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2章

黄色+緑色の調19

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国王代理に報告を終え、フランとミル、そして龍はフランの部屋に向かう。
「フラン様、念のため、ミル様と医師の診察を受けられてはどうでしょう?」
龍の進言により、フランの身体を見てもらうこととなった。

「先生にも、随分迷惑をかけたようでな・・・
 遅くなったが、改めて言わせてほしい。
 本当に、ありがとう」
フラン付の医師は、寝台で横になりながらもフランの謝る様子を見て、一瞬、止めようとした。
ただ、横にいる龍やミルの様子でそれを受け入れるべきなのだと悟る。
「正直、記憶をなくされたフラン様をどう止めようか悩みました。
 フラン様、よく覚えておいてください。
 フラン様やミル様を想っている者はたくさんおります。

 私と龍は、陸様についてこの国に入ってきました。
 今はこの国が全てです。
 そして、この国を守ろうとしている、亡き王、陸様そしてあなた方を守りたいのです」

診察の時にしか話をしないので、このように仕事の事以外の話をすることは、あまりない。
それでも、自分たちの支えとなる大切な人であるには、間違いない。
「先に命を受けた者が、道を導いていくのも、また人生なのでしょう」

ミルは、その言葉を聞き、涙を浮かべる。
―・・・フランの母上のようだ・・・
フランも、同じことを思ったようで、目に涙を溜めている。
「では、フラン様の身体ですが、ミル様。
 ご安心なさいませ。
 今日のような無理をしなければ、無事に生まれるでしょう。
 くれぐれも、無理をしませんように・・・

 そうですね・・・
 あと、一週間ほどで、安定する時期になります。
 その辺りからは、腹部が目立つようになり、生活に支障が出てくると思います。
 その時は、出来ることをしてくださいね。
 病気ではありませんが、命が宿っているのです。
 当然、母体には、負担がかかります。
 重たい物、激しい行いなどをしないようにしてください」

注意することを教えてもらい、ミルはフランの傍に行く。
「よかった。
 妊娠って、悪阻の時期があるんだよね。
 それぐらいしか、知らないけど・・・今は、どうなの?」
ミルの気遣いに、医師も微笑ましく思う。
「ミル様。
 フラン様は、悪阻の時期は越えることができました。
 ですが、出産直前になると、腹部が圧迫されて食事がとれなくなるのです。
 それを、勘違いされて妊婦が酷い扱いをされるときがあるので、気を付けてくださいね」
ミルは頷き、頭の中に叩き込む。

医師が、片づけをして思い出したかのように言い加える。
「あぁ・・・
 交わりたい気持ちも分かりますが、フラン様は、入れられてはいけませんよ」
!!!!!!
ミルとフランは思わず、過剰反応を示す。
「な!?」「ダメなのか?!」
若い二人の反応に、龍も医師も苦笑する。
「母体に病気が感染しないための予防です。
 この時期は、主に父親側が受け身になるのが、一般的です。
 妊娠中の母体から出される精子には、何も妊娠させるような成分は入っていません。
 あぁ・・・無理にではないですよ。
 お二人で気持ちが抑えれない時の、方法の一つです」
そう言い捨て、淡々と説明をして部屋を出ていった。
「龍、追いかけていいぞ」
フランの声に、一瞬、ミルと龍は目が合う。
―・・・・やっぱり・・・

