妹と再婚約?殿下ありがとうございます!

八つ刻

文字の大きさ
3 / 21

新たな婚約者候補

しおりを挟む

ナタリアが屋敷を出ていってから二ヶ月程経った頃、サーシャは大量の釣書に目を白黒させていた。
マルセルは知らなかったのだが、サーシャを狙っていた令息はかなり多い。

王城に務める大臣を父に持ち、その家は侯爵でしかも長女。身分だけでも大人気だが、その本人は困っている人を見過ごせない心優しい性格に可憐な見た目。おまけに妃教育も終えている。
第一王子の婚約者でなくなった今、国内で一番熱い令嬢であることは間違いないだろう。

「お父様、わたくし暫くは婚約はいいと思っていたのですが・・・」
「サーシャの気持ちはわかるけどね。見ての通り毎日届くんだ。無理矢理婚約を結ばせることはないけれど、サーシャの今の考えを聞かせてくれないか?」
「考えですか?」
「あぁそうだ。以前はサーシャが王族に嫁ぐと思っていたから養子を取る予定だっただろう?だが今は状況が違う」

侯爵家の正当な後継者はサーシャしかいなかった。この国では女性でも爵位を継げるため、サーシャが望めば女侯爵にもなれる。

サーシャがマルセルと婚姻予定だった時はあのナタリアが女侯爵になれるはずもないので、遠縁の者に以前から領地経営の教育をさせていて近々養子として引き取る予定だったのだ。

「サーシャが侯爵を継ぎたいのか、他家に嫁に行くのか。それで相手は大きく変わるだろう?だから釣書を見て、良さそうな人がいたら是非一度会って話してみるといい」
「お父様は継げとは仰らないのですね」
「サーシャが継いでくれたらこれ以上嬉しいことはないよ。だけど私は今まで頑張ってきた分サーシャには幸せになって欲しいんだ。家のことは考えず、素敵な人を見つけなさい」

そう言って侯爵はサーシャの頭を優しく撫で、穏やかに笑った。



大量の釣書を侯爵から受け取り、サーシャはパラパラと捲る。
中には隣国の王子という大物もいて、ギョッと目を見開いた。

ーーもう王子は懲り懲りですわ・・・

ふとマルセルのことが頭に浮かぶ。
ナタリアの教育は上手くいっているのだろうか。侯爵家では誰が何を言っても駄目だったが、愛する人が言うことなら聞き入れているかもしれない。

サーシャは決してナタリアを嫌ってはいなかった。
妹というには随分大きくなってから会ったためしっくりこないが、幸せになって欲しい気持ちは本物だった。
きっと侯爵も侯爵夫人も同じ気持ちだろう。
だからこそ、マルセルには頑張ってもらいたい。丸投げしたことは重々承知だが。

大量の釣書の分別が終わるのはその日かなり遅い時間だった。


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


結局サーシャが選んだのは五人。

隣国の第二王子、公爵家嫡男の二人は爵位が上で断り辛いので自動的に選ばれた。
侯爵家三男、伯爵家次男は女侯爵になる場合を考え選んだ人選だ。
残りの一人は個人的な興味で商会の次男。下手な貴族より裕福な商会だが平民。しかも次男とはなかなか強気である。是非一度会ってみたかった。

残念ながら選ばれなかった人たちにはサーシャ自ら丁寧な手紙を認めた。



五人のうちの一人公爵家嫡男、リチャードとの顔合わせの日。
夜会等で何度か軽口を交わした程度の間柄なため、リチャードのことはほぼ知らない。
二人は侯爵家の中庭でゆったりとハーブティを楽しんでいた。

「リチャード様はお休みの日は何をされているんですか?」
「休みの日?う~ん、そうだね。本を読んだり、部屋でゆっくりしたりもするけど・・・狩りにも行くね」
「まぁ狩りですか」
「あぁ領地で悪さをする猪とかをね。そしてその日のディナーで美味しく頂くんだ」

パチリと片目を瞑るリチャード。
リチャードは女慣れしていると社交では専らの噂だったが、噂は本当らしい。
ただお茶をしているだけなのに話が上手いのか、話題が尽きることがなかった。
そして見目も麗しいので女性がほっとくわけがない。

「ふふ。リチャード様ほど素敵な方でしたら他にもいい女性ひとはたくさんいらっしゃるのでは?」
「とんでもない。俺はね、地位目当ての女性は勘弁して欲しいんだよ」
「わたくしが地位目当てとは思わないのですか?」
「サーシャ嬢は違うだろう?わざわざ俺と婚姻しなくても女侯爵になればいいだけだ。それに妹に妃を譲るような令嬢が地位目当てとはとても思えない」

譲るというより押し付けた、の方が正しい気もするがサーシャはこの時リチャードは女慣れはしていても、女好きではないのかなと感じた。


その後も話は弾み、また会うことを約束しその日はお開きになった。
領地のこと、領民のことをしっかり考えているリチャードには正直好感しか持てなかった。だがリチャードと婚姻するのなら女侯爵という道は捨てなければいけない。
まだ決心がついていないサーシャは正直な気持ちを侯爵に報告し、その日は眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルリアは、婚約者の行動に辟易としていた。 彼は実の妹がいるにも関わらず、他家のある令嬢を心の妹として、その人物のことばかりを優先していたのだ。 その異常な行動に、アルリアは彼との婚約を破棄することを決めた。 いつでも心の妹を優先する彼と婚約しても、家の利益にならないと考えたのだ。 それを伝えると、婚約者は怒り始めた。あくまでも妹のように思っているだけで、男女の関係ではないというのだ。 「妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?」 アルリアはそう言って、婚約者と別れた。 そしてその後、婚約者はその歪な関係の報いを受けることになった。彼と心の妹との間には、様々な思惑が隠れていたのだ。 ※登場人物の名前を途中から間違えていました。メレティアではなく、レメティアが正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/10) ※登場人物の名前を途中から間違えていました。モルダン子爵ではなく、ボルダン子爵が正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/14)

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。 「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」 「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」  私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。  そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。  でも――。そんな毎日になるとは、思わない。  2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。  私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

【完結】あなたが妹を選んだのです…後悔しても遅いですよ?

なか
恋愛
「ローザ!!お前との結婚は取り消しさせてもらう!!」 結婚式の前日に彼は大きな声でそう言った 「なぜでしょうか?ライアン様」 尋ねる私に彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべ 私の妹マリアの名前を呼んだ 「ごめんなさいお姉様~」 「俺は真実の愛を見つけたのだ!」 真実の愛? 妹の大きな胸を見ながら言うあなたに説得力の欠片も 理性も感じられません 怒りで拳を握る 明日に控える結婚式がキャンセルとなればどれだけの方々に迷惑がかかるか けど息を吐いて冷静さを取り戻す 落ち着いて これでいい……ようやく終わるのだ 「本当によろしいのですね?」 私の問いかけに彼は頷く では離縁いたしまししょう 後悔しても遅いですよ? これは全てあなたが選んだ選択なのですから

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

処理中です...