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【番外編】アルバート⑵
しおりを挟むリリと2人、お茶の用意をして 待っていると、兄様と義姉上が 最近流行りの菓子店のケーキを たくさんお土産に 持ってきてくれた。
4人で 軽くお茶会をして、リリと 義姉上は リリの部屋で 持って来た新しいドレスを見せたいからと言って、部屋から出ていった。
兄様と2人になった途端、兄様が 話を切り出して来た。
「アル、何か 悩んでいる事が あるのか?最近、イライラしてるって リリが心配している。」
「リリが 大袈裟なんだよ。リリが 余計な事を言ったみたいで、忙しい兄様にまで心配かけてゴメン。俺なら大丈夫だから…」
「アル、余計な事じゃ無いよ。アルが辛い思いをしているなら、私も リリも ほっておける訳が無いだろう?私にも 言えない事なのか?私では 力になれないのか?」
じっと こちらを見つめる兄様の瞳が 心配で揺れていた。
相変わらず 兄様は優しい。
言ってしまってもいいのかな?
こんな生活が出来るようになったのは兄様のお陰なのに…
今のこの生活が息苦しくてたまらないなんて…
でも… 俺は もう…
「俺、今の生活が息苦しいんだ… 今迄 貧乏で 平民と変わらない生活をしていたのに、いきなり 貴族らしい生活に変わって、こんなに 平和で、穏やかで、お金の心配もしないで 暮らせるなんて、兄様には 感謝してる。本当に ありがたいと思っている。でも 息苦しいんだ。」
兄様は 俺の話を 黙って聞いてくれる。
俺は いつの間にか 自分の気持を 全部ぶちまけていた。
「俺、冒険者になりたいんだ。兄様が婿入りして、俺が レイクウッド領を 継がなきゃいけないって ちゃんとわかっているんだ。わかってるんだけど、ずっとずっと こんな風に 貴族としての 振る舞いを 求められて、いつか 結婚して、後継を作って、領を納めて行くって そう考えたら たまらないんだ。」
兄様は 最後まで じっと 俺の話を聞いてくれた。そして…
「アル、私が 婿入りしたせいで お前に重荷を背負わせてしまって すまない。でもな 私も、父上も、お前を 領内に縛り付けたいとは思わないよ。お前が、自由に飛びたいなら 私は それを 全力でサポートしてやりたいと思っている。後継なんて、どうでもなる。リリもいるし、私もいる。私とカティの間に出来た子を 後継にしてもいいんだ。リリが 婿を取っても良い。父上もきっと 同じ様に言ってくれるはずだ。」
「でも 兄様、リリに 何もかも 責任を押し付けたく無いんだ。」
「アル、お前は優しいな。本当に 家族思いの優しい弟で 私は嬉しいよ。でも、私も、リリも、お前1人が 苦しい想いをするのは 違うと思う。自分の気持ちだけで先走って、何もかも抱えて 悩まないでほしいんだ。父上や、母上や、リリにも、きちんと相談して、皆んなで最善を選ぼう。お前が なりたいものになれるように 皆んなで考えよう。」
「兄様、ゴメン、ありがとう…」
兄様に 気持を 全部 ぶちまけて、少し気持ちが 楽になったような 気がする。
俺の気持を 聞いた兄様は、すぐに レイクウッド領の父上に 手紙を飛ばしてくれた。
2週間後、父上が 王都に出て来てくれた。
「父上、わざわざ俺の為に すみません。」
「アルバート、少し痩せたか?お前の気持ちに気づいてやれず すまない。」
「いえ、俺の方こそ わがままを言ってすみません。」
「お父様、お久しぶりです。」
「リリアーナ、元気にしてたかい?」
「はい、お父様。さぁ、中に入りましょう。お疲れになったでしょう? 今、お茶を入れさせますわ。」
応接室には、俺、リリ、父上、兄様が揃って、それぞれにお茶が入れられ、侍女が退室したタイミングで、父上が 本題を切り出した。
「アルバート、冒険者になりたいという気持ちは本物かい?」
俺は、父上の眼を しっかりと見つめ返して、
「はい。」
と、返事をした。
「そうか、わかった、頑張りなさい。ただし、決して命を 粗末にしないように!それと、将来の為に、学園は 卒業して欲しい。冒険者になっても、君はレイクウッド家の次男で、私の自慢の息子だ。君を 平民にはしたくない。貴族の冒険者がいたって いいだろう?」
「父上、ありがとうございます。」
父上の優しさに涙が出た。
「父様、そして エリオス兄様、私からもお願いがあります。」
「何だい? リリアーナ。あらたまって…」
「父様、兄様、レイクウッド領は、私が継ぎます。ですから、共に領を支えて行ける婿を迎えたいと思います。」
「リリ!」
リリがとんでも無い事を言い出した。
俺のせいで、リリを 犠牲になんて したくない
リリは、アレクが好きなのに…
「リリアーナ、それは 本気かい?」
