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お祝いからの①

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 冷蔵庫ダンジョンから出て、次の日。
 シルフィ達の訓練の為に、スライム部屋に向かう。明明後日には再び20階スタートにしてある。今頃ダワーさんの指揮の元、薬師の皆さん総出で作業しているって。因みにロッシュさんの奥さんも元薬師。今は子育て大変だから、一線から引いているそうだけと、中堅クラスの腕前あり。人手不足があり、薬師ギルドから短時間でいいから出てもらえないかと言われてパートみたいに働きだしたそうだ。その間の長男のマシュー君、次男のマティアス君は、ギルドの託児所で預かってくれてるって。
 本日はロッシュさんが自宅で、2人を見るそうだ。
 で、私達の本日の予定。
 私はホークさん、エマちゃん、テオ君、エドワルドさん、アレス、アリス、シルフィ達でスライム部屋。
 ミゲル君は母とバザーに出す品の確認。
 晃太はドロップ品を卸しにギルドに、チュアンさん、マデリーンさん、オシリスが付いていった。そこまで時間がかかるものではないので、冷蔵庫ダンジョンに日帰りアタックする。
 で、残りのメンバーは冷蔵庫ダンジョンの前で、晃太待ち。
 ちなみにツヴァイクさんは中庭で桶の作業、ビアンカがついてる。
 私はシルフィ達がみっちり入ってるバギーを押して歩く。日帰り予定なので、母がお弁当を作ってくれた。
「くうーん」
 ウインディが心配そうに見上げている。ウインディは引っ込み思案だ。だけど、なんだかんだとスライムプチプチ出来ているんだよね。ただ、ウインディ自身がそれを自覚出来てない様子。アレスとアリスの娘なんだから、恵まれたなにかがあるはずだけど。
『ウインディはシヴァに似ているのですね』
 と、ビアンカが。
『そうね、確かに。いつも怖がって、アリスの後ろに隠れていたわねえ』
 ルージュもそんなこと言ってた。
 スライム部屋の前で、案の定、ウインディは私の膝にすがりつく。
「きゅうーん、きゅうーん」
『ウインディどうしたのだ? 父が付いているのだ、何の心配もないのだぞ』
 うん、私の心配はそこやない。ウインディは大丈夫やろうけど、また派手にちゅどん、ドカンするやろうから。
「ウインディ、ウインディもちゃんとスライムプチプチ出来てるんよ」
 そう言ってみるが、ウインディの尻尾は下がりっぱなし。シルフィとイフリィ、ノームはスライム部屋の前でそわそわ。
 はぁ、とアリスがため息。あ、します?
 アリスはウインディの首根っこを咥える。
「きゅんっきゅんっ」
 結局そうなるか。
 じたばたとするウインディ。
 さ、私も続きますかね。
『さ、開けるのだ』
 そう言えば、アレスがこのスライム部屋を開けるの初めてやなあ。
 アレスのデカイ前肢が、スライム部屋を押し開ける。すかさず、飛び出したのはシルフィだ。
「きゅーんっ」
 えっ?
 アリスが私に向かってウインディを放り出す。
 えっ? えっ? えっ? 咄嗟に抱き止めようとしたけど、素早くホークさんが前に出てキャッチ。その間アレスがものすごい機敏な動きでスライム部屋に飛び込み、アリスはイフリィとノームを鼻先で後退させてから、飛び込んでいく。
 バタンッ
 えっ? スライム部屋の扉って、いつもはゆっくり閉まるのに。
 後ろに並んだ人達もざわざわ始める。
「くーん」
「くーん」
 イフリィとノームが不安な顔で私の元に。
「ユイさん、どうしたのかな?」
 エマちゃんも心配そう。
「どうしたんやろうね」
 わらわらとすがりつくイフリィとノームをよしよし。まさかね。
「クラウンスライムより、上位種のスライムっていますか?」
 ホークさんとエドワルドさんに聞いてみる。
 アリスがイフリィとノーム、ウインディをスライム部屋にいれなかったのは、多分そうなんじゃないかなって。だって、アレスやイシスがボス部屋開けると、蛇でも牛でもビアンカやルージュの場合と違いさらに上位種出てくるし。スライム部屋でもそうなるんやないかな。
「さあ、俺は聞いたことは」
 ウインディがひし、としがみついてるホークさんが首をかしげる。
「うーん、俺も心当たりはないです。スライムダンジョンでも最上位はクラウンスライムですし…………もしかしたら特殊スライムの大型かもしれませんが」
 エドワルドさんも首を傾げる。傾げていると。
「ユイさん、扉、変です」
「えっ?」
 テオ君が様子のおかしい扉を指す。
 そうだよ、いつものアレスなら、長く時間なんてかけない。いつもなら『終わったのだー』とかいって、出てくる頃なのに。
 スライム部屋の扉はくすんだ鉄製の扉。

 ピシッピシッピシッピシッピシッ

 その扉の表面が白くなりだす。
 違う、凍り付き始めた。そして、一気に冷気がこちらに向かって伝わってくる。
 え、嘘、中、どうなってんの?
「一旦下がってっ」
 エドワルドさんが並んでいた人達に指示を出す。
 私も従う。あの扉、凍り付いたら膨張とかして、壊れそうや。
 慌てて、扉から距離を置く皆さん。
 中は大丈夫なんやろうか? アレスとアリスはなんとか耐えそうやけど、心配なのはシルフィ。まだ小さいのに。おそらくアリスがしっかり守り、アレスが戦闘だと思う。厄災クラスのアレスがそう簡単に負ける訳はない。
 扉の白さはまし、はっきりと氷が層を成す頃に、やっと止まる。
 
 パキパキ、パキパキ

 氷にヒビが入り、やっと開く。
 同時にぶわっ、と冷気が流れ出す。
 スライム部屋の中はどうなってんの?
「きゅーんっ」
 情けない声を上げて走って来たのは、シルフィだ。良かったケガはなさそう。私に向かって一直線、よし、いらっしゃい。
 ドカンッ
 ぐはっ、シルフィは四匹の中でも一番大きかったっ。よろめきながらも、なんとか受け止める。再度ケガチェック。良いみたいやな。
 シルフィが無事なことで、安堵した空気が流れる。
「ユイさん、アリスさんが」
 エマちゃんが教えてくれる。
 再びざわざわする中で、姿を現したのは、何故か体積が増したアリスだった。
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