パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14 ⑥

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 それに、と淡々と茅野が言う。

「気に入っている人間の肩を持つのは、ごく自然の選択だろう」

 それはそうかもしれないと素直に納得して、行人は小さく笑った。同じ調子で軽く笑って、茅野は続けた。

「今を不条理だなんだと言うだけならまだしも、先頭に立ってぶち壊していこうとする馬鹿を何年も近くで見てると、どうにもな。まぁ、絆されたんだろうな、俺も。向原も似たようなことを言うと思うが」
「向原先輩も、ですか」
「直接聞いたわけでもないから、推測だけどな。推測ついでに言うと、篠原は向原の態度に感化されたんだと思うが。あのふたりは、なんだかんだと仲が良いし、付き合いが古いから」
「え?」
「なんだ、知らなかったのか? あのふたり、ここに入ってくる前から、というか、同じ小学校の出だからな。本尾も含めて、幼馴染みみたいなものだろう。――幼馴染みと聞いて、成瀬と高藤を連想すると、違和感はあるかもしれないが」

 どちらかと言うと、俺たちくらいの年で、あれだけベタベタと仲が良いままのほうが特殊だろう、と。
 それも、まぁ、たしかにそうかもしれないなと納得せざるを得ないことを言われてしまって、曖昧に頷く。

 ――そう言われると仲良い……のかな?

 本尾先輩はよくわからないけど、篠原先輩と向原先輩はそうなのかな。最近の生徒会室の雰囲気を思うと、ちょっとやっぱりよくわからないけど。
 ひっそりと悩んでいると、さっさと作業を終わらせた茅野が、まぁ、とにかく、と話を終わらせに入った。

「そういうわけだ。俺にとっても都合が良かったという面も大きいが。どうだ、利己的な理由だろう」
「あ、いえ、……そんなことないです」

 むしろ、公平な人だなと改めて思ったくらいだ。
 なにを持って公平と評すかは人それぞれだろうけれど、常に頭のどこかで第二の性を気にしてしまう自分からすると、「自分が気に入っているか、どうか」という茅野の基準は、いっそ清々しい。
 自分が仕訳けていた分もどうにか終わらせて、行人はぺこりと頭を下げた。

「その、ありがとうございました」
「礼を言われるような話でもないが。篠原なんかには、不良の思考だなんだと言われているくらいだしな」

 機械に忘れ物をしていないか確認をしながら、苦笑を返す。そういう見方もできなくもないのかもしれない。

 ……そういや、成瀬さんも、茅野さんのほうが、自分よりよっぽど思考が王様だって言ってたな。

 寮で夜中にばったり出会ったときに。そのときは正直、ふらふら勝手に出歩くなという茅野の弁のほうが圧倒的に正しい気もしていたのだけれど。

「終わったなら、戻るか。遅くなると、さすがに篠原が気を揉みそうだからな」
「すみません、本当にありがとうございました」
「気にするな」

 本当になにも気にしていないふうに請け負ってもらった上に、プリントの束もそのまま半分持ってもらってしまった。
 生徒会室まで着いてきてくれるらしい。

「あの……」
「あぁ、俺も生徒会に行く用事があるんだ」

 そのついでだとあっさり明かされて、それなら、と行人は少しほっとした。

「どうだ? 選挙のほうは。榛名は本格的に手伝うのははじめてだろう」

 窓の外、校門付近でビラを配っている生徒の姿が目に入ったらしい。そう問われて、頷く。自分もこれが終わったら、合流するつもりだ。

「あ、はい。最初は恥ずかしかったんですけど、今はちょっと慣れました」
「そうか。がんばると言っていたが、本当にがんばっているみたいだな」
「ありがとうございます」

 実際は、まだぜんぜん足りていないとわかっている。でも、向いていない積極的な活動をがんばって行っていることは事実のつもりだ。はにかみながら、行人はもう一度頷いた。

 ――中等部のときは、手伝おうなんて考えも浮かばなかったしな。

 中等部にいたときも、高藤は生徒会長をしていたけれど、最高学年に上がる前の順当な推されての出馬、というやつだったので、がんばるもなにもなかったのだ。
 もっとはっきりと認めると、他人事として、「まぁ、がんばれよ」くらいにしか思っていなかった。
 そう思うと、高藤との関係も含めて、自分はたしかに変わったのかもしれない。
 その行人を見て、ふっと茅野が目を細めた。

「高藤もだが、おまえも随分とまっとうだな。安心するよ。この学園の未来は明るい」
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