異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
175 / 188

第175話 蟲のダンジョン 中層②

しおりを挟む
11層の”マッピング”は縦穴を含めて全て終了したため、俺は12層へ続く階段を上った。

そして、12層に上がって目の前に広がったのは草がボーボーに生えた草原だ。



『…え?』



俺が知っているダンジョンの中とは、石のように見える破壊不能オブジェクトで作られた、薄暗い閉鎖空間だ。

しかし、現に目の前に自然が広がっている…



『…ここは攻略本をカンニングしよう。』



「以前”ダンジョンの本質”で説明したが、ダンジョンは悪魔の住処である。よって、深層に行けば行くほど生存に適した空間となっている。そして、ここ12層は悪魔の家畜であると考えられる。ここの魔物は繁殖力が高いため、悪魔の食事である魂を生産しやすいことから立てた推測である。」



とのことだ。

全く持って納得した。



『…ってこの作者他の本も出してたのか。見つけたら今度読んでみるか。』



ここで一つ、問題が発生した。

そう、それは閉鎖空間ではなくなったため”毒魔法”による一掃ができなくなったことだ。



『まじか…あれめちゃくちゃ楽だったんだけどな…』



そんなことを思っていると、早速”レーダー”に大量の反応があった。

半径50m以内だけで19匹の生体反応がある。

”千里眼”で偵察してみると、それはバッタの魔物だった。



『なるほどな…確かにバッタは大量発生するからな…』



観察していて分かったのだが、対峙するのは結構厄介かもしれない。

魔物化して身体が巨大化したことで足の筋力も強化されているため、跳躍力や移動速度が非常に増大しているのだ。



『もしかして…時速80kmくらいあるんじゃないか…?』



身体が一般車くらいに巨大化していることもあり、自然と車を想像させられた。

しかし、この素早さの敵をどう倒すか…



普通の魔法や武技攻撃では軽々躱されてしまうだろう。

となると、罠か奇襲だ。



『…いや、ちょうどいい機会だ。素早い敵に魔法を当てる練習をしよう。』



一番当たる可能性があるのは、攻撃速度が最も早いバレット系の魔法だ。

次に可能性があるのは、範囲攻撃系の魔法だろう。

限界突破魔法を行使したら余波でも倒せるだろうが、それだと面白味に欠ける。



『…そうだ!”ウェポンマスター”で扱う武器みたいに魔法にも”追尾”の効果を付与できるんじゃないか…?』



まずは試すために一匹だけのヘイトを集めたい。

そう思って一番近くにいたバッタ魔物に短剣を投げた。



『そしてこっちに向かってきたところを”結界魔法”で捕獲、隔離して…え!?』



俺の投げた短剣は寸分違わずバッタ魔物に近づいていった。

そして、そのまま貫通して風穴を開けてしまった。



『…あ、そうか。素早いと言っても”危険察知”スキルがあるわけではないから奇襲に気づかないのか。』



死んだ魔物を”鑑定”すると、魔物スキルは”跳躍”で使い勝手が良さそうだったので”略奪”しておいた。



これほど素早い魔物は滅多に遭遇できないので、残りの魔物から”略奪”するついでに魔法への”追尾”効果の付与を練習しよう。

敢えてバッタ魔物の目の前を通ると、相手は一直線にこちらに攻撃してきた。

俺はそれを何とか回避し、火属性魔法”ファイヤーバレット”で追尾攻撃を仕掛けた。

今度は俺の攻撃に気付いたようで、バッタ魔物はそれを回避しようと上に跳躍した。



『…今だ!』



宙に浮いて無防備になっている相手に向けて”ファイヤーバレット”を追尾させ、燃やし貫いた。



『成功だ…!!』



喜んだのも束の間、後方40m付近に強い存在感を感じて警戒態勢を取った。

何故考えが至らなかったのだろう。

バッタが増殖しすぎると、例えダンジョン内といえども生態ピラミッドの調整が入るということを。



”千里眼”で見るまでもない。

奴は体長8m程の巨体で、バッタ魔物を貪っている。

…そう、カマキリの魔物だ。



『でかい…それに、あの鋭い鎌は危険だな…』



”鑑定”すると、単純なステータス値ではバッタ魔物を大きく上回り、それどころかグレイの1/20くらいあった。

並みのAランク冒険者パーティでは全滅を免れないほどの強さだ。



『特殊なスキルは…ん?』



そこには”捕食”というユニークスキルが載っており、効果は捕食することで相手のステータス値の1/10を自身のステータス値に追加するというものだった。

そして、ごく稀に相手のスキルをも自身のステータスに加えるという…




『このまま放置して成長し続けたら…危険だな。ここで仕留めよう。』



今は幸いなことに食事に夢中になっているので、このうちに倒してしまおう。

俺は”手加減”スキルを行使して火属性魔法限界突破Lv.1”業火球”を行使した。



「…これでざわざわと鬱陶しい草まで焼き尽くしてくれ。」



数十分後



火が収まったので周囲の結界を解除すると、焼け野原が広がっていた。

”手加減”のおかげでバッタ魔物とカマキリ魔物両方の死体が残っていたので、俺は死体がダンジョンに吸収される前に、急いで”鑑定&略奪”をした。



また、長くなった草を焼却したことで視界が良くなり、13層に向かう階段を見つけた。



『…よし、13層に行くか。』
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...