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森のくまさん
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しおりを挟むどれぐらいそうしていただろうか。
見慣れたはずの家や道がなく、見知らぬ場所にいるという非現実なことがおき、私の思考回路がしばらくの間停止していた。
優「クシュッ、クシュッ。」
娘のくしゃみでようやく私は我に戻った。
なんだかアパートを出た時よりも寒く感じる。長袖のシャツに厚手のふわふわしたカーディガンを着ていても寒い。雪でも降りそうなほどの寒さだ。
私は抱っこ紐を装着したまま少し四苦八苦しながらも着ていたカーディガンを脱ぎ、娘を包み込むようにカーディガンを巻いた。
そうだ!携帯がある!
私はトートバッグから携帯電話を取り出し、地図アプリを開く。
しかし、地図は開かず、白い画面だけが映し出されるだけだった。画面をよく見てみると、圏外になっていた。
由「・・・うそ・・・。なんで圏外なのよ。」
さっきまでは普通に使えていた携帯電話。実家に電話をかけてみても繋がらなかった。
またしても、私の思考が停止する。
優「クシュッ、クシュッ。」
とまた娘がくしゃみをする。
ぼーっと突っ立ってる場合じゃない。このままじゃ娘が風邪をひいてしまう。
由「とりあえず暖がとれるところを探さないと・・・どっちに行けばいいの?」
周りを見渡しても見えるのは薄暗い森。鳥の鳴き声や他の動物たちの気配すらなく、一気に私の心は不安でいっぱいになった。
由「真っ直ぐ行ってみて、何かしら見えてきたらまたその時考えよう。」
私は真っ直ぐ前に進むことを決め、周りを気にしながら歩き始めた。
体感にして30分ほど歩いても周りの景色は変わらず、自分の歩く音しか聞こえない。娘はリズムよく揺れるのが気持ちよかったのか、今はぐっすりと眠っている。
少し休憩しよう。娘を抱っこしながらだと30分歩いただけでも疲れてしまう。少し休もうと思い、近くの木の幹に腰を下ろし、一息ついた。動きを止めた途端に肌寒く感じ、ぶるっと身震いさせた。
その時
ガサッ
ガサッ
と前方の方から何かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえてきた。それも重量感のある足音。
私は寒さとは違う身震いをさせ、娘を両腕で抱きしめ、すぐ動けるようにと腰を浮かせ、音のする方へと目を凝らした。
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