異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
上 下
145 / 188

第145話 商談①

しおりを挟む
「…契約って具体的には?」



「雇用契約よ!私がヴァルハラ帝国専属の商人になるわ!!」



「それは助かる…けどどうして急に?」



「”武闘大会優勝者の専属商人”の肩書は大きいわ!!それにSランク冒険者になる可能性もあるしね!!」



「なるほどな…」



いいように使われている気がする…

しかし、お互いウィンウィンなので目を瞑っておこう。



「じゃあ契約しようか。確か二種類あったよな?」



「ええ。簡単に説明するとあくまで書類上限りで裏切りし放題のものと、奴隷契約のように契約違反を犯すと何かしらの罰が下されるものの二つね。」



個人的には前世に色々あったこともあり、他人をあまり信用できないので絶対に後者がいい。

しかし、メリルに関しては性格的にも裏切らないと思うので前者でいいだろう。



「俺は前者でいいが…メリルは?」



「私も同じよ。ただ、私以外の商人は後者の方がいいかもね。」



「…ん?私以外ってことは他にもいるのか?」



「私ひとりじゃ足りないでしょう?これから誘うつもりよ。」



「それは…これから探す予定だったから助かる。」



「気にしないで。じゃあ二時間後に会議室に来て頂戴。」



「ありがとう。それで、できればここに書いてある商品を取り扱っている商人を集めてくれ。」



俺はグレイから受け取った紙の書き写しを渡した。

メリルは顔が広いので、もしかしたらここに記載されているすべてを揃えられるかもしれない。

…まあ淡い期待は辞めておこう。



「分かったわ。」



「ありがとう。…ヴァルハラとか魔王因子の説明はどうするんだ?」



「そうねぇ…他言したら心臓が止まる契約をするわ。」



「それは恐ろしいな…」



「まあダグラスのことを知っていて、かつ崇拝してる人たちを集めるから安心して。」



「…ん?崇拝?」



「ええ。海龍の一件でね。」



「そういえばそんなこともあったな…」



色々忙しかったのであの時の記憶が薄れつつある。

それに、今はもう”海龍の鱗”や”海龍の皮”といった素材としてしか見ていないのだ。



「そんなことって…まあいいわ。じゃあ二時間後にね。」



「ああ。」



メリルと別れた後、買い物リストの商品を次々大量購入して”アイテムボックス”収納した。

女性服を大量に購入したときは周りから少し白い目で見られたが、強メンタルで何とか凌いだ。



また、購入の際には海龍討伐の報奨金である”商会の買い物券”は未だに人生二回分以上の金額が残っていたため、全てそれで購入できた。



『…実質無料で買ってるようなものだけど…大丈夫なのか?…まあいいか。』



そして買い物リストに記載されているすべての商品を購入し終えた。

ちょうど集合の15分前だったので、俺は会議室に向かった。



『…何人くらい集まってくれるかな?ヴァルハラのことを考えたら三十人くらいは欲しいが…せめて五人だけでも引き入れよう!!』



そんな小さい目標を掲げながら会議室に入ると、俺は目の前の光景に唖然とした。

会議室は大体玉座くらい、即ち100m四方の面積があり、その面積にびっしりを人が詰まっていたのだ。



「あ、ダグラス!!十分前集合とはなかなかしっかりしてるわね。」



「……」



「…ダグラス?」



「あ、ああ。思ってた以上に人が集まっていて驚いただけだ。」



これほどの人数が揃うと疑いたくはないが罠かもしれない。

そう思い、全員を”鑑定”してみたが皆ただの商人だった。

しかも先ほど言っていた契約も済んでいる。



「…本当にすごいな。」



「ふふん!!でしょでしょ??ダグラスと別れてから私もだいぶ成長したんだから!!」



「そうだな…!!世界を股にかける商人も夢じゃないな!!」



「ありがとう!!もう契約も終えてるから壇上に上がって!!大規模商談の始まりだよ!!」



「…ああ!!」



俺は一度深呼吸をし、落ち着いてから壇上に上がった。



「今日は集まってくれて本当に感謝する。」



「良いってことよ!!」



「海龍を倒してくれたからな!!当たり前だ!!」



「そうよそうよ!!私の家族も無事に済んだんだから…!!!」



「…ありがとう。まずは俺の現状を説明する。」



そう言って俺はメリルに話したことを皆に説明した。



「もしかしてその魔王因子の発現は…海龍討伐が鍵になってしまったんじゃないか…?」



「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない…ただ、俺に魔王因子が発現しただけで多くの命が救えたんだ。安いものだ。」



魔王因子が発現した理由について、大体の目星は付いているがこれもあながち間違いではない。

誰かしら嘘発見の魔道具を持っていそうだが、これなら事実なので引っかからないだろう。



「それで…人族との共存を望む魔族の国ヴァルハラ帝国に分店を出してくれる人は…いるか?無理な人は契約に従って他言無用でここを去ってくれて構わない。」



「……」



驚いたことに、誰一人として出ていかなかった。



「…正気か?」



「ああ!!」



「恩人様には報わないとな!!」



「…ありがとう!!!じゃあ早速今後の予定について詰めていくぞ!!まず…」



それから分店の規模や店員、給料などを日が暮れるまで話し合った。

誰も嫌な顔をせずに引き受けたことから、本当に無理に従っている人がいないのだと実感した。



『…いい繋がりを持てたな。』
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

破壊の種 滅亡の花

結局は俗物( ◠‿◠ )
ファンタジー
(6/23…没リメ詰め)王子は「種上げの儀式」を終え王に就く。しかし今回の儀式は失敗し、王子は昏睡状態に陥る。王子・レーラを助けるために、友人・アルスとセレンは名医・オールを探し、彼を紹介した下級召喚士を名乗る女・ミーサを巻き込み国のため各地の精霊を求め旅に出ることになる。 ハイファンタジー/剣と魔法/異世界/微・恋愛要素 2003年~2008年で連載していたもののリメイクです。 ※自サイト先行掲載。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...