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三度目の首都㉔

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 はっきり言いましょう。
 うちのビアンカとルージュに勝てるのは、この大陸でイシスかアレスかシヴァか母くらいだ。噂の皇帝竜カイザードラゴンは除いてね。
 抜刀して襲いかかる機能性の低そうな鎧の聖騎士達は、魔女みたいな聖女の支援を受けていた。比べたら申し訳ないが、ルリとクリスを守るように立っているBランクのガリストさんが、一対一のタイマンしたらガリストさんが負ける。
 まあ、それも支援魔法が、あってからね。純粋な力比べをしたら引き分け、もしくはガリストさんが競り勝つかなって感じ。
 ま、ビアンカとルージュにたどり着く前に、立ちはだかるオスヴァルドさんとエドワルドさんが、薙ぎ倒している。オスヴァルドさんも、当然強いだろうなあって思っていたら、うん、強かっ。
 向こうは抜刀しているが、オスヴァルドさんは鞘に剣を収めたまま受け流し、腹パン。大の大人の男性が吹き飛ぶ。えー、機能性の低そうな鎧着ているのにー。エドワルドさんも戦闘モードのアルスさん顔負けの動きで、ごつんごつんと蹴りが入る。早いのなんの。
『ばあば、じいじ、ヒスイが守るから大丈夫だからねっ』
 よしよしと両親がヒスイを撫でている。
『魔法使って追っ払ったらいかんねん?』
「「いかんよ」」
『噛むんは?』
「「いかんよ」」
 コハクがむー、としている。コハクの顎の力も結構な威力よ、手羽元なんて煎餅みたいにパリパリしながら食べてるから。
 両親にはミゲル君が張り付いている。すぐ近くにガリストさんとリィマさんがルリとクリスといる。
 あ、いかん、ほのぼの見てしまった。
「たあああぁぁぁっ、べふっ」
 一人の機能性の低そうな鎧の聖騎士達が、寸前でべしゃりと転倒。元気が赤いマントを咥えている。大丈夫かね? いい音したけど。
『元気、気絶させるのです』
「わふんっ」
 バリッ、と音がなり、気絶する。
「おのれっ、穢らわしい魔物めっ」
 うちのかわいか元気に、なんて事を。武器用のフライパンを抜きそうになる。
「ダウンッ、ダウンッ、ダウンッ」
 怒り気味の晃太がデバフを連発している。向こうの支援魔法の方がレベルが高いから、完全相殺にならないが、晃太は連発している。
「くうん? わんっ」
 バリッ、と気絶者。申し訳ないとかない。うちのかわいか元気に、穢らわしいとか言ったからね。
 オスヴァルドさんとエドワルドさんの隙間を抜けてきたのは、ブエルさんとゲオルグさんの前にケルンさんがするっと腕を掴んで、叩きつけている。蹴りをいれて、はい、気絶。流石、Sランク冒険者。基礎戦闘力はバッチリあるんよね。よく、甘味絡みでヒェリさんに関節技かけられているけど、ヒェリさんが純粋な力と戦闘能力が上。ただ、ケルンさんは豊富な魔力でそれを十分に補えている。因みに、戦闘モードのアルスさんも一撃で沈められるし、鷹の目の皆さんも束になっても勝てない。
 次々に倒れていく機能性の低そうな鎧の聖騎士達の隙間から、成金神官達がなにやら動作。
 あれはまさか、嘘やろ、攻撃魔法、街中でっ。まだ一般人の方もいるのにっ。
「ビアンカッ、ルージュッ」
『任せるのですっ』
『分かっているわっ、当てさせないわよっ、ふんっ』
 ビアンカがさっと走り出し、成金神官達をボウリングのピンみたいに、頭突きして回る。それでも放たれた火や光の矢は、ルージュの足元から溢れ出した真っ黒な波が包み込み、完全焼失。魔法が現れた瞬間、悲鳴が上がるが、あっという間にビアンカとルージュに消されて、戸惑いの歓声が上がる。
「何をしておるっ、魔物ごときにっ」
 苛立ちを隠さない魔女みたいな聖女。
『キーキー五月蝿いのです。うっ、臭いのですっ』
 たまらないと言った顔でビアンカがこちらを向く。
『水をかけていいのです?』
 あの甲板清掃したやつならいいかなって思ってしまったが、ダメよと合図を出そうとして更なる騒ぎが。
 避難していた一般人の方から悲鳴が上がる。
 なんと槍を持ち、魔法馬に騎乗した機能性の低そうな鎧の聖騎士達が突撃してきた。たぶん新たに出てきた感じ。本当にまだ一般人の方がねっ。
『心配ないのですよ』
『そうよ、問題ないわ』
 ビアンカとルージュの言葉通りになる。
「ぶひひひひーんっ」
 聞きなれた嘶きと共に、いきなり魔法馬が緊急停止。騎乗していた前に放り出されそうになり、必死に魔法馬にしがみついている。
 広場の6時の道から、ゆっくり姿を現したのは、ノワール。ちょっと、預けたとこから出てきたん? あ、手綱を必死に握るのは、預けたところで対応してくれた男性職員さん。普通の馬でも、人間の腕力で勝てない。さらにノワールは魔法馬でも上位の戦車馬チャリオット・ホースだ、当然馬力もハンパない。お怪我はなさそうで良かったが、後で謝罪しようっ。
『ノワールが魔法馬達を支配下にしたのです』
 ビアンカがキーキー喚く魔女みたいな聖女を、嫌そうに見て、こちらにとことこ戻って来る。支配下って。
「そんなのできるん?」
『強いものに従うのは当たり前よ』
「弱肉強食やね」
 動かなくなった魔法馬達の腹を必死に蹴る機能性の低そうな鎧の聖騎士達。もうノワールの支配下なら、言うこと聞かないやろうけど、無駄に痛め付けられているようで可哀相や。
「ブヒヒンッ」
 ノワールが騎乗していた機能性の低そうな鎧の聖騎士達を、いとも簡単に引きずり落とす。
 そして、一発、倒れた顔面寸前の石畳に、馬蹄が一発めり込む。
 バキイッ、石畳が割れている。
 真っ青になる倒れた機能性の低そうな鎧の聖騎士達の顔を覗き込む、鼻息荒いノワール。
「ひぃっ、ひぃっ」
 必死に這いずるように後退している。
 あ、石畳、弁償せんとなあ。
「何をしておる、さっさと殺さぬかっ」
 喚き散らす魔女みたいな聖女が、はっ、と空を見上げる。
 空気を切り裂くような音を立てて旋回するのは、イシス達、グリフォン飛行部隊だ。
 イシスは、ふんっ、て顔で魔女みたいな聖女を見下ろしている。
「ねえ、来とる」
『来てるのです』
『もうすぐ着くわ』
 ノワールが出てきたところから飛び出してきた白い塊。
『我が来たのだーっ、もう心配ないのだーっ』
 あちこちで知らずに破壊行為と怪我人が出していないことを願った。
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