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帰宅しましょう⑩

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 シスター・アモルとの面会日。
 私はチュアンさんと待つと、なんとシスター・アモルは杖をつき、自力で歩いて来た。
「お待たせしました」
 にこやかに笑うシスター・アモル。
「頂いたお薬で、歩くことが出きるようになりました。ありがとうございますミズサワ様」
「良かったです」
 サメのサプリメントのおかげや。ダワーさんのおかげや。面会時間は短いから、チュアンさんとお話をしてもらわんとね。目の調子もいい感じのようだ。短い時間はあっという間だ。シスター・アモルはわざわざ見送ってくれた。次回の面会予約は2週間後。イシスとの合流予定もその頃だし。いいかな。
 さ、次は騎士団の魔法馬の牧場。パーヴェル様から許可を得てるしね。御用聞きの冒険者が先導してくれる。町外れの広い牧場。あ、牧羊犬だ。びゃーっと逃げていく。あ、ビアンカとルージュね。アレスはお留守番。母にくっついてへっへっ言ってた。さて、ホークさんは、と。どこかな?
「わんわんっ」
「あ、こら元気っ」
 リードを振り切り、元気がたったか柵の中に。ガチの全力疾走ではなく、普通に牧場内に溶け込むように軽く走ってる。のんびりしていた魔法馬が、びくっ、となってる。不法侵入だって。
『大丈夫なのですよ』
「いやいや、魔法馬達をびっくりさせたし………」
 どうしようかと思ったら、元気が真っ直ぐ戻って来た。その後ろにホークさんが茶色の魔法馬に乗りやって来た。あらあら、元気が連れてきてくれたんやね。他の職員さんに、謝罪しようとしたが、誰もいない。びくっとなった魔法馬達は、何事もなかったように草をはんだり、のんびり歩いている。
「ユイさん、どうされました?」
 ホークさんは馬から軽く飛び降りる。
「ちょっと差し入れです」
 私はアイテムボックスからお弁当を差し出す。
「リーダー、ドラゴンのお肉だよ」
 エマちゃんが嬉しそうに報告。小声ね。
「わざわざありがとうございます」
 柵越しにホークさんは嬉しそうに受け取ってくれる。
「いえいえ。ホークさん、食事足りてます?」
「はい。ユイさんがたくさん持たせてくれていますから」
「ノワールは?」
「はい、こちらに」
 ホークさんが茶色の魔法馬の手綱を引きながら案内してくれる。
「ほら、あそこ」
 示すと、まあ仲睦まじく寄り添って闊歩するノワールとレディ・ロストーク。目の錯覚かな? 周りにピンクの空気が漂い、薔薇がぽわわわ、と飛んでいる。目の錯覚かな?
「まあ、仲がよろしいことで」
 いいことだけどさ。
「おーい、ノワールやー」
 一応、主人の私が呼ぶ。
 ちら、と私を見るが、コンマの単位でレディ・ロストークの方に向く。
 邪魔せんでー、みたいな。
 ノワールはレディ・ロストークと仲良く闊歩していった。
 見せつけて、もう…………………………………………ちっ。
「俺がいなくても、あんな感じなんですよ。なので、他の馬の調子を見ているんです」
 そういってホークさんは茶色の魔法馬の首筋を撫でる。茶色の魔法馬は、ホークさんに完全になついているようで、大人しくしている。
 しばらくお話して、帰ることに。もうホークさん帰って来てもいいかと思うけど。ホークさんはやはりノワールが心配だから最後まで残ると。
「うーん、そのうち、牧場の魔法馬達に、ホークさん取られそうです」
 わずか数日でこの茶色の魔法馬、完全に懐いてるし。一週間もいたら、牧場全部の魔法馬が懐いちゃわない?
「ははは、大丈夫ですよ、ユイさん」
 笑っているけど、本当に大丈夫かね?