龍が、結婚していると話を聞いたときに、浮かんだ相手。
フランの先生だったんだ。

龍は、医師を追いかけるために部屋を出る。
部屋には、ミルとフランの二人きりになった。


沈黙する雰囲気を壊したのはミルだった。
「あっちにいるときに、龍からフランへの贈り物を作るのに何がいいのか、尋ねたんだ。
 龍は、フランのお腹に赤ちゃんがいるのを知っていたんだね・・・
 頼まれた物は、大切なものを包むときに使うものって言われたんだ」
そう言って、ミルは傍に置いていた籠から何かを取り出す。
「これ・・・」
ミルに渡された物は、大きい布。
ただの布ではない。
珍しい糸を使い、そして珍しい編み方をしている布。
フランは受け取り、慎重に布を広げる。
「これは、凄い・・・」
驚いた表情のフランを見て、ミルも嬉しくなる。
「凄いでしょう・・・
 この糸、龍が作った孤児院で作られた物なんだって」
フランは、その珍しい糸も興味があるが、
「この色が嬉しい」
ミルも笑顔を浮かべ
「僕もね、この糸を見つけた時、フランが近くまで来てくれたように思えたんだ。
 だから、頑張れたんだと思う」
そう言って、ミルは寝台に手を付き、フランに覆い被さるように横から顔を出す。
そして、フランの唇に口づけを落とす。
ゆっくりと口づけをできたのは、いつ以来だろう・・・
ミルは、そのことを考えると、零れてくる涙を止めることができなかった。
「・・・ふっっふっ・・ごめん・・・
 色々と、思い出したら止まらなくなった・・・・」
ミルが言いながら身体を起こそうとすると、フランが手をまわし、動きを止める。
フランが下から覗き込むように、ミルの顔を見る。
俯いたミルの顔は、肩まで切りそろえられた髪によって、遮られている。
フランは、白い髪を一房、手に取り口づけを落とす。
「・・・・すまない・・・」
「謝らないで!?」
ミルの言葉でフランはそれ以上、言葉を出せずにいた。
「いいんだ・・・
 それでも、今。
 フランが僕を見てくれている。
 それだけで、僕は嬉しいよ」
涙を浮かべながらも、笑顔を浮かべるミル。
緑の瞳を自分は、何度濡らさせてしまったのだろう・・・
謝るなと言われたが、やはり・・・
「お・か・え・り」
ミルが言葉を放つ。

フランはミルを見上げる。
「お帰りって言って?
 僕の戻るべき場所に、僕は戻ったよ」
泣きながら、笑うミルを見て、フランも涙がこみ上げてくる。
ミルの身体を抱きしめ、力強く確かめる。
「お帰り。
 帰ってきてくれて、ありがとう」

龍はフランに気を使われ、医師を追いかける。
フランの部屋を急いで出て、辺りを見回す。
姿がない・・・

急いで誰かを探す龍を、配下の者が近づく。
「龍様・・・部屋は、残してあります」
その言葉で、向かう場所は決まった。

フランの部屋のすぐ近くにある、龍の私室。
でも、国を離れるときに、すべてを捨てるように言ったのに・・・
そう考えながら、躊躇いがちに扉を小さく、叩く。
それと同時に、扉が開かれ、手が伸びてくる。
龍の腕を掴み、部屋に引き込まれる。
後ろでは、一瞬。
部下がニヤニヤしながら、こちらを見る顔が見られた。
―・・・!!!罠?
龍は、掴まれた腕を掴み、体重をその掴んでいる方へ移す。
!!
今だ!!
「待った」
先ほどまで、聞いていた声。
部屋が暗く、表情がわからない。
「動くなよ。灯りをつけるから」
待つと、部屋の奥で灯りがともされる。
「先生・・・」
追いかけたフラン付の医師、そして龍の伴侶がいた。
「おいおいっ。
 久しぶりに仕事を抜いて話すからって、先生はないだろう・・・」
龍は、確かに・・と、思いながら小さく相手の名前を言う。
「要さん・・・」
「・・・随分、久しく言われてなかったな・・・」
龍も、要も仕事人間だ。
普段の仕事の時は、丁寧に言葉を言うのに、素の時には、荒々しい。
静かにしていれば、龍が強面。要は、まじめな医師だ。
眼鏡をかけているので、普段の表情もいまいち、読み取るのが難しい。
この二人が並ぶと、医師の方が、優しそうとみんなが思うだろう。

ただ、本当の二人は逆だ。
強面の龍は、変わらないが、要の方が変化する。
眼鏡を外して仕事から抜けると、眼光のきつい眼差し、言葉は荒くなりその差が龍の心をとらえる。

灯りで照らされた室内の様子をみて龍が困惑する。
「どうして、元に戻っているんですか?」
出る前に、部屋には何もなかったはず・・・
「優秀な部下を育てた自分を責めたらいい。
 仕事のできる人間は、こういう時に、困るのさ」
龍は、先ほどの部下のニヤついた顔を思い出す。
―・・・・余計なことを・・・

寝台に座る要が足を組みながら龍を手招きして呼ぶ。
近づいて横に座る。
「・・・・もう、勝手に置いて行くな・・・」
龍は、その言葉が胸に詰まった。
身体が震え、要の方を見る。
「・・・すみません」
そう言って、俯く龍をそっと抱きしめる要。
「そうではない、今度は一緒に・・・だ」
そう言われて顔を上げる龍。
要の顔を見て、感情を読もうとする。
「俺が、どんな気持ちだったかわかるか?
 龍なら、自分だけで行くと思ってはいたが、正直傷ついた」
・・・
この国に、仕えていた王子が留まることになり、その時に、2人で決めたこと。
「・・約束を破ることになり・・・」
「そうでは、ない。
 責めているのではない。
 せめて、陸様に伝えるとかしてくれていても、いいではないか・・・」
要が苦しい感情を思い出し、顔を歪める。
「龍が、国を去ったと聞いて急いでこの部屋に来た。
 戸惑いながらも、龍の部下が物をどうするか悩んでいたのだ・・・」
ほとんどの時間を共にしている部下なら考えるかもしれない・・・

