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第187話 上級者向けダンジョン
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「…着いたな。」
初心者向けダンジョンと同じような石造りだが、上級者向けは計100層以下の構造なので約2倍の高さがある。
その他に違う点を挙げるとすれば、入り口横にダンジョンと同じ素材で作られた”記録の扉”と呼ばれる楕円形の扉が設置されていることだ。
これは計80層を超えるダンジョンには10層ごとのボス部屋奥にも設置されているセーブポイントのようなもので、1度手をかざして登録することで以降自由に使えるようになる。
例えば地下20層のボスを倒して家に帰りたいときは、ボス部屋の奥にある扉をくぐることで入り口横の扉に瞬間移動できる。
また次回訪れた時に1層から攻略するのが面倒くさければ、入り口横の扉から登録した10層または20層の扉に瞬間移動できる。
登録箇所が複数ある場合はステータスウィンドウのように移動場所を選択できる機能もあり、攻略済み箇所を何度も反復せずに済む非常に便利な代物だ。
「まずは記録の扉に登録するぞ。」
「はい。」
「ねぇねぇ、この扉って結局誰が作ったの~?」
「さあな。古代文明人が作ったやらダンジョン自身が作ったやらと噂はいっぱいあるからな。」
「ちぇ~」
文献には気が付いた時には存在していたとあり、扉が作られる瞬間を見たものは今まで一人もいない。
俺としてはダンジョンの正体は巨大な魔物であるというダンジョン魔物説を支持しているため、ダンジョンが生成して設置したと考察している。
ダンジョン魔物説を支持する理由はいくつかある。
例えばダンジョン内で死ぬ者が多ければ多いダンジョンほど成長度は高く、少なければ少ないほど成長度は低い点。
これはダンジョン内で死んだ人は装備を残してダンジョンに取り込まれるという事象にも説明がつく。
さらに死者がダンジョンの栄養になっており、栄養を摂れば摂るほど大きくなると考えると納得がいく。
他には誰にも挑まれず放置されているダンジョンほどスタンピードが起きやすく、魔物がスタンピードで死んだ者をダンジョン内に引きずり込む点。
これは栄養を得るためにダンジョンが外へ魔物を派遣し、死者を持ち帰って消化吸収していると考えると納得がいく。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。何でもない。」
「それでは身分証をご提示ください。」
「ああ。」
「…問題ありません。それではお気をつけて。」
ギィィという錆びた音と共に門が開き、俺達は中に入った。
そこは先程の初心者向けダンジョンと同じような空間だが、道は一直線ではない上に広さもある。
『…ダンジョンを”鑑定”してみたら魔物説が判明するか?』
試してみると、ERRORと書かれたステータスウィンドウが表示された。
何度試してもこの表示しか現れない。
『この表示は初めてだな…まあ今は忘れて攻略に専念するか。』
隊列を組んで”魔物探知”と”罠探知”、”構造探知”を行使して地図作成を開始した。
本来ならば地図を購入するべきなのだが、未踏破地点を攻略する予行演習を兼ねている。
「…終わったぞ。アイリス、最短ルート算出を頼む。」
「はい。」
まるで迷路のように道が入り組んでおり、地図なしの運任せで進めばかなり時間を要するだろう。
こういったパズルはアイリスが非常に得意としているので、アイリスと役割を交代した。
待つこと数分
「…終わりました。」
「流石だな。じゃあ進むぞ。」
「おう!!」
道中には罠があったが、どれも即死罠ではなく足や肩に矢が飛んでくるだけの軽いものだった。
接敵した魔物はオーガ3体だけで、前衛のクレアが秒殺して地下2層に進んだ。
「つまんない~」
「ボ、ボクもなのです。新遺跡の探索と比べてもワクワクしないのです…」
おそらく敵が弱すぎるためただの作業になっているからだろう。
せめてコアが生きていたら宝箱も新しく生成されるのだが、完全攻略ダンジョンは宝箱がないのでそれも相まっている。
「…正直俺もだ。油断しない程度に急ぐか。」
「おう!」
それから同じ手順で攻略し続け、地下10階のボス部屋前に到達した。
躊躇うことなくゴゴゴゴと重い音を立てて扉を開けると、ボス部屋にはBランク魔物ノーブルオーガたった1体しかいなかった。
「…はぁ。イザベル、戦っていいぞ。」
「は、はいなのです。」
イザベルは雄叫びを上げるノーブルオーガに急接近し、横腹目掛けて棍棒を一振り。
ノーブルオーガの身体はくの字どころかひしゃげて潰れ、勢いよく壁にぶつかった。
「お、終わったのです。」
「お疲れ様…って言うまでもないな。記録の扉登録しに…」
「なあなあ!!オレいいこと思いついちまった!!」
「なんですか?」
「ここ結構広さあるしさ、久しぶりに模擬戦しねーか?」
強くなりすぎてしまった弊害とでも言うのか、元々戦闘狂じみたところがある俺達には全然身体を動かし足りなかった。
このボス部屋は庭より広く、一辺40mほどあるのでいいかもしれない。
「そうだな…俺が全員の相手するからかかってこい!!」
「よっしゃ!!じゃあ行くぜー--!!!」
それから夕方になるまで思う存分模擬戦を繰り返し、記録の扉を登録して地上に帰った。
瞬間移動の感覚はジェットコースターに乗ったかのように身体がふわっとする気持ち悪いものだった。
