【完結】魔獣の公女様 

nao

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20] 不満  〜ナディア〜

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何故?
どうして私じゃ無いの?

リディアを追い出して半年以上が過ぎた。
葬儀も終わって、当然、次の妃に選ばれるのは私だと思っていたのに、次の妃に選ばれたのは、まだ16歳の公爵令嬢だった。
これから2年をかけて、王太子妃教育を施し、18歳の学園卒業を待って、結婚式を行うと発表された。
選ばれた令嬢は、家柄、容姿、知性、魔力量、性格まで、全て他より抜きん出ており、貴族会議で満場一致でその場で決定されたと言う。

どうして?
リディアがいなくなれば当然 次の妃に選ばれるのは私でしょう?!
どうしてぽっと出の知らない公爵令嬢の名前が出て来るの?


私は詳しい話を聞く為、急いでお父様の執務室に向かった。
先触れも出さずに突撃するなんてはしたないとは分かっているけれど、そんな事に構っていられない程、私は焦っていた。

大きな音を立てて、せわしなくノックをして、返事も待たずに扉を開けて中に入った。

「お父様!アラン様の妃が決まったと言うのは本当ですの?!」

「ナディア、大きな声ではしたないだろう。わきまえなさい。」

お父様が冷たい視線を私に向けるが、私はそんな事に構っていられない。

「そんな事より教えて下さいませ!アラン様の次の妃が決まったと言うのは本当ですの?!」

「はぁ…」

お父様はわざとらしくため息をついて、チラリと私を横目で見ると、ソファーに座るように私に言った。

「殿下に新しい妃が決まったのは本当だ。フォレスト公爵家のご令嬢だ。貴族会議で満場一致で次の妃に相応しいと判断された。」

「どうして?!」

「落ち着きなさい、ナディア。」

「だって!お姉様がいない今、次の妃に選ばれるのは当然妹である私でしょう?何故 聞いた事も無い公爵令嬢が選ばれたんですか?」

「新しく妃を選ぶように決めたのは皇帝陛下だ。今回は陛下自ら選定し、貴族会議で満場一致され、決定した事だ。覆る事は無い。お前が何を勘違いして 次の妃に自分が選ばれると考えていたのか知らないが、お前が次の妃に選ばれる事は無いよ。そもそも王妃になる者としては魔力量が足り無いし、聖魔法も使えないお前が選ばれるはずが無いだろう。一体どんな思い違いをしていたんだ?」

「思い違い?だって私はリディアの双子の妹だし…」

「リディアはイースデール公国で1番の魔力持ちだ。マルコシアス帝国にあっても片手に入る魔力量だ。しかも全属性だ。お前とは違う。」

「でも、でもアラン様だってきっと私を選ぶはず…私はイースデール公国の公女で、リディアの双子の妹で、歴代最高の魔術師の孫で…」

「ナディア、リディアが選ばれたのは立場ゆえでは無い。リディア自身の資質が素晴らしいから選ばれたのだ。今度 妃に選ばれた公爵令嬢も同じだ。本人の実力が他より抜きん出ているから選ばれたのだよ。王家には妃に選ばれるべき条件が明確に決まっている。お前は何もかも足り無いのだ。お前が殿下に思いを寄せているのは知っていたが、もう忘れなさい。それと殿下の事をアラン様と呼ぶのもやめなさい。もう、お前は義理の妹でも何でも無いのだから。これからは王太子殿下とお呼びするように。」

「足り無い?私が?…」

「話は終わりだ。もう遅い部屋に戻りなさい。」

お父様との話し合いの後、どうやって部屋に戻ったのか覚えていない…
私が足り無い…妃になれない…
どうして?
なんで?
じゃあ私がした事は一体何だったの?
アラン様…
アラン様はこの事を納得されているの?
アラン様はリディアを愛していたもの、同じ顔の私を愛さないはずが無いわ。
きっと周りが勝手に決めた相手を押し付けられているんだわ。
アラン様に会いたい。
会えばきっと私が良いと言って下さるはずよ。
私はリディアと同じ顔をしているんだもの…
王宮へ行かなくちゃ、行ってアラン様に会わなくては!
一刻も早くアラン様に会って話をしないと…
グズグズしてはいられないわ。
国民に発表するまで後10日、正式な発表の前に何とかしないと…

私はアラン様にお姉様の事で話があるから会いたいと、謁見の申込みをした。
でも、帰って来た返事は「今は時間が取れない。リディアの事はもう忘れる」といった内容の返事だった。
返事を持つ手が震える。
持っていた手紙が手の中でグチャグチャになっていく…

「どうしてなのよ!!」

腹が立ち、イライラして目の前のテーブルにある物を力一杯払い除けた。
カップもソーサーもお菓子も何もかもバラバラになって大きな音を立てて床に落ちて壊れていく。
床はもうメチャメチャだ。
メイド達が怯えて部屋の隅に固まっている。

どうすればいいの?
何をすればいいの?
婚約発表までもう時間が無い!
もう一度ネックレスを使う?
でも、どうやって?
学園を卒業している私が今更デビューもしていない16歳になったばかりの少女に会う方法なんて何も思い浮かばないわ。

イヤよ!イヤよ!イヤよ!

何の為にリディアを排除したと思っているの?
私は一体何の為に実の姉を…
もう、今更戻れないわ。
邪魔してやる!
何としても邪魔してやるわ!
私はもう後戻りなんて出来ないのだから…




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