 ノワールはレディ・ロストークとあっちに行っちゃったよ。
 長居も出来ないから、元気の不法侵入を職員さんに謝罪し私達はお暇する。パーティーハウスに戻る前に、ギルドに寄る。
 よくよく考えたら、いずれイシスとオシリスが加わるから、予め報告しとこうと思って。窓口で従魔の相談をする。
「どうされました?」
 対応してくれたのはベテラン女性職員さん。
「実は従魔がそのうち増えます」
「はい?」
「あのエンペラーグリフォン」
 私はホルスを示す。周りの人達は引いている。元気だけは尻尾ぷりぷりしながら、周りの冒険者さんが撫でている。元気は人見知りしないから、得だよね。ルリとクリスはビアンカにぴったりだ。
「の両親が来ます」
「はい?」
「ですから、あのエンペラーグリフォンの両親が従魔として加わります。エンペラーグリフォンとグリフォンが1体ずつ加わります」
「………………………そうですか」
 ベテラン女性職員さんの顔に、まだ増えるの? みたいな顔だけど、恙なく手続き準備をしてくれた。イシス達が来た時に改めて来てくださいと言われた。
 その後、パーティーハウスに戻る。元気がぷりぷりと撫でてくれた冒険者さん達に挨拶。帰りに屋台に寄り買い物する。流石第三都市、屋台もすごい。じっくりお買い物してしまった。串焼きやホットドッグ、ケバブ、蒸しパン、豚まんみたいなのもある。ビアンカとルージュと仔達のリクエストで大量購入する。その日の夕御飯は屋台飯にした。
 串のお肉はドラゴンのお肉と比べたらいけないけど。野菜と一緒に食べると美味しい。蒸しパンは甘くない、食事系みたいで他の食事と一緒に食べるといい感じや。缶チューハイに合う。ぐびぐび。
 ホークさん、ドラゴン弁当食べたかな?

 無事にホークさんがノワールと共に帰って来た。
 その間に色々あった。孤児院に炊き出しの鍋を持っていったら子供達に捕まる。
『わーっはっはっはーっ、人の仔達よ、我の毛並みは最高なのだぞーっ』
「きゃーっ」
 かわいか悲鳴が上がる。子供達がアレスに群がる。何でって? アレスがじっと伏せているから。尻尾はバタバタしているけど。ビアンカとルージュに『じっとしていろ』と言われてじっとしている。絡まれたくないからね。シスターからは別の意味で悲鳴を上げているけどね。ホルスには流石に子供達は引いたけど、その前に飛んで逃げて、教会の屋根に。飛び上がった瞬間の歓声は凄かったけど。屋根の上から覗くホルス。元気はリードを着けて抱っこ紐に花を抱えたチュアンさんが持ち、ルリとクリスはビアンカにぴったり。ルージュとコハクとヒスイはちょっと遠巻きに見られている。ガチに猛獣系の顔だからね。
「ねえねえ、触りたいっ」
 男の子が私の手を引く。キラキラした目で屋根のホルスを見ている。
「うーん、あれで我慢して」
 と、アレスを示すと男の子は、や、と。
「うーん、ねえ、知らない人がいきなり触ってきたら、君はどう思う?」
「やっ」
「だよね。だから、ホルスも、あの仔もいきなり触られるの、いややと思わん?」
「んー」
 男の子はうーん、と悩むが、納得してくれた。それからアレスに抱きついていく。
「よし、晃太、頼める?」
「よかよ」
 晃太は小さな男の子を肩車している。私は母と炊き出しの鍋をシスター・カモルに渡して少しお話してお暇。『妹よっ、いつまで、こうしていればよいのだっ』
『ずっとなのです』
『しばらくそうしてなさい』
『そうかっ、分かったっ』
 うーん、アレス純粋ー。
「ほらほら帰るよ、皆ごめんね、うちら帰るから」
「「「えーっ」」」
「ほら皆、降りなさい」
 シスター・カモルの言葉に、しぶしぶ降りる子供達。バイバイとアレスに抱きついてご挨拶している。皆いい子や。ならんで見送ってくれる。
「さあ、皆さんにお礼を言いましょう」
「「「「「はーい、おばちゃん、ありがとうございまーす」」」」」
 ぐさっ。
 違うか、皆の視線はしっかり母だ。毎週炊き出ししてるの母だもんね。
 ほっ。
 帰りながら母はアレスを撫でる。
「今日は子供の相手、お疲れ様」
「クゥン、クゥーン」
「よしよし」
『母よ、我は焼いた肉が食べたいのだ』
「はいはい、たくさん焼こうね」
「クゥーン」
『お母さんっ、私も食べたいのですっ』
『私はエビッ』
「その尻の肉」
『『ぐうぅっ』』
 賑やかやなあ。
 そんな感じで忙しく過ぎて帰って来たホークさんとノワール。ノワールはピンクの空気を撒き散らしている。察して上げましょう。
「お疲れ様ホークさん」
「ただいま帰りましたユイさん」
 無精髭のホークさん。あー、安心。安心感が出てきた。
 ノワールを厩舎に誘導する。空のわっぱのお弁当箱を受け取る。
「さ、先にお風呂入ってすっきりしてください」
「はいありがとうございます」
「リーダー、私、お洗濯する」
「ありがとうエマ」
 鷹の目のスペースに引き上げて行くのを見て、さ、お弁当箱洗って、ご飯作ろう。ホークさん頑張ってもらったから、ホークさんの好きなメニューにするかね。
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