「一人であっちに行ったんだ。
 話を教えてくれ・・・。孤児院には、行けたのか?」
龍は、少しクスリと笑う。
やはり、気にしていた・・・
「見てきましたよ。
 氷河を覚えていますか?
 あの子、院の職員になっているんですが、煌雅様と恋人なんです。

 驚きました、迎えの船に、氷河が乗っていたのですから・・・
 糸の方も、順調でした。
 ミル様に力を貸してもらって少し戻るのが遅くなってしまったのです」

要は、龍の話を聞きながら、苦笑する。
「煌雅様ってまだ、15ぐらいのはずだが・・・」
龍は頷き、
「しかも、氷河が根負けしたようです」
笑い、そして要を見る。
「勝手ですが、私も要さんに会いたかったです」
そう言って遠慮気味に、要に抱き着く。
「・・・わかってる」

龍と要は、年は離れているが、幼馴染だ。
共に、孤児として育った。
負けん気の強い2人は、貪欲なぐらいに勉学に打ち込む。
落ちていた本を見て文字を覚え、人の数で計算を学んだ。

国では、孤児の取り巻く環境は劣悪だ。
そのせいで、医療を受けられず育ち、2人とも子どもを宿すことはできない。
病に罹っても、放置し続けた結果だった。
比較的夫婦間が穏やかなこの世界で、孤児になるのは、少ない。
自分の環境を恨んだこともあった。
でも、親の愛を知らない自分が親にならない。
それでいいのかもしれない。
それに気づいたとき、同じような子どもを増やさないように孤児院を作った。
産むことはできなくても、育てることはできなくても、環境を整え、資金を用意する。
ずっと見続けることはできなかったが、自分たちは今でも、院への想いは強い。

ふと、龍は思い出す。
ミルが、捨て子だということを・・・・
もしかすると、あの方なら、この国にも新しい時代を導いてくれるかもしれない・・・
そう願う自分は、欲張りなのだろうか・・・それとも、望むことは・・・・

その日、龍はフランの部屋には戻ることはなかった。

「龍さん、戻ってくるかな?」
ミルの言葉に、フランが少し考え
「どちらでもいいが、多分・・・今日は無理だろうな・・」

ミルも、それ以上何も言えなかった。


フランとミルは、休むために湯浴びを一緒にしている。
2人、一緒にいられるのを確かめるように離れようとしない。

裸になったフランの身体は、以前のように逞しい体つきから、変化していた。
「少し、腰の辺りが丸くなった?」
ミルに指摘されフランは自分の腰に手を当てる。
あまり、自分ではよくわからない。
「それに、ここも、色が違う・・・」
ミルは、フランの胸の小さい突起を指で軽く突く。
!!!!
「・・ぁっ・・っミル・・・」
―・・・艶を帯びたため息とともに出されるフランの感じている声・・
こんな声、聴いたことがない・・・
ミルは、フランの耳の傍で呟く。
「ねぇ・・・
 フラン・・・
 いつもこんなに感じているの?
 違うよね・・・前は、こんなことをしても、こんなフランは見たことがない・・・」
フランは、耳の傍で話すミルの息が首筋に当たり、敏感に身体を反応させる。

妊婦だと自覚し、記憶が戻り、改めて自分の身体を見つめた。
その時、違和感を感じたのも事実。
布の擦れる刺激で、胸の突起は敏感に感じてしまう。
風の吹く強さで、首の辺りに通ると感じてしまう。
「そ・・・れは、妊娠した・・・からだと・・・」
フランの身体がピクリと反応をするたびに、ミルは沸き上がる欲望が身体の奥から広がって自分を染めていくように感じた。
やっと、傍にいられるこの嬉しさをフランに向けてしまう自分がいる。
「フラン・・・今のフランには、何をしたら喜ぶんだろう・・・」

