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覚醒⑤

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 次の日、いつものように朝御飯を食べるコハクとヒスイに安心した。それからたっぷり出してたし、はい、清掃タップ。
 ただ、コハクはいつもなら朝御飯後、おねむ前に元気と少しじゃれて遊んでいたのに、情けない声を上げて中庭から帰って来る。ヒスイはすでにおねむさん。
「にゃあ~」
「どうしたんコハク?」
「にゃあ~」
 朝御飯の片付けていたけど、心配でコハクの顔を覗き込む。変わらず綺麗な茶色の目。
『全身が痛いのよ。それなのにいつもみたいに遊んで気持ちがついていかないのよ。今日はじっとしておきなさい』
 ルージュが従魔の部屋から出てきて、コハクを優しく従魔の部屋に誘導。
「そうね。コハク、お母さんの言うことききい、今は大人しくしとき。チュアンさんに回復魔法をかけてもらうね?」
『自然の回復に任せた方がいいわ。痛みを知らないとね』
「そうね」
 コハクが従魔の部屋に入り、敷かれているマットレスの上で丸くなる。
「大丈夫かね?」
『誰でも経験することよ。私も初めて戦闘モードが発動した次の日、全身痛くて堪らなかったわ』
 思い出したようにルージュが話してくれる。
 ビアンカとそのお兄さんとゴブリンの巣に叩き落とされた次の日、全身痛かったそうだ。
『2、3日したらよくなるわ』
「そうね。なら、いいけど。元気はけろっとしてるね」
『ああ、そうねえ。未だにしっかり戦闘モードが出来てないからね。でも、元気なら全身痛くても、変わらず走り回って倒れないか心配だわ』
 中庭で走り回る元気を心配するルージュ。中庭には、ビアンカが出て見守っている。
「そう言えば、なかなか元気は戦闘モード発動せんね。属性魔法は一番に覚醒したのに」
『そうね。おそらく、発現系を最初に覚えてしまったから、そちらに慣れてしまって、発動系の良さが分からないんだと思うわ』
「ふーん」
 ルージュの説明を聞く。確かに発現系は便利だけど、昨日のような集団戦の場合は発動系が有効だと。発現系は火の玉や風の刃を飛ばす。発動系は属性魔法を纏って、ステータスで言う力や素早さを一気に上げたり、ビアンカの風乙女(シルフィリア)みたいに風の刃を纏う。風の刃だけではない、相手の魔法を受け流したりもすると。近付いたら、片っ端から切り裂かれていく。恐ろしか。そしてルージュの光の貴婦人(リュミライトレディ)では、その戦闘モードを発動中に光魔法を使うと、威力が倍以上になる。恐ろしか。
 只でさえ巨体が突撃しただけでも破壊力が凄いのに、戦闘モードになると更にいろいろ恐ろしい事になる。軽自動車が、戦車になる感じかな。軽自動車でも恐ろしか。
『元気はまだ楽しいが先走っているし、ビアンカの言った事をすぐに忘れるし…………本当に誰に似たんだか。ビアンカの伴侶はとても冷静だったと聞いたのに』
「そうね。元気、戦闘モードいつか使えるかね?」
『今はこんこんと教えるしかないわ。才能はあるはずよ、元気の歳であれだけの属性魔法が使えるのなら、個体として潜在能力が高い可能性を秘めているわ』
「そうね」
 確か、元気のお祖父さん、リルさんの伴侶は特殊個体だったけど。
 だけど、元気はフォレストガーディアンウルフだ。父の鑑定でもそうだったしね。
「元気の才能はビアンカやリルさん達の、ギャーッ」
 中庭から出てきたの、泥まみれの元気とビアンカ。元気なんて目以外泥まみれやんッ。昨日、シャンプーしたばっかりなのにッ。ビアンカのシャンプー代いくらやとーッ。
『土魔法が楽しいみたいなのです。気持ち悪いのですぅ』
 チーズクリームに直行した。
 なんだか、嫌な予感。コハクの時もこんな感じだったけど。
 嫌な予感は的中し、数日悲鳴を上げることになった。

 昼過ぎにディラに無事に戻り、Gの巣の報告をする。
 倉庫で切り取った耳や、晃太のアイテムボックスから魔石持ちのGを次々に出す。クイーンとシャーマンには騒然となったけど。
