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商会の次男

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後日侯爵家三男と伯爵家次男とも顔合わせをしたが、二人とも侯爵家目当てなのが態度からバレバレで特に突出した才能も見受けられなかったため即断りを入れた。


そして一番の目玉、商会の次男との顔合わせの日がやってきた。

「お・・・お初にお目にかかっかかります!ガンダラード商会の次男、ケビンと申しますっ」

ケビンはごく普通の青年で、とても緊張していることが言葉と態度から現れていた。

「まぁそんなに畏まらなくて大丈夫ですわ。サーシャと申します。ケビン様とお呼びしても?」
「いっ・・・いいえ!そんな!呼び捨てで結構です!」
「そうはいきませんわ。では・・・ケビンさんと呼ばせて下さい」

あんな強気な釣書を送ってきた割に、次男本人はかなり恐縮している。一体どういうつもりなのかサーシャは探りを入れることにした。

「商会をお継ぎになるのはケビンさんのお兄様なのですか?」
「はい・・・兄はもう父の仕事を半分近く受け持っています」
「まぁとても優秀な方なのですね!ではケビンさんはわたくしと婚姻した場合我が家に入られたいと・・・?」

平民と貴族が婚姻するのなら、どちらかが身分を合わせなければいけなくなる。平民が貴族に入るのも難しいが、貴族が平民になるのもなかなか難しいだろう。
ガンダラード商会は兄が継ぐのだから、次男のケビンは侯爵家に入りたくて釣書を送ったと思われても仕方がないのだ。

「あの・・・怒らないで聞いて頂けますか?」

ケビンは俯いていた顔に目だけ上げ、おずおずと口を開く。
サーシャはにっこりと微笑み頷いた。



ケビンの話を聞いた結果ーーー釣書送ってみちゃおっか!断られるに決まってるもんね。目に止まってうちの商会使ってくれたらラッキー♪って、えぇぇぇ!話したいって返ってきちゃったよ!どうするコレ!怒られる!?ーーー状態だったらしい。

サーシャはポカンとし、口が気持ち少し開いている。
ケビンは怒鳴られやしないかと更に顔を俯かせ、ビクビクしていた。

「・・・・・・ぷっあははは!」

サーシャは淑女とは思えないほど大きな笑い声を上げていた。その光景に今度はケビンがポカンとする番だった。

「ふふ・・・はぁ・・・久々にこんなに笑いましたわ」

サーシャは目尻に溜まった涙をハンカチでそっと拭き、ケビンに向き直りにこりと笑う。

「ケビンさん、怒ったりしませんわ。わたくしが是非お話してみたいと思ったんですもの。でも・・・ぷぷっ記念釣書だったのは予想外でしたわ・・・」

ツボに嵌ったのかサーシャはいまだに軽く身悶えている。

「侯爵令嬢様の貴重な時間を頂いてしまってすみません・・・」
「いいえ、これも何かの縁。是非ガンダラード商会と取引したいですわね」

思いがけない言葉にケビンはパッと顔を上げる。

「本当ですか!?」
「えぇ。父にも話してみますわ。では本日は如何にガンダラード商会が素晴らしいかをケビンさんに語ってもらいたいですわね」
「・・・!はい!!えっと我が商会で特に力を入れている商品はーー」


それからケビンは熱心に商品を勧めた。
ガンダラード商会は貴族から平民までどの階級の人にも利用してもらえるよう、宝石等の高級品から日常品まで扱っている。そしてケビンはサーシャや侯爵たちが使うような物を勧めるのではなく、侯爵領で向いているのではないかという他国の花の苗や肥料だった。

「まぁでは我が領地の気候ならその保存が効く食べ物を作ることができるのね」
「はい!ただ他国からの輸入品になるので少しお値段が・・・大量購入して頂ければ、輸入元の国との交渉で少しはお安くできるかもしれません。すみません・・・僕はまだそこまでの仕事はさせてもらっていないのでハッキリお伝えできないんです」
「大丈夫ですわ。その食べ物の実物をまず買わせてもらうことはできまして?」
「それは大丈夫だと思います!帰ったら父にすぐ話してみますね」
「えぇお願いするわ。わたくしも父に相談してみます。ふふ。次会う時は婚約者候補ではなく、お仕事のパートナーとしてお願いしますね」
「はい!」

盛り上がっていた二人が気づいた時には予定の時刻を大幅に過ぎていた。辺りはもう薄暗くなり始めている。
ケビンを見送り、サーシャはウキウキしながら侯爵の帰りを待つのだった。

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