婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 言いづらそうにするセバスさんを見て、かなり大変な仕事なのだと察した僕。

 ……もしかしたら、領地経営かもしれない。

 ライトニング公爵家は、この国一番の広大な領地を保有しているんだ。
 領地経営に関することは学園では習っていないけれど、挑戦してみたいと思う。

 僕はシュヴァリエ様のためなら、なんだってできるんだ!

 やってやるぞ顔の僕を見つめるセバスさんは、コホンとひとつ咳払いをした。


 「最も重要な仕事は、後継者を産むことです」
 「…………っ!!」


 領地経営に関する難しい内容なのかもと予想していた僕は、プシューッと顔から湯気が出ていた。

 貴族の家に嫁ぐのだから、後継者は絶対に必要。

 子を産むことの出来る人が重宝されているのだから、至極当たり前のことを言われただけだっ。

 でも、シュヴァリエ様に愛されることを想像してしまう僕は、きっと今、とんでもない顔をしていると思う。

 ……沈黙が流れる。

 そしてハッと目を見開いたセバスさんが、深々と頭を下げる。
 「申し訳ございませんっ。余計なお世話を──」と謝罪の言葉が聞こえた僕は、慌てて立ち上がっていた。


 「が、ガンガン、頑張り、マスッ!!」
 「「「っ…………」」」


 背後からひゅっと息を呑む音がして、あんぐりと口を開けているセバスさんと見つめ合う僕は、カチコチに固まっていた。

 (ま、まさか、僕の背後に……シュヴァリエ様がいらっしゃる……?)

 僕の心の声が届いたのか、大口を開けたままのセバスさんが、ゆっくりと頷いた。


 ──その瞬間、僕の視界が真っ暗になる。




 気付けば、公爵夫人が使用する部屋で横になっていた。
 昨日まではなかった寝台に寝ていた僕は、先程のことは夢だったのかもしれないと、現実逃避していた。

 でも……。

 後継者を産むことは、当たり前のことだよね?
 一番重要な役割を、なんで忘れていたんだろう? 

 学園を首席で卒業したはずなのに、僕ってやっぱり馬鹿だった……。


 「超絶優しくて、美しすぎるシュヴァリエ様に似た子は、間違いなく可愛いだろうな……。ふふっ」


 小さなシュヴァリエ様を想像して、ひとりでにまにまする。
 そんな僕の左隣から、ガタンッと大きな音がして、驚く僕は飛び起きていた。

 「…………」

 僕の目の前には、綺麗な白銀の髪を乱れさせて、椅子から転げ落ちた人がいる。
 
 「シュヴァリエ様……」
 「っ、リュセが心配で……。勝手に部屋に入って、すまなかった」

 目尻を赤らめるシュヴァリエ様は、床に腰を下ろしたまま、決して僕の方を見なかった。
 さっと寝台からおりた僕は、シュヴァリエ様の顔を覗き込む。

 「そんなこと気にしていませんよ? いつでもウェルカムですっ!」

 照れたように目を瞬かせるシュヴァリエ様は、なにも答えずに小さく頷いていた。

 きっと、倒れた僕を運んでくれたのだろう。
 それで心配になって、ずっとそばにいてくれたのかもしれない。

 迷惑をかけて申し訳ないと思いつつも、嬉しい気持ちが爆発している僕は、シュヴァリエ様の手を取って立ち上がった。

 「そんなところにいたら風邪をひきます。い、一緒に……寝ますか?」
 「っ、いや、しかし、」
 「大丈夫ですっ! 婚姻するまでは、なにもしませんから!」
 「…………」

 ぽかんと口を開けるシュヴァリエ様は、どんな顔をしても可愛かった。
 
 大好きな人を寝台に招き入れる僕は、かなり大胆なことをしていると思う。
 でも、もう少し一緒にいたくて、おずおずと横になったシュヴァリエ様に抱きついていた。

 「こうしてくっついているだけでも、僕は幸せですっ」
 「…………」

 まっすぐに寝ているシュヴァリエ様は、すでに目を伏せていた。

 「は、早いっ。もう寝ちゃってた……。きっと疲れていたんだろうな……。ちょっと残念だけどっ」

 美しい横顔をうっとりと眺め続ける僕は、こっそりと頬におやすみのキスを送った。


 ここぞとばかりにぎゅうぎゅうと抱きつく僕は、僕に抱き枕にされた人が、一睡も出来なかったことを知らずに、幸せな気持ちのまま眠りについていた。













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