フランは、ミルの質問に掠める欲望を感じてしまう。
「何を・・・って・・・喜ぶって・・・・」
そういうフランは言いながら、ミルを期待してしまう。
後ろからミルが、フランの身体に密着する。
!!!!
熱い・・・・
船でミルを抱きしめた時、冷たかった。
このミルの身体の熱さは、自分を望んでいる熱・・・
そう思うと、フランは身体の奥で疼く物を感じる。
―・・あぁ・・・なんて、欲張りになってしまうのだろう・・・

自制しなければならない欲も、ミルの前では、抑えることが出来ない。
目の前に餌を出された獣のように思える。
ミルも共に、同じ気持ち・・・
そう思ったら、止めることなどできなかった。
「ミル、寝台に・・・」
ミルは、フランを浴室から出し、寝室に向かう。

ゆっくりとフランを寝台に寝かす。
あれだけの刺激でフランは、足に力が入っていなかった。
本当に、妊娠して身体が変わっているのだ・・・

それでも、ミルはフランに触れたかった。
フランの横に一緒に、ミルは横になる。
お互い、軽く水分をふき取ったままで、身にはなにもつけていない。
「寒くない?」
ミルの問いに、
「大丈夫・・」
そう答えるフランの額には、薄っすらと汗がにじんでいる。
離れた場所に置いている、水を見る。
「水・・・飲める?」
ミルの問いに、複雑な顔で
「何か果物の汁を入れて・・・」
ミルは頷き、水の近くにある果物をつぶず。
試しにミルが一口飲み、確かめる。
美味しい・・・
「子どもがお腹で育つと、好みも変わるらしい・・・
 果物は、苦手だったんだが・・・」
フランの言葉に、ミルは笑う。
「もしかすると、お腹の子どもが教えてくれているのかも。
 なんでも、食べれるようになりなさいって」
そう言いながら、フランを起こし、水を飲ませる。
「・・・ごめん。
 ちょっと、暴走した・・・」
ミルが冷静になって弁明する。
「いや・・・」
フランが気まずそうにする。

「フラン?」
ミルが、フランに尋ねようと近づく。
フランが、ミルを見て、
「少しでもいいから・・・ミルと肌を重ねたい・・・」
ミルは、フランを見る。
そこには、情欲を含む黄色の瞳。
とめられそうだったのに・・・ 
「・・・っフラン・・先生がまだ・・・
 傷つけたくない・・・
 だからっ!!」
ミルがそう言おうとしたら、寝台に上げられる。
フランはいつの間にか、座っている。
「本当は、ミルを抱きたい・・だが、それは、無理だ。
 だから・・・」
そう言って、仰向けで肘だけで身体を起こしているミルの足元に座る。
そして、口をミルの股間に近づける。
―・・・ミルは、狼狽えた。
まるで、フランにそこを食べられるのではないかと思うぐらい・・・
彼の目は、熱を帯びていた。
熱い湿り気のある口の中に、ミルの欲棒はすぐに反応を示した。
「フランっ!ダメ!お腹が押されるっ」
ミルはその様子を見て、フランの身体を気遣う。
「なら、ミルがここに立って」

「ここに立って」
寝台に立つ。
つまり、フランを見下ろす事になる。
「えっ・・・いや・・・」
躊躇う。
立つと、フランの顔の辺りに、ミルの熱く熱が溜まっている場所がくるのだ。
「じゃぁ、このままで続ける」
お腹を圧迫するような体勢になろうとするフランをミルは止める。
「わ、わかったから・・・」
ゆっくりと立ち上がるミル。
ついでに、ミルの股間の物もだ。
「・・・嬉しい・」
フランは、目の前のミルの熱棒をまじまじと見る。
ミルの方を見て
「ひとりで、ここを触った?」
ミルは首を横に振る。
「だろうな・・・
 色が変わっていない・・・」
そう言いながら、フランはミルの熱棒を口に入れる。
舌で、横の辺りを擦られたり、口の中の唾液といっしょに転がされたり。
ミルは、立ったままの状態で刺激を受ける、その日常的ではない行為に興奮する。
フランは、僕を欲しがっている。
彼の手が腰の辺りに置かれている。
ミルが口から快感に浸るように喘ぐ。
「あぁ・・・
 熱い・・・」
ミルが、そっとフランの髪をかきあげる。
口が卑猥な様子だが、とてもフランは嬉しそうにしてる。
潤んだ黄色の瞳が、ミルと合う。
―・・・あぁ・・・満たされる・・・
ミルの快感に溺れる表情を見て、フランも嬉しくなる。
ミルの熱い物を自分の中に取り込んでいくように、喉で吸い上げる。
部屋は、じゅるじゅると淫靡な音が響く。
息が苦しそうに鼻で息をするフランを、涙を耐えながら、自分の表情を伺おうとしてくるフランを、ミルは愛おしく思えた。
ミルは、フランの口を一回、離させる。
そして、ミルは屈んで、フランの口に口づけをする。
舌を絡めて、気持ちを伝えるように・・・
顎に手を置き、フランの顔が動かないようにする。
―ん・・っくちゅ・・・んっ・・・
フラン、口づけだけでも感じている。
唇を啄みながら閉じた目元を見る。
いつもより、感度が違うので、敏感に身体が反応し、それを堪えようと涙が溜まる。
離された唇を追うように、ゆっくりとフランは目を開ける。
その瞬間。
黄色の瞳からは、ポロリ・・ポロリと涙が零れる。
・・・キレイ・・・
じっとその様子を見ていたミルは、流れ落ちる涙を嘗めとる。
「そんな物を嘗めてどうする・・・」
フランの言葉に、ミルは笑いながら
「フランから出される涙だから・・・甘いのかなって」
そう言っているミルを横目に、フランはまた、ミルの股間に顔を埋める。
「そう言うなら・・私にも、ミルの物を味わいたい・・・」
そう言って、再び口に含み、喉を使って扱く。
―フランのだから・・・
 ―フランだから、僕はこんなにも、欲しがってしまう・・・

