カピバラになりたい牛

5.

私がカピバラになれないことはよく分かったわ。
飼育員さんの心の中はカピバラで埋め尽くされていることも。

でもそれでも私はカピバラになりたい。
小さくて、茶色いふわふわの生き物に。

『ねぇ、貴方は茶色よね？どうすれば茶色になれるかしら？』
『え？！俺？……俺は産まれた時から茶色だと思うよ…だから、しらない。』
『そう……残念だわ。ありがとう』
『ごめんね…』
『いいのよ、あなたは気にしないで！』

近くにいた茶色をしたお友達に聞いてみたけれど分からなかったわ…。

飼育員さんの私服と同じ色って言うのは魅力的だけれど、やっぱり私はそれだけ想われている茶色いカピバラになりたい。


『ねぇ、あなたは小さいわよね？どうして？』
『…え。僕今喧嘩売られてる？』
『あ、いや、違うのよ！ごめんなさい。勘違いをさせてしまって……』
『あ、そ。わざとじゃないのね…ならまぁいいけど…
どうしてそんなこと知りたいの？僕的には小さいのコンプレックスなんだけど』
『そうなのね…ごめんなさい…。
私の好きな人が小さい生き物が好きらしいのよ…だから私も小さくなりたいな～とおもって』
『…なるほどね。小さい方が好きと言うより小さい生き物が好きなんだ？』
『えぇ…カピバラが好きみたいよ…』
『あーカピバラか～へ～』
『……あなた、カピバラがなにか知らないでしょ』
『…………ごめん知らない。』
『私も初めは知らなかったから気にしないで』
『うん。ありがとう。ごめんね、僕じゃ力になれそうにないよ』
『いいのよ、ありがとう。』

少し小さいお友達も分からないみたい…どうすればいいのかしら。