婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 着飾った未来ある若者たちが、音楽に合わせて軽やかにステップを踏んでいる。
 その中心で、絶世の美丈夫にリードしてもらう僕は、笑顔で苦手なダンスを踊っていた。


 本日は、待ちに待ったダンスパーティー。
 特訓の成果を見せる時がやってきたのだ。


 最初は二人とも緊張していたのだけれど、踊り始めれば緊張なんて吹き飛んだ。
 だって僕の目の前には、人前では滅多に笑みを見せない人が、嬉しそうに微笑んでいたから。

 大勢の参加者がいるのに、まるで僕しか見えていないといった表情のシュヴァリエ様。
 普段は美しいお顔を隠すように長い前髪を下ろしていたのだけれど、今日はビシッと決めている。
 髪を掻き上げる仕草も好きなのだけど、今日は僕の要望通りの片寄せヘア。
 色っぽくて、最高に格好いいのだっ!

 「幸せすぎて、鼻血が出そう……っ」
 「ククッ、またおかしなことを……」

 肩を竦めるような仕草を見せたシュヴァリエ様だけど、すごく嬉しそうだ。
 すっと引き寄せられて、「だが、そんなところも愛らしい」と耳元で囁かれる。
 腰が砕けそうになる僕を支えているシュヴァリエ様は、なに食わぬ顔で踊っていた。

 「し、心臓に悪いですっ! まだ一曲目なのに、足がガクガクッ!」
 「クククッ……。リュセを喜ばせることができて嬉しい」

 心の底から楽しんでいるシュヴァリエ様を見上げる僕は、にっこりと微笑み返した。

 ミイルズさんの一件以降。
 シュヴァリエ様が、自身の気持ちを隠すことなく僕に伝えてくれているんだ。
 いつもは僕が大好きだと伝えて、シュヴァリエ様が照れていたのだけど、完全に逆転していた。

 「甘い言葉を囁くシュヴァリエ様は、間違いなくハイスペックな婚約者様である」
 「……リュセのおかしな独り言にも慣れてきたのだが、やはり恥ずかしいな」

 ふいっと顔を背けたシュヴァリエ様が、頬を染めている。
 今日は美しいお顔が全開だから、照れた表情も丸見えだ。

 「はうっ。ご馳走様ですっ」
 「…………リュセ。今日は完璧にリードしたいのだから、辱めるのは程々にしてくれ」
 「ふふっ。やっぱり可愛いですっ!」
 「それを言うならリュセだろうに……」

 周りを見てみろと言われるのだけど、僕はシュヴァリエ様しか見ていない。
 そんな僕を熱っぽく見つめる碧眼は、今日も今日とてキラキラと輝いていた。

 僕は背が低い方ではないのだけど、いい感じの身長差。
 どこから見ても完璧な造形美だし、引き締まった体はダンスのキレが良すぎる。
 元々運動神経がいいのもあると思うけど、容姿を補うべく努力してきたそうだ。
 その話を聞いた僕は、シュヴァリエ様の努力家なところも尊敬している。

 そしてシュヴァリエ様の良さをみんなに知ってほしいと願う僕は、本日は体力の限界が来るまで踊り続ける予定だ。

 「私にとってダンスパーティーは辛い思い出だったが、リュセのおかげで最高の一日になりそうだ」

 そう言って、軽々と僕を持ち上げたシュヴァリエ様がくるりと回れば、周囲からは「おおおっ!」と声が上がる。

 息ピッタリの僕たちのダンスだけ、他の人たちとレベルが違う。
 ダンス大会があれば、今の僕たちならダントツで優勝する自信があった。
 僕は足を引っ張らないようにベストを尽くしていたけど、いつのまにか家での練習のように楽しく踊っていた。





 四曲も踊った僕は、シュヴァリエ様にエスコートされて休憩に向かう。
 本日は実力を解放したシュヴァリエ様に対して、あたたかな拍手が送られていた。
 それに応えるように片手を上げたシュヴァリエ様と、シャンパンを手にしてテラスに涼みに行く。

 ステップを一度も間違えなかったなと、キレッキレのダンスを踊ったお方が僕を褒めてくれる。
 頑張った甲斐があったと喜んでいると、心地よい風を受け、喉を潤したシュヴァリエ様が夜空を見上げた。


 「本当は……。一度でいいから、誰かとダンスを踊ってみたかったんだ」









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