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4] ドラゴン?!
しおりを挟む目が覚めると木々の間から木漏れ日が差し、もう昼間だと言う事が分かりました。
グッスリと眠れたお陰で魔力も半分以上回復しました。
『お腹が空いたわ…』
私は周りを警戒しながら木の虚から出て、大きく背伸びしました。
そして何か食べられる物は無いかと、木の実を探して森の中を進みました。
とにかく何か食べて、今夜から眠れそうな新しい住処を探さないといけません。
流石に元の場所に戻るのは怖くて出来ません。
それに、またあのボス魔獣が追ってこないとも限らないのです。
『せっかく見つけた寝床だったのにな…』
私はとにかく水場を探して進みました。
しばらく行くと、湖を見つけました。
こんなに深い森の奥に、ポッカリと穴が開いたように円い湖が現れました。
美しいコバルトブルーの湖には、中心にこれまたポッカリと小さな島が浮かんでいます。
『キレイ…』
思わず感嘆の声が漏れました。
(実際にはく~~~んと言う声でしたが…)
私はこの湖の側で暮らせないかと、周りを伺いましたが、残念ながら前の川の時のような岩陰も、洞窟もありませんでした。
『だったらあの島はどうかしら?』
目に見える場所ですから転移で飛べます。
あそこなら、他の魔獣に襲われる事も無く眠れるかもしれません。
屋根になるような物はここからでは見えないので雨が降るとダメですが、お天気の日なら屋根は必要ありません。
『せめて、今日だけでもあそこで眠れないかしら?』
早速私は小島に飛ぶ事にしました。
用心深く島に他の生き物がいないか探索します。
幸い、島には先客はいないようです。
『転移』
私は島に飛びました。
島は一周しても30分もかからない程の小さなもので、少しの岩場とその岩場から続く小高い丘、丘には3本の大きな木が木陰を作っています。
丘の向こうは切り立った崖になっていました。
今の所生き物の気配はありません。
『お天気も良さそうだし、今夜はここで眠りましょう。』
私は並んでいる木の方へ向かい、適当な所に腰を下ろしうずくまりました。
小さな結界を張り、そこで休みました。
◇ ◇ ◇
『 …なさい』
『おきなさい…』
『娘よ、起きなさい。』
誰かが私に声をかけています。
『誰?』
疲れ切っていた私はなかなか目覚める事が出来ません。
何度か声をかけられてようやく重い瞼をこじ開けました。
『誰?!』
『お前こそ何者だ?』
『へっ?』
すると、私の目の前には大きなコバルトブルーのドラゴンが私をじっと見つめていました。
『キャ~~~~~ッ!!』
ビックリして悲鳴が出ました。
口から出たのは「キャンキャン」と言う声でしたが…
『うるさい。何もしないから少し静にしなさい。』
『あ…あ…あ…』
私の目の前には2階建ての建物程もあるコバルトブルーの大きなドラゴンが金の瞳で私の事をじっと見つめていました。
『はぁーーー』
と、1つため息をついたドラゴンは、あきらめように私に質問してきました。
『そなた、本当は人間であろう。何故こんな所にそんな姿でいるのだ?』
『わ、、、わたしが人間だとわかるのですか?』
『うむ、魔獣では無いな、魔力が違う。』
まさかこんな所で私の事をわかってくれるドラゴンに会えるなんて…
それに言葉が通じるなんて…
私は青ざめながら今までの事をドラゴンに聞いてもらったのです。
妹に魔導具を使って魔獣にされてしまった事。
必死に今まで逃げて来た事。
昨夜、トラのような魔獣に番にされそうになり、ここまでやっとなんとか逃げて来た事を話しました。
『随分とひどい目に会ったようだな。まぁしばらくはここでゆっくりする事を許そう。白虎には私から話を通してやっても良い。元の場所に戻りたければそれも良かろう。』
『ありがとうございます!』
どうやらドラゴン様はこの【深淵の森】の頂点であり、全ての魔獣を従える存在らしいのです。
私の事も迷い込んで来た人間と認識していたようで、私の居場所が次々と変わり、転移魔法を使っていた事がわかり、自分のエリアにどんどん近づいて来るので警戒していたそうです。
私は滞在を許可してくれたドラゴン様にお礼を述べ、しばらくこの島でお世話になる事にしました。
ドラゴン様の名前はリュート様。
【深淵の森】を治める水竜だそうです。
リュート様は普段はほとんどの時間をこの湖で過ごしていて、私のようなイレギュラーな事が起きた時、湖を出て問題の解決に当たるそうです。
私はこの島で本当に久しぶりにゆっくりと休む事が出来ました。
リュート様はとてもお優しく、私の食事の面倒まで見てくださり、感謝のしようもありません。
【深淵の森】の事も色々教えて下さいました。
この湖は【深淵の森】の中程にあり、人間は滅多にここまで入り込んで来る事は無いそうです。
驚いた事に、リュート様は5代前のケンウッド皇王と交流があったそうで、今でも陰ながら彼の国に加護を与えていらっしゃるそうです。
妃教育で隣国であるケンウッド皇国の事は習っていましたが、あの国の豊かさはリュート様の加護のお陰もあったのですね。
とても羨ましいお話です。
それに、ボス魔獣 白虎の事もリュート様が話を付けて下さるそうです。
早速、白虎の元へ飛んで行かれました。
良かった…本当に良かったです。
それから3日程して、リュート様が湖に戻って来られました。
ボス魔獣 白虎はなんとか、リュート様の庇護下にある私の事を諦めてくれたようです。
リュート様のお陰で私は元の場所に戻る事が出来るようになりました。
更に、リュート様は、私の住処だった岩場に加護を与えて下さり、他の魔獣は私に手出し出来なくなったそうです。
本当に、感謝してもしきれません。
リュート様は、私に遠くからでも出来るように念話の仕方を教えて下さり、
『加護で繋がっているから、困った事があれば連絡すると良い。』
そう言って下さいました。
私はリュート様にしっかりとお礼を言って、元いた場所に戻って来ました。
これで、しばらくは安全に暮らせそうです。
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