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第167話 模擬戦

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俺とキャンベルは朝まで話し合った。

結果、グレイと決めた思惑通りの内容に持っていくことができた。



「ところでキャンベル、要塞都市の民に何も伝えずに結んだが…大丈夫なのか?」



「ヴァルハラ帝国程の人口ならともかく、ここは数十万人いますからね…いちいち承認を取るわけにもいかないんですよ。」



「確かにな…」



人の考えは十人十色だし、そんなことをしていたらいつまで経っても決まらないのだろう。



「それより、全体的にヴァルハラ帝国の方に依存する形になっていますが…いいのですか?」



「ああ。」



今回の同盟の目的は、要塞都市との協力関係を得ることそのものにある。



もし人族至上主義国の大軍に攻められたとしても、軍事同盟を締結したので協力を頼める。

それに要塞都市は攻防戦に向いているため、攻め込まれてもすぐには落とされないだろうという考えだ。



『要塞都市を犠牲にするのは少し心が痛むな…』



赤の他人が死ぬのは自分に全く関係がないので気にしないが、知り合いが死ぬのは心に来るものがある。

…せめて知り合いは死なないように努めよう。



「ではジェノス殿、私はこれで。」



「ああ。」



さて…

俺はマルコの隠れ家に“転移“した。



「おぉ、ダグラス!!遅かったわい!!」



「ん…?あぁ、すまんすまん。色々と用事が立て込んじゃったんだ。」



今までジェノスとして話していたので、ダグラスと呼ばれて一瞬反応できなかった。

約束を忘れていたとは言えないからな…

それに、予定が立て込んでいたのは事実だし…



「…それで、移住の件はどうなった?」



「ああ!ワシの工房の者全員が移住に賛成したわい!!」



「そうか…!!ちなみに何人だ?」



「18人じゃな。」



「了解。移住を受け入れる準備が出来たらまた来る。」



「おう!」



俺はその足で王都に“転移“し、ウェイドたちに建築の依頼を出した。



「工房作るときは依頼主達を呼んでもらっていいっすか?構造の好き嫌いが激しいもんで…」



「えっ、工房も作ってくれるのか?」



「もちろんっす!あっし達建築商会の中には工房専門の建築士もいるんすよ!!」



「へぇ…すごいな…」



「あざます!!じゃあ建築資材の準備があるんでまた明日迎えお願いしやす!!」



「ああ。」



ふと思ったのだが、最近眠気や疲労を感じないだけでなく成長も止まり始めてきた気がする。



『…まさか"魔王候補者“の効果か?」



恐る恐るステータスを開いて“鑑定“してみると、なんと“不変“という常時発動バフが付与されていた。

効果は身体活動レベルが全盛期の時で固定され、眠気や疲労を感じないだけでなく衰弱や加齢さえも防ぐらしい。



『ってことは俺は…不老になったのか…? 』



突然の思わぬ出来事に俺は唖然とした。

過去の魔王が倒されるまでずっと牛耳っていたのは、これが原因だったのだろうか?



『でも人間の寿命の長さじゃ異世界を存分に楽しめないと思ってたしな…正直助かる。』



不老ではあるが不死ではないようなので、この世界を十分に楽しんだ後に死ねば良いだろう。



二週間後



ウェイド達はマルコに散々指示をされながらも、なんとかドワーフ用の家と工房を建築し終えた。



「お疲れ。」



「お疲れ様っす!!まさか依頼主が伝説の鍛治師様だったとは…流石兄貴っす!!」



「ありがとう。」



俺はというと、この二週間ずっと“ウェポンマスター“を練習し続け、熟練度を上げた。

グリムやアンデッド軍が練習に付き合ってくれたため、実践的な経験を積めた。



「ダグラス殿、最後に模擬戦しないかの?」



「分かった。相手はいつも通りグリムとアンデッド軍ニパーティか?」



「うむ。儂だけだとすぐ負けてしまうからのぅ!!」



「じゃあこの金貨が地面についたら戦闘開始だ。」



「了解じゃ。」



「いくぞ。」



俺は金貨を親指で高く弾き上げ、その間に距離をとった。

そして地面に落ちたその瞬間、俺はグリムと一パーティの方へ行き、“ウェポンマスター"で片手剣、細剣、短剣、槍、弓、棍棒、盾をもう一パーティへ向かわせた。



この二週間の成果は二つある。



一つ目は、このように自身が攻防をしながら七つの武器を自由に扱えるようになったことだ。

これにより、複数のパーティと同時に戦えるようになった。



「はぁぁぁ!!!」



俺は自身の片手剣で片手剣スキル“レイドストリーム“を行使し、同時に七つの武器でもそれぞれスキルを発動した。

“ウェポンマスター“で操作している方は陣形を崩す作戦が綺麗にはまり、全員を倒すことに成功した。

しかし…



「むっ…!!」



重騎士のスケルトンだけを残して俺のスキルを回避し、そしてその大盾で防御してきた。

結果、何とか連撃で重騎士は倒せたが、他は全員無傷だ。



『逃がすか!!』



俺は“アイテムボックス“から百数十本の片手剣を取り出し、それを“ウェポンマスター“で操作して追撃した。



これが二つ目の成果だ。

スキルを行使せずにただ追尾式の攻撃をするだけなら、同時に百本以上を操ることができるようになった。



「ぬぁぁぁぁぁ!!!!」



最初の数十本は凌いでいたものの、全方向からの攻撃には流石のグリムも対応できずに倒れた。



「参ったのぅ…まさか手も足も出ないとは思わなかったんじゃよ…」



「俺はこれでも”魔王候補者”だからな。それにお前たちの上に立つ者として、これくらいできないと示しが付かないんだ。」



「流石ですなぁ…」



死神と約束した復讐に手を貸そうにも、この程度の実力では神々に対抗できるか怪しい。

もっと強くならなければ…
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