 すべて出して、私と晃太、ビアンカとホークさんが応接室に。仔達は馬車で寝ている為に、ルージュに残ってもらい、チュアンさんに手綱を預ける。
「ミズサワ様にお願いして本当に良かった。あのまま放置していたら、被害が甚大になっていたはずです。本当にありがとうございます。査定は明日までお待ち頂けますか?」
「はい。大丈夫です」
「それとランクの件です」
「ランク?」
「はい。見習いの2人が今回の件でGにアップします」
 おお、エマちゃんとテオ君がランクアップや、お祝いせんとね。Gは響きがあれだけどランクアップだ。コハクも無事に戦闘モード発動したし、ヒスイも属性魔法覚醒したしね。よし、豪勢に焼き肉にしよう。銀の槌でケーキも調達しよう。
 ランクアップは明日になると。
 話をすると、双子揃って照れたように笑う。かわいか。
 とにかく宿を確保する。
 ルージュに魔法のカーテンを広げてもらう。
 まだ筋肉痛のコハクはチュアンさんに運んでもらい、全員でルームに入る。
「さ、今日は豪勢に焼き肉やね。ケーキも調達せんとね」
『ユイ、黒いシーサーペントも焼いてなのです』
『ドラゴンもね』
「はいはい。分かっとうよ。元気が遊び足りんみたいやけん、中庭で見とって」
『分かったのです』
『ヒスイ、ルリとクリスもいらっしゃい』
『かあか~』
「わんわん」
「わんわん」
 コハク以外は中庭に走り出す。
「じゃあ皆さん、手分けして手伝ってください」
「「「「「「はい」」」」」」
 マーファで待機していた母を誘導。
 花がわがままボディをくねらせて入ってくる。あはははん、かわいか。
 母の指揮で焼き肉の準備が開始。
 私は魔力に注意しながら、ディレックスに買い物に回る。現在時間48分まで回復している。鷹の目の皆さんも、異世界への扉は経験済み。皆さん驚愕してたけどね。エマちゃんとテオ君はずっと興奮してた。最初は麦美ちゃんに行ってみた。慣れてもらおうと思って。麦美ちゃんは問題なかったけど、やはりディレックスは驚愕だったようだ。確かにこちらは基本的に小売業が主でスーパーなんてない。品揃えと規模がこちらには無いものだし、100%地球産だからね。見たことないものばかりだからかね。こちらにもバザールみたいなものはあるけど、やはり中は小売業が集まっているものだ。説明をしてから行ってみたけどね。
 まず、力持ちのチュアンさんと行き、次々に野菜や魚、ソーセージ、ハム、なめ茸を籠に入れる。最後にビールケース2つ。今日はアルコールオッケーにしよう。チュアンさんが両脇に抱え、手にはビニール袋。
「すみません、重いですよね」
「これくらい構いません」
 今では落ち着いているけど、最初にディレックスに言った時、低音で、お、を連発していた。
 揃ってルームに戻る。
 ダイニングキッチンでは焼き肉の準備が次々に揃っている。晃太とエマちゃんとテオ君は、焼き肉の禁断必須アイテム大根なめ茸を大量生産。マデリーンさんとミゲル君は母の手伝い、ホークさんはノワールのブラッシングをしてくれている。上位騎乗能力がある為か、ホークさんはノワールのブラッシングが上手い。ビアンカとルージュの通訳からしても、ノワールはホークさんのブラッシングが気持ちいいそうだ。なので、お願いしている。
 冷蔵庫にビールを入れながら、ミゲル君に振り返る。
「ミゲル君、今、不足分はなか?」
 現在鷹の目の生活用品の管理はミゲル君が担当している。勉強の為に、3ヶ月後にテオ君が担当するそうだ。鷹の目の皆さんのスペースにも家電がやっと揃った。週に一度、不足分がないか申請してもらっている。ちなみに鷹の目の皆さんの冷蔵庫には飲み物しか入ってない。食事はこちらが管理しないとね。間食でたまにお菓子を渡しているが、管理はお任せ。
「えーっと、あ、紅茶とジュースが最後の開けました。それ以外はあります」
「分かった、次に行った時に買ってくるね」
「はい。お願いします」
 次はペットボトル系だね、ホークさんと行こうかな。
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