カピバラになりたい牛

6.

『ねぇ、あなた毛がふさふさね。』
『……ありがとう。…え、なに？』
『どうすればふさふさになれるかしら。しらない？』
『君、別に禿げてないだろ？なんでそんなこと気にするんだ？』
『私の好きな人が、毛のふさふさの子が好きなんですって』
『……なるほど。別になにかしてふさふさって訳じゃないよ。そういう個体なだけで』
『じゃあ分からないのね？』
『そうだね。わからない。ごめんね、力になれなくて。』
『気にしないで。ごめんなさいね、ありがとう』
『別にいいよ。何も出来てないのにお礼言われるのはなんか気持ち悪いし』
『あら、分からないということを教えてくれたじゃない。』
『…なるほどね。君はすごいね』
『なにが？』
『そういう所とか、好きな人に振り向いてもらうために頑張ってるところとか』
『そうかしら？嬉しいわ！ありがとう』
『うん。』

この子もダメだったわ。ふさふさになるための方法も分からなかった…
でも、褒めてくれて嬉しかったわ。ふふっ…

私は一体どうすればカピバラになれるのかしら……