異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

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第171話 蟲のダンジョン 下層①

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本によると、名前通り虫型魔物で構成されたダンジョンらしい。

その歴史は神達が穢らわしいと考えている虫に守護させることで、侵入を阻もうとしたという。



『虫は正直嫌だなぁ…前世でも無理だったし…』



これは異世界における関門の一つだと思う。

この世界の虫は全て原型を留めたまま巨大化して魔物化しているため、余計気持ち悪くなっているのだ。



『想像するだけで鳥肌が止まらないけど…頑張って我慢しよう。』



直接触らなければまだマシだろう。

常に自身の周りに結界を展開し、武器は使わずに魔法で倒そう…



そんなことを考えながら移動していると、目的地に到着した。

やはり虫は嫌われているからか、小規模ダンジョンだった。



『…と言っても外観は前世の高層ビルくらいあるけどな。』



そもそも大規模ダンジョンがおかしいのだ。

雲を突き抜けて天高くそびえ立ち、その頂上が見えない。

古の時代の地上は、これほど巨大な生物で溢れていたのだろうか…?



『…っと。誰か来たな。』



どうやら冒険者のパーティがレイドを組んで蟲のダンジョンに入るようだ。

荷物持ちや軽装の者が多いことから、おそらく素材採取だろうか?



『うーん…問題になるのも面倒くさいし、出来れば鉢合わせたくないな…』



「今回は3階層の素材を取りに行くぞ!!気を引き締めろ!!!」



「おおおおおおおおおおお!!!!!」



レイドパーティが士気を高めるべく、演説を始めた。

彼らの後ろをついていってもいいのだが、進度が遅いので先に進んでしまおう。



『…今のうちに入るか。』



俺は自身に“隠蔽“を付与し、不可視化した。

そして背後をこっそり通り、ダンジョンに入った。



『よし…!魔物を一掃してもいいけど彼らに怪しまれるだろうからな…このままハイドして進むか。』



少し歩いて十字路に繋がる広場に出たとき、ソレは現れた。


カサカサと音を立てながら移動する、黒光りしている楕円形の虫…

そう、忌々しきGだ…



『うわまじか…しかも兎くらいの大きさあるし何匹もいるし…最悪だな。』



ハイドしているとはいえ、できれば近くを通りたくないが…

後ろからレイドパーティの声が聞こえ始めてきた。

このまま進むのを躊躇していたら、追いつかれてしまう。



『やむを得ないか…』



一番スペースが開いていた左の通路の方へ、Gと距離を取りつつ全速力で移動した。



『ふぅ…虫はどうしても無理だな…』



”レーダー”で彼らの行動を窺うと、彼らはGを撃退した後迷わず中央の道を進んでいった。

ということは、中央の道が次の階層へ向かう正規ルートということだ。



目的地に向かって一直線に向かっているので、他の場所には来ないだろう。

したがって、”マッピング”するのなら今の内だ。



『よし…もう彼らの音も聞こえないし、魔物は倒して進むか。』



そのまま左の道を進んでいると、再び広場に出た。

今度は行き止まりだが、その最奥に宝箱があるようだ。



しかし宝箱を守るように、先ほど見たものより一回り大きいGが居座っていた。

この世界のGもしぶとく生きるのだろうか…?



『…地味に耐えられて近づかれたくないし、遠距離一撃で確実に仕留めるか。』



俺はスナイパーライフルを想像しながら死魔法”デスバレット”を行使した。

その弾丸はGの頭へとまっすぐ進んでいき、見事ヘッドショットを決めた。



『…死んでるよな?』



その場に倒れてピクリとも動かないが、死んだふりだったら嫌だ。

念には念を入れて火属性魔法”ファイヤーボール”で燃やして灰にした。



『よし…”レーダー”の反応も無いし進むか。』



宝箱に近づき、”罠探知”を行使すると、まだ一層だというのに厳重な罠が張られていた。



『このダンジョンの性質か…?それとも貴重な宝が眠っているのか…?』



後者であることを期待しながら”罠解除”で難なく無効化し、蓋を開けた。

驚くことに、中身はなんと”毒魔法”という未習得のスクロールだった。



『おぉ…!!当たりだな!!』



その名の通り、毒を使う魔法のようだ。

状態異常魔法と被っているが、効果はこちらの方が強いようだ。



とりあえずSPを消費してSランクまで習得した。

そして、ふとあることに気づいた。



『待てよ…これを上手く利用したら殺虫剤になるんじゃないか…?』



もし殺虫剤になるのなら、蟲のダンジョンは余裕で踏破できるだろう。

…それに、近づかずに倒せる。



『強力な遠距離範囲攻撃は…毒魔法S”デッドリーポイズンエリア”か。』



浅い階層のうちに効果や持続時間を試しておきたい。

俺は十字路に戻り、今度は右通路の方に進んだ。



こちらも行き止まりで宝箱があった。

唯一違う点は、宝箱の守護者がGの魔物五匹だったということだ。



『ちょうどいいな…”デッドリーポイズンエリア”』



ステータスを”鑑定”して様子を見ると、なんと一秒あたりHPが20000減り、HP量が多かったGをものの三秒で倒した。



『これは凄いな…!!それに無色無臭なのは視界も遮られないし都合がいい…!!』



これで蟲のダンジョン踏破の可能性がぐんと上がった。
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