アイリスとイザベルが酔って吐きそうになっていたので、慣れるまで何回か練習してからパーティーハウスに帰還した。
初心者向けダンジョンと同じような石造りだが、上級者向けは計100層以下の構造なので約2倍の高さがある。
その他に違う点を挙げるとすれば、入り口横にダンジョンと同じ素材で作られた”記録の扉”と呼ばれる楕円形の扉が設置されていることだ。
これは計80層を超えるダンジョンには10層ごとのボス部屋奥にも設置されているセーブポイントのようなもので、1度手をかざして登録することで以降自由に使えるようになる。
例えば地下20層のボスを倒して家に帰りたいときは、ボス部屋の奥にある扉をくぐることで入り口横の扉に瞬間移動できる。
また次回訪れた時に1層から攻略するのが面倒くさければ、入り口横の扉から登録した10層または20層の扉に瞬間移動できる。
登録箇所が複数ある場合はステータスウィンドウのように移動場所を選択できる機能もあり、攻略済み箇所を何度も反復せずに済む非常に便利な代物だ。
「まずは記録の扉に登録するぞ。」
「はい。」
「ねぇねぇ、この扉って結局誰が作ったの~?」
「さあな。古代文明人が作ったやらダンジョン自身が作ったやらと噂はいっぱいあるからな。」
「ちぇ~」
文献には気が付いた時には存在していたとあり、扉が作られる瞬間を見たものは今まで一人もいない。
俺としてはダンジョンの正体は巨大な魔物であるというダンジョン魔物説を支持しているため、ダンジョンが生成して設置したと考察している。
ダンジョン魔物説を支持する理由はいくつかある。
例えばダンジョン内で死ぬ者が多ければ多いダンジョンほど成長度は高く、少なければ少ないほど成長度は低い点。
これはダンジョン内で死んだ人は装備を残してダンジョンに取り込まれるという事象にも説明がつく。
さらに死者がダンジョンの栄養になっており、栄養を摂れば摂るほど大きくなると考えると納得がいく。
他には誰にも挑まれず放置されているダンジョンほどスタンピードが起きやすく、魔物がスタンピードで死んだ者をダンジョン内に引きずり込む点。
これは栄養を得るためにダンジョンが外へ魔物を派遣し、死者を持ち帰って消化吸収していると考えると納得がいく。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。何でもない。」
「それでは身分証をご提示ください。」
「ああ。」
「…問題ありません。それではお気をつけて。」
ギィィという錆びた音と共に門が開き、俺達は中に入った。
そこは先程の初心者向けダンジョンと同じような空間だが、道は一直線ではない上に広さもある。
『…ダンジョンを”鑑定”してみたら魔物説が判明するか?』
試してみると、ERRORと書かれたステータスウィンドウが表示された。
何度試してもこの表示しか現れない。
『この表示は初めてだな…まあ今は忘れて攻略に専念するか。』
隊列を組んで”魔物探知”と”罠探知”、”構造探知”を行使して地図作成を開始した。
本来ならば地図を購入するべきなのだが、未踏破地点を攻略する予行演習を兼ねている。
「…終わったぞ。アイリス、最短ルート算出を頼む。」
「はい。」
まるで迷路のように道が入り組んでおり、地図なしの運任せで進めばかなり時間を要するだろう。
こういったパズルはアイリスが非常に得意としているので、アイリスと役割を交代した。
待つこと数分
「…終わりました。」
「流石だな。じゃあ進むぞ。」
「おう!!」
道中には罠があったが、どれも即死罠ではなく足や肩に矢が飛んでくるだけの軽いものだった。
接敵した魔物はオーガ3体だけで、前衛のクレアが秒殺して地下2層に進んだ。
「つまんない~」
「ボ、ボクもなのです。新遺跡の探索と比べてもワクワクしないのです…」
おそらく敵が弱すぎるためただの作業になっているからだろう。
せめてコアが生きていたら宝箱も新しく生成されるのだが、完全攻略ダンジョンは宝箱がないのでそれも相まっている。
「…正直俺もだ。油断しない程度に急ぐか。」
「おう!」
それから同じ手順で攻略し続け、地下10階のボス部屋前に到達した。
躊躇うことなくゴゴゴゴと重い音を立てて扉を開けると、ボス部屋にはBランク魔物ノーブルオーガたった1体しかいなかった。
「…はぁ。イザベル、戦っていいぞ。」
「は、はいなのです。」
イザベルは雄叫びを上げるノーブルオーガに急接近し、横腹目掛けて棍棒を一振り。
ノーブルオーガの身体はくの字どころかひしゃげて潰れ、勢いよく壁にぶつかった。
「お、終わったのです。」
「お疲れ様…って言うまでもないな。記録の扉登録しに…」
「なあなあ!!オレいいこと思いついちまった!!」
「なんですか?」
「ここ結構広さあるしさ、久しぶりに模擬戦しねーか?」
強くなりすぎてしまった弊害とでも言うのか、元々戦闘狂じみたところがある俺達には全然身体を動かし足りなかった。
このボス部屋は庭より広く、一辺40mほどあるのでいいかもしれない。
「そうだな…俺が全員の相手するからかかってこい!!」
「よっしゃ!!じゃあ行くぜー--!!!」
それから夕方になるまで思う存分模擬戦を繰り返し、記録の扉を登録して地上に帰った。
瞬間移動の感覚はジェットコースターに乗ったかのように身体がふわっとする気持ち悪いものだった。
アイリスとイザベルが酔って吐きそうになっていたので、慣れるまで何回か練習してからパーティーハウスに帰還した。
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