あの時、あの場所で高まった感情も、一時的には高まった。
だが、最後までその感情を落ち着かせるまでには、ミル一人では、どうにもできなかった。
「ぁぁあ、フラン・・・フラン・・・」
フランが、ミルの腰に手を当て、身体を動かし、口でしごく。
ミルは、揺れる体と快楽に、そして、フランの厭らしい姿に、頭の中がとけていく・・・
上を向き、ミルはその与えられる刺激を耐えようとする。
ただ、フランと離れてから一度も、自分で性欲を処理することをせずにいた。
その状態の身体に、フランの与えられる刺激は、激しすぎた。
寝台に立っている足が、ブルブルと震え始める。
「・・・っだめ。
 もう、フラン、離れて・・・
 かけちゃう・・・っっ!!!」
身体を大きくビクリと反応させ、それでも、耐えようとする。
フランは、その言葉に嬉しさを覚える。
フランも口でミルの物を含んだままだというのに、その欲棒が口内を暴れるたびに、その粘膜が快感を呼ぶ。
フランは、腰の辺りがビリビリとし始め、自分の股間の物が反応をしているのに気づく。
―・・何もしてないのに・・・
フランの熱棒の先からは、ポタリ、ポタリと白濁の混ざった粘りのある物が垂れていた。

そして、より一層、激しく動くのだった。
ミルの息が荒さを増し、ミルの腰を支えているフランの手に自分の手を置く。
握りしめ、見上げたフランと目があった時、ミルはフランの口の中に白濁を出したのだった。
―・・・・
ゆっくりとフランの動きがゆっくりとなり、ミルの白濁をすべて吸い取る。
喉を動かす様子に、飲み込んだのがわかる。
唇とミルの欲棒が離れる時、銀の糸のようにその粘り気が糸を引く。

フランは、じっと見ているミルの視線を感じながら、その糸を絡めとるように舌で舐める。
―・・・・!!
「・・・ミル、甘いかも・・・」
そうなのか?
そんなはずは、ない。

ミルは、力が抜けたまま寝台に座り、フランの股間をみる。
・・・・―濡れている
フランの顔を見ると、照れた様子で笑っている。
「何もしていないのに、出てしまった・・・」
そう言いながら、フランはミルにゆっくりと抱き着く。
「気持ちよかった?」
ミルは、そうフランに尋ねられ頷く。
「フランは?」
ミルの問いに、
「妊娠すると、感じすぎて自分でも驚いてしまう・・・
 世の中の人はみんなこんな感じなんだな・・・
 ・・・・母上が生きていたら、こういうことも教えてくれていたのだろうな・・・」
ミルは、ぐっと涙がこみ上げてくる。
フランの中では、まだ、王の死は受け入れることができないのかも、しれない。
ミルとフランは、寝台で横になり、抱き合う。
「フラン、フランの気持ちもわかるよ。
 僕だって、悲しいから・・・
 フランも、泣いていいんだよ・・・」
フランは、ミルを抱きしめる。

この匂い。そう・・・この匂い・・・
フランは、ミルの頭に顔を埋める。

そして、思い出した時の話を語り始めた。


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