「はい、本気です。兄様が婿入りした頃から ずっと考えていたんです。私が、レイクウッド領を 守ります。父様、お願いです。私を 後継者にして下さい。」
「リリアーナが本気なのは良くわかったよ。本当に良いのかい?」
「はい、お願いします。」
「リリ、兄様が婿入りしたから リリに無理をさせるんだったら、兄様は そんな事望まないよ。リリを犠牲にする様な事は したくない。」
「リリ、俺だって お前を犠牲にしたくない!」
「兄様、アル、私は 犠牲だなんて思ってないわ。むしろ 私は 自分の為に、アルの 冒険者になりたいっていう気持を 利用しようとしてるんだもの。」
「リリ、利用って?」
リリが決意の籠もった眼をして、父上に向き合った。
「父様、アレクセイ アルファイドに 私との婚約を 打診して いただきたいんです。」
「リリ!」
「アル、私ね 結婚するなら アレクが良いの。アレクは3男だもの、いつかは アルファイド領を出るわ。私の手の届かない所に 行く前に、私 アレクを 捕まえたいの。」
「はは… さすがリリだ。私の妹は、本当にすごいな。」
「エリオス兄様、兄様は 私の恋を 応援してくれる?」
「あぁ、勿論。勿論だとも。リリ。」
「リリアーナの気持ちは良くわかったよ。そうだね、モルガン家とも 相談が必要だけど、私は良いと思うよ。アレクはとっても良い子だし、昔から良く知っているし、リリアーナは 昔から アレクが大好きだったからね。帰ったら早速、アルファイド辺境伯様に 申し込んでみよう。」
「ありがとうございます。父様。」
「リリ、こんな形で アレクに 婚約を打診して良いのか?本当はもっとこう、告白したり、付き合ったりして、気持を確かめ合うとか…」
「アル、私ね チャンスがあれば、行く事にしてるの。ためらって 考え込んでいる間に 他の人に取られたくないの。これは、アルがくれた チャンスなんだと思うの。チャンスがあるなら、私はそれに 賭けてみたい。」
「そっか… わかったよ。リリが俺を応援してくれるように、俺もリリを応援したい。」
「うん。アル、応援して。私も頑張るから、アルも頑張って、ランク上げないとね!学生の内にS級になれるように頑張って!」
「結構 無茶振りするね、まぁでも頑張るよ。ありがとうリリ」
「さすが、わたしの弟と妹だ。2人共 私の自慢の弟妹だよ!」
「3人共、父様の自慢の子供達だよ。父様も3人の為に頑張るよ、まずは、リリの婚約打診だな。」
「よろしくお願いします。父様。」
「お願いします。父上」
次の日、モルガン伯爵にも相談してリリの婚約をアルファイド辺境伯様に打診する事が決まり、父上はレイクウッド領に帰って行った。
レイクウッド領に戻った父上は、早速、アルファイド辺境伯様に アレクセイの婿入りと、レイクウッド伯爵家の 後継者として、伯爵を継ぐことを条件に婚約が打診された。
婚約はすぐに了承され、アレクとリリは18歳になると同時に、結婚する事が決まり、25歳になったら伯爵となる事が決められた。
それまでは、2人で協力して、領地経営を父上と母上から習うらしい。
俺は、学園にいる間に、S級を目指し、卒業したら世界各国を渡る冒険者になることが決まった。
アルファイド領にある冒険者ギルドを拠点に、指名依頼などをこなして行く事になるだろう。
いつか、仲間を集めて、パーティを組みたいと思う。
俺の目の前にあった、閉じられた未来への扉が、ぱあっと開き、俺は夢に向かって、一歩を踏み出した。
あんなに イライラしていた気持ちもスッカリ晴れ晴れとして、毎日が楽しくて仕方が無い。
あの 話し合いから2ヶ月。
2人の婚約は、陛下にも認められ、リリとアレクは正式に婚約者となった。
知らせを聞いて、リリはとても嬉しそうに頬を染めた。
リリにも、幸せになって欲しい。
父上、兄様、リリ。本当にありがとう。
俺、絶対 S級になって、立派な冒険者になる!
俺の夢を 応援してくれる皆んなの為に、きっと 一流の冒険者になる!
俺はそう 固く決心した。
その後、俺は、兄様達に約束した通り 学園在学中にS級冒険者になった。
そして、卒業後は、世界中を飛び回っている。
あちこちで、S級の魔物を倒し、色々なダンジョンにチャレンジした。
1人、2人と、仲間も増え、今では4人でパーティを組んで、S級冒険者として、暮らしている。
パーティのメンバーの1人と恋人になって、結婚の約束をした。
いつか、レイクウッドに帰って、父上達に彼女を紹介したい。
リリとアレクも、卒業後 結婚した。
来年には、子供が出来るらしい。
エリオス兄様達の所には、先日、2人目になる女の子か生まれたと知らせがあった。
相変わらずとても仲が良い。
俺もいつか、彼女と幸せな家庭を築きたい。
彼女の手を取り、幸せになろうと、そう 誓いあった。
完
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