140 / 188
第140話 謁見
しおりを挟む
「…本当に武闘国家から?」
「ああ。と言っても武闘国家の国民とワシくらいしか知らんがな。ちなみにもう五日くらい経っとるぞ。」
「五日!?これって不敬罪になったりは…?」
「…分からん!まあ急いで行くことだな!!」
「ありがとう!ヴァルハラ帝国移住の件は帰って来た時にまた!」
「ああ!」
やはりヴァルハラは外の情報を得られないのが問題だ。
近いうちにこれも解決策を見つけなければ…
『武闘大会で優勝して、目を付けられたのか…?』
戦争に駆り出されることにはならないで欲しいものだ。
そんなことを願いながら武闘国家の屋敷に”転移”した。
”レーダー”によると、王宮は屋敷を挟んで闘技場の逆側に位置していた。
道理で武闘大会の際に一度も目にしなかったわけだ。
『国王…か。』
以前読んだ本の情報によると、武闘国家の国王はアッシュ=ヴァン=フリードリヒという人で、強大な両手剣の使い手だという。
その両手剣で倒した敵は数知れず、戦王とも呼ばれている。
彼は自分だけでなく他者にも厳しく、粗相をした配下を斬首刑にしたこともあるとか。
『…本当に俺大丈夫か?最悪”転移”で逃亡してヴァルハラに逃げよう…』
緊張するが、俺も一応ヴァルハラ帝国の王だ。
他国の王にびくびくしていたら配下に示しがつかない。
『…でもそれは世間に公表できないからな。”ヴァルハラ帝国国王ダグラス”ではなくあくまで”ただのダグラス”として謁見しよう…』
緊張を沈めながら歩き、ついに門前に着いた。
『…今の服装で大丈夫か?一応鎧は外して軽装にしてあるが…』
「お前!!先程から何をしている!?」
王宮の門番に怪しまれてしまった。
「俺はダグラスという者だ。マルコ=スミスから国王陛下に招集を受けていると聞き、参上いたしました。」
「身元を証明できるものはあるか?」
「ああ。」
俺は門番にギルドカードを渡した。
「…確認をとってくる。そこで待っていろ。」
幼少期に礼儀作法を習っておいて助かった…
出家と同時にアイザックの家名は捨てているが、それでも父さんたちに泥を塗るわけにはいかない。
数分後、門番が大慌てで戻って来た。
「さ、先程は大変失礼いたしました!!王様がお呼びですので玉座に向かってください!案内は向こうにいる執事の方が致しますので!!」
「ありがとう。」
門を開けてもらったのでくぐろうとしたが、門番が何か言いたげにこちらを見ている。
「あ、あの!!」
「…どうした?」
「武闘大会見てました!!僕も頑張ってあなたのように強くなります!!」
「…ありがとう。頑張って。」
「…っ!はい!!」
前世の芸能人はこういった感じだったのだろうか?
ファン(?)にこうも正面から尊敬されるとどこかむずがゆい。
「…どうぞこちらへ。」
「はい。」
執事に連れられ俺は玉座の扉の前に着いた。
「…くれぐれも粗相のないように。」
戦王とはいったいどのような人物なのだろうか。
本の挿絵では屈強な男騎士といった体格で険しい顔をした男だ。
緊張が解け、今は逆に戦王と名高い王に会えることにワクワクしている。
扉を開けた瞬間眩い光が差し込み、光に慣れてから俺は顔を上げた。
すると、目の前には両手で女性二人の尻を揉みしだいている豚のようにブクブクと太った男性がいた。
「よく来たなダグラスよ。」
『…はっ!』
挿絵と違い過ぎて一瞬思考が停止した。
あの挿絵はイメージだったのだろうか…?
それとも代替わりしたのだろうか…?
「…参上が遅れ、誠に申し訳ございません。」
「良い良い!朕は戦死した父アッシュ=ヴァン=フリードリヒに代わって即位したイゴール=ヴァン=フリードリヒである!」
「はっ!」
どうやら後者だったようだ。
「此度お前を招集したのは忌々しき魔法国家を滅ぼすためだ…!!ダグラス、お前には特攻部隊の部隊長を務めてもらう。」
「……」
嫌だと思っていたことが現実になってしまった。
しかし俺は別に武闘国家に籍を置いているわけでも仕えているわけでもない。
この命令に従う必要はあるのだろうか…?
