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9 謝るしかない
しおりを挟む涼太の願いは、一人の女性を助けて欲しいということであった。
どうして自分の彼女とは言わずに、一人の女性と言ったのか?
それは涼太らしい願い事であった。
自分の所有物という考えは一切無く、一人の人間として、その後の生き方を援助していきたかったからに過ぎない。
ぺペンギンは、今夜も涼太の部屋に来ている。
三日に一度くらいのペースで、それ以外の日は、涼太の時間を大切にしている。
涼太は涼太で、毎晩来て欲しい気持ちもあるが、一人の時間も欲しい。
時間は流れるもの。
人の思い通りになるものではない。
涼太は、ぺペンギンが来た時ように冷蔵庫に保管してある魚の切り身を細く切っている。
ぺペンギンは、その後ろ姿を見ずにシングルモルトを飲みながら、如何にもリラックスしている風を装っている。
涼太は、細く切った刺身をぺペンギンに差し出すと、自分の目の前に置いた氷の入ったグラスにシングルモルトを注ぐ。
形だけでもぺペンギンに付き合おうとしているに過ぎない。
何故か立場が逆のようにも思えるが、そんなことなど気にも欠けていないようなぺペンギンである。
「どう? 仕事の方は?」
「はい、ぼちぼち、と言った所でしょうか」
「そんなことないやろぉ、クィーンズでもお前の腕前やったら大繁盛ちゃうの」
「そんなことないですよ」
「何言うてんねん。お前の飾り包丁なんか絶品やで」
「ありがとうございます」
と涼太は答える。
「あの時なんですよね、彼女に会ったのは。ご両親に連れられて俺の店に来たんですよ」
「ふーん」
ぺペンギンは、聞き流すようなふりをしているが、真剣に話を聞こうとしている。
「俺の飾り包丁を、いっぱい褒めてくれて、綺麗だ綺麗だ! って言ってたんですよ」
「そら、そやろ」
「でね、それ以来、一人でも来てくれるようなって」
「ほう、ええ感じやん」
「はい、でね、ドライブに誘ったんですよ」
「奥手のお前が? よう頑張ったやん」
「あははは」
涼太は軽く笑うと、さらに話し出す。
「でも、断られました」
「あらまぁ」
「それ以来ね、暫く来てくれなくなってね。俺、絶対に振られたんだって思ってたんですよ」
「そら、そう思うわな」
「ええ、でも、ある晩、突然やってきてね。近くを少し歩くだけのデートならいいよ。って言われたんですよ」
「おっと、それ逆ナン、言うやつちゃうのん」
「あははは、そうですね。その時から、近くの公園や、喫茶店なんかで会うようになったんですよ」
「なるほど、彼女の病気、もう既に進んでた、言うことやな?」
「はい、彼女から、その話をされたときは、さすがにショックでした。でも俺、彼女と付き合うことにしたんです」
「彼女は、直ぐには、OK、せんかったやろ?」
「はい、でも何度も説得しました。その所為で会ってもくれなくなった時もありました」
「でも、今は」
「はい、彼女からお付き合いしたいと言って来ました」
「またしても逆ナンかぁ」
「かなり迷い、友達にも相談したそうです。でも結局、一人の親友に、最後の最後まで自分自身を輝かせることが大切だ、って言われたそうです」
「大切なことや、で、お前も覚悟を決めて付き合うことにしたんやな?」
「はい、その夜から、あの星に願いをかけるようになりました」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「すまんなぁ。ワイらの星にも不可能なことはあんねん」
「本当に駄目なんでしょうか?」
「一つだけ方法はあるねんで。でもな、それはな、ワイらの持ってる機械の心臓を埋め込む外科的方法やねんけどな、そん為にはワイらの星に来てもらわなあかんねん。地球の設備では手術ができひんねん。考えてみ? 今のあの子の状態で星間連絡船に乗るんは自殺行為や。大気圏を越える前に心臓発作起こしてまうねん」
「・・・・・・・・・。」
「ほんまに、ごめんやで」
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