婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 三ヶ月間の添い寝のおかげで、少しずつリュセとの距離に慣れてきていた私は、誕生日に愛する人と結ばれた。

 ミラジュー王国では、婚約中でも情を交わす者が多く、性関係に奔放な者ばかりだ。
 だが、リュセは違った。
 初夜までは、絶対に私に手を出すことはないと告げられていたのだ。
 ……私は生殺し状態だったが。

 リュセの貞操観念が固く、とにかく私の中での好感度が上がり続けていた。

 それでも、青い薔薇を貰った瞬間に、リュセともっと深く繋がりたい気持ちが溢れた。
 私のことだけを想って作ってくれたのだと伝わった贈り物は、この世に一つしかない私の宝だ。

 そして私の腕の中には、かけがえのない存在が、愛らしい顔ですやすやと寝息を立てている。

 私は閨事の経験がないため、リュセに幻滅されないかと不安でたまらなかったが、思い切って誘って、本当によかった……。

 「リュセ……」

 赤くなってしまった目元を癒すように、優しく口付けを落とす。
 ふるっと黒い睫毛が揺れて、ゆっくりと瞼が持ち上がった。

 「んっ、シュヴァリエさま……」
 「悪い。起こしたか? 今日は、ゆっくり過ごしていいからな?」

 ぼんやりとしながら小さく頷いたリュセは、大好きだと言わんばかりに、私にぎゅうっと抱きつく。

 「シュヴァリエさまも、今日はおやすみ?」
 「ああ」
 「やったぁ。ひさしぶりに、お昼までゴロゴロしたい……」

 甘えるように頬擦りをするリュセは、ただただ愛らしかったのだが、今は蠱惑的な雰囲気だ。
 元々飛び抜けて美しかったが、さらに魅力が増した気がしてならない。

 また周囲の人間が騒いでしまうことだろう。
 その光景が容易に想像出来て、頭が痛くなる。

 ……が。

 耳元で名を囁かれる。
 熱の孕む黒い瞳は、今も昔も、変わらず私しか見ていない。

 どれだけ不安な気持ちが芽生えても、リュセは真っ直ぐに私だけを見つめてくれている。
 私が愛を囁けば、同じ熱量を……いや、それ以上の愛情を返してくれる。
 そんなリュセのそばにいると、自分に自信がなかった過去を、忘れてしまうこともある。
 
 「いつもかっこよかったけど、今日は一段とかっこいい……っ。もう、大好きすぎて、胸が痛いっ」

 上掛けで口元を隠すリュセは、恥ずかしそうにしながらも、きらきらとした瞳で私を見ていた。

 「噂は真実になりましたね? シュヴァリエ様? 有言実行でした」
 「ん゛。改めて言われると……恥ずかしいな」
 「ふふっ。みんなに、僕の勘違い発言を撤回する必要がなくなって、安心しましたっ」

 色々と思い出してしまう私は、顔に熱が集まってしまう。
 表情を取り繕うことには慣れているはずなのに、リュセを前にすると仮面なんてすぐに剥がれる。

 「かわいい……っ」
 「ずっと勘違いしている時のリュセも、愛らしかったぞ?」
 「もうっ。教えてくれたらよかったのに……」
 「その件に関しては、本当にすまなかった。いくら身内とはいえ、リュセとのことは誰にも教えたくなかった……。私だけの秘密にしたかったんだ。次からは気を付ける」

 謝るようなことじゃないと言ってくれたが、勝手に勘違いをしていた身内を、放置していた私も悪かったと心から思う。

 生涯、孫を抱けることなどないと思っていた父はもちろん大喜びで、その顔を見ていると、なかなか言い出せなかった。

 私の周囲の人間が、後継者に期待するのは当たり前のことなのだが、リュセは元々子を産む体質ではなかったのだ。
 異世界に来て、神から子を宿す器官を授かったわけだから、不安に思うこともあっただろう。

 我が子が欲しくないわけではないのだが、私が一番大切なのは、リュセだ。

 早く子をと口にはしていないが、周りから期待されていることは伝わっていたはず。
 もしかしたら、プレッシャーを感じていたかもしれない。
 もっとリュセの気持ちを配慮すべきだったと、後悔していた。

 そんな私を他所に、にこっと微笑むリュセは、『シュヴァリエ様と同じ、きらきらの碧眼の子が産まれると思いますっ!』と、確信しているように話していた。










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