「どうした?朕の命令が聞けないというのか?」
何としても断りたいが、事を荒立てたくはない。
一応逃走に備えて”偽装”で魔法の行使を隠蔽しながら”レーダー”を行使した。
玉座とはいえ魔法使用不可などのデバフはなく、それほど強い衛兵もいないようだ。
…いや、先程案内してもらった執事は少し腕が立つようだ。
とはいってもグレイに遠く及ばないほどだが。
「恐れながら陛下、私はこの国の騎士でも民ございません。それなのにどうしてこの国に命を懸けられましょうか、いや懸けられますまい。」
「お前…朕の命令を断るというのだな…?」
「恐れながら。」
「そうか…わざわざ下手に出てやったというのに…もういい!!殺しても構わん!!この者を捕らえよ!!薬を使って死後も壊れるまで使ってやる!!クハハハハ!!」
「ああ。と言っても武闘国家の国民とワシくらいしか知らんがな。ちなみにもう五日くらい経っとるぞ。」
「五日!?これって不敬罪になったりは…?」
「…分からん!まあ急いで行くことだな!!」
「ありがとう!ヴァルハラ帝国移住の件は帰って来た時にまた!」
「ああ!」
やはりヴァルハラは外の情報を得られないのが問題だ。
近いうちにこれも解決策を見つけなければ…
『武闘大会で優勝して、目を付けられたのか…?』
戦争に駆り出されることにはならないで欲しいものだ。
そんなことを願いながら武闘国家の屋敷に”転移”した。
”レーダー”によると、王宮は屋敷を挟んで闘技場の逆側に位置していた。
道理で武闘大会の際に一度も目にしなかったわけだ。
『国王…か。』
以前読んだ本の情報によると、武闘国家の国王はアッシュ=ヴァン=フリードリヒという人で、強大な両手剣の使い手だという。
その両手剣で倒した敵は数知れず、戦王とも呼ばれている。
彼は自分だけでなく他者にも厳しく、粗相をした配下を斬首刑にしたこともあるとか。
『…本当に俺大丈夫か?最悪”転移”で逃亡してヴァルハラに逃げよう…』
緊張するが、俺も一応ヴァルハラ帝国の王だ。
他国の王にびくびくしていたら配下に示しがつかない。
『…でもそれは世間に公表できないからな。”ヴァルハラ帝国国王ダグラス”ではなくあくまで”ただのダグラス”として謁見しよう…』
緊張を沈めながら歩き、ついに門前に着いた。
『…今の服装で大丈夫か?一応鎧は外して軽装にしてあるが…』
「お前!!先程から何をしている!?」
王宮の門番に怪しまれてしまった。
「俺はダグラスという者だ。マルコ=スミスから国王陛下に招集を受けていると聞き、参上いたしました。」
「身元を証明できるものはあるか?」
「ああ。」
俺は門番にギルドカードを渡した。
「…確認をとってくる。そこで待っていろ。」
幼少期に礼儀作法を習っておいて助かった…
出家と同時にアイザックの家名は捨てているが、それでも父さんたちに泥を塗るわけにはいかない。
数分後、門番が大慌てで戻って来た。
「さ、先程は大変失礼いたしました!!王様がお呼びですので玉座に向かってください!案内は向こうにいる執事の方が致しますので!!」
「ありがとう。」
門を開けてもらったのでくぐろうとしたが、門番が何か言いたげにこちらを見ている。
「あ、あの!!」
「…どうした?」
「武闘大会見てました!!僕も頑張ってあなたのように強くなります!!」
「…ありがとう。頑張って。」
「…っ!はい!!」
前世の芸能人はこういった感じだったのだろうか?
ファン(?)にこうも正面から尊敬されるとどこかむずがゆい。
「…どうぞこちらへ。」
「はい。」
執事に連れられ俺は玉座の扉の前に着いた。
「…くれぐれも粗相のないように。」
戦王とはいったいどのような人物なのだろうか。
本の挿絵では屈強な男騎士といった体格で険しい顔をした男だ。
緊張が解け、今は逆に戦王と名高い王に会えることにワクワクしている。
扉を開けた瞬間眩い光が差し込み、光に慣れてから俺は顔を上げた。
すると、目の前には両手で女性二人の尻を揉みしだいている豚のようにブクブクと太った男性がいた。
「よく来たなダグラスよ。」
『…はっ!』
挿絵と違い過ぎて一瞬思考が停止した。
あの挿絵はイメージだったのだろうか…?
それとも代替わりしたのだろうか…?
「…参上が遅れ、誠に申し訳ございません。」
「良い良い!朕は戦死した父アッシュ=ヴァン=フリードリヒに代わって即位したイゴール=ヴァン=フリードリヒである!」
「はっ!」
どうやら後者だったようだ。
「此度お前を招集したのは忌々しき魔法国家を滅ぼすためだ…!!ダグラス、お前には特攻部隊の部隊長を務めてもらう。」
「……」
嫌だと思っていたことが現実になってしまった。
しかし俺は別に武闘国家に籍を置いているわけでも仕えているわけでもない。
この命令に従う必要はあるのだろうか…?
「どうした?朕の命令が聞けないというのか?」
何としても断りたいが、事を荒立てたくはない。
一応逃走に備えて”偽装”で魔法の行使を隠蔽しながら”レーダー”を行使した。
玉座とはいえ魔法使用不可などのデバフはなく、それほど強い衛兵もいないようだ。
…いや、先程案内してもらった執事は少し腕が立つようだ。
とはいってもグレイに遠く及ばないほどだが。
「恐れながら陛下、私はこの国の騎士でも民ございません。それなのにどうしてこの国に命を懸けられましょうか、いや懸けられますまい。」
「お前…朕の命令を断るというのだな…?」
「恐れながら。」
「そうか…わざわざ下手に出てやったというのに…もういい!!殺しても構わん!!この者を捕らえよ!!薬を使って死後も壊れるまで使ってやる!!クハハハハ!!」
0
あなたにおすすめの小説
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる