに向かうアレス。聖騎士達も成金神官達も必死に踠いているが、ルージュの闇の触手が簡単にちぎれるわけない。
アレスが踠く集団の前に。こちらからはシュッとしたお尻しか見えない。
こちらにも、なにやら冷気が伝わる。踠き罵声を浴びさせていた集団の顔色が一気に悪くなる。
『黙れ』
いつか、アレスから放たれた強烈な冷気。もっと強烈なものが放たれて、踠く集団が一斉に白目向く。
『主よ、黙らせたのだ。ご褒美はあんパンがいいのだ。あの臭い雌は埋めるのだ?』
ついでに卵でも買おっかな、みたいに言わんで。
「アレス、もうよかよ。さて」
私はさらに魔女度が増した聖女に向き合う。すぐ側にホークさんとチュアンさん。オスヴァルドさんとエドワルドさんもいる。もちろんビアンカとルージュもだ。イシス達もゆっくり着地している。
「この穢らわしい異教徒めっ、我らの神は、お前達に、怒りの鉄槌を下そうぞっ」
はぁ。
「なら、やってみたら?」
できもせんで、さ。
聖女には『聖女の奇跡』という力がある。これは『聖女』が『神様』に『祈り』と共に『魔力』と『あるもの』を代償にして発動する力。内容は色々だけど、歴代ほとんどの聖女は、人助けの為に使っていると聞いた。魔力以外にも代償を差し出して、人助けをするから、人々は感謝を込めて『聖女』と呼び、慕うのだ。
歴史の中で、魔物に襲われた村を救おとして、『聖女の奇跡』を使い、魔物を一掃した記録もある。
攻撃に使えない訳ではないって事だ。
だけど、この人は、聖女ではない。
今までバレなかったのは、色んな理由があるやろうけど。今は、別によか。早く、女の子を保護したか。
「な、何をっ」
私がそんな反応すると思っていなかったのか、少したじろんでいる。
「やから、やってみんね。私はここや、逃げも隠れもせん、その神の鉄槌とやら、使ってみんね」
私は、顔を醜い歪ませた、魔女みたいな聖女に挑発した。
3,051
お気に入りに追加
7,674
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。