異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
96 / 188

第96話 武闘大会 決勝③

しおりを挟む
師匠は再び盾と片手剣を装備し、戦闘態勢を整えた。



「行くぞ!!」



今度は武技スキルを使わず、通常攻撃で仕掛けてきた。



バフのおかげで先程重く感じていた攻撃はむしろ軽く感じ、防御が容易になった。

また、師匠の攻撃を何度も受けたことで攻撃を見切れるようになった。



あとは徐々に反撃をしていけば徐々に優勢になるだろう。

しかし、反撃をする余裕があるわけでもなくその上決め手に欠けている。



『どうしたものか…』



「ダグラス、強くなったな。」



「…いえ。まだまだですよ。」



「そろそろ終わりにしようか!!」



「っ!?」



師匠が大振りをして距離を取ると、俺は思わぬ光景に絶句した。

そう、師匠が分裂してそれぞれ地面に置いてあったはずの武器を装備していたのだ。



『なっ…!?』



「東国の武士である侍という職業のスキル”影分身”だ!!」



「影分身…」



「ああ!!実は東国の中でも希少な職業でな!!これは…」



師匠はとても自慢げに話している。

しかし、そんなことを聞いている余裕はない。



俺は師匠が行使している”影分身”を鑑定して効果を調べた。

どうやら分身を作れば作るほど戦闘能力は配分され、本体の戦闘能力は落ちるようだ。



「…それ悪手じゃないか?」



「そんなことないさ!!確かに分身を1体作れば戦闘能力は1/2に、2体作れば1/3になるデメリットがある。」



「それなら…」



「しかし!!メリットが凄まじいんだ!!!」



「…というと?」



「それぞれの分身に攻撃させられるだけじゃなくスキルが使えるんだ!!!」



「なっ!!!」



「しかも熟練度は元のまま!!ダグラスは今、それぞれの武技Sランク保持者全員と同時に戦っていることになる!!」



「…まじか。」



「な、なんと!!!カイル選手、こんな奥の手を隠していたとは!!!!」



「しかも東国のスキルですか…」



「東国だと何かあるんですか?」



「ええ。東国は未だ解明できていないことが多いんです。特に戦闘においては…」



「なるほど。カイル選手は現在、Sランク冒険者の中でもトップですがもはやSランクの範疇に収まらないかもしれませんね…」



「簡単にくたばるなよダグラス!!!!」



「くっ!!!」



冒険者のパーティ陣形を組まれてしまっている。

前衛に片手剣+盾使いと両手剣士、細剣士が、中衛に槍使いと棍棒使いが、後衛に弓使いと斧使い、両手剣士、体術士が配置されている。



「な、なんと!!!!カイル選手、冒険者パーティの陣形を組んでいます!!!」



「これは攻略が難しそうですね。1人でSランクパーティ1つを相手にしていることになりますからね。」



「しかし、ダグラス選手なら何かしてくれる気がします。」



「そうですね。このまま引き下がる玉とは思えない!!」



おそらく体術士が本体で、配置がおかしい斧使いと両手剣士はその護衛だろう。

しかし、師匠がそんな分かりやすい配置をするとは思えない。




『…罠か?』



考えても真偽はわからないので、仕掛けることにした。



「はぁぁぁ!!!!!」



俺は飛ぶ斬撃を放ちまくったが、やはり全て前衛に防御されてしまった。

しかし、相手は防御に必死で反撃は矢しか飛んでこない。



「ダグラス選手、斬撃を飛ばし続けています!!!なんという技量だーーー!!!」



「斬撃を飛ばすにはそれなりの風圧で剣を振る必要がありますからね…それをあんな膨大な数で飛ばし続けるのは至難の業です。」



実際は海王の片手剣の効果なので、騙しているようで少し申し訳ない。

師匠のパーティはおとなしく斬撃を防ぎ続けることを辞め、後衛にいた両手剣士と体術士を攻撃に回した。



「そう来ると思ったよ!!」



俺の読み通り反撃の余地である弓使いは重宝し、護衛1人を残して他が仕掛けてきた。

しかし、本体と踏んでいた体術士が仕掛けてくるとは思わなかった。



『…まさか本体は別か??』



戦闘能力が落ちている本体が仕掛けてくるとは思えない。

既に本体の予想がつかなくなってしまった。



『くっ!!これは厳しいな…』



斬撃を放つことを辞めたらSランクパーティが一気に襲ってくる。

そのため、俺は斬撃を放ちながら両手剣士と体術士を処理しなければならない。



「ダグラス選手、今大会初の窮地だーーー!!!!」



俺は斬撃を放ちながら相手の攻撃を盾で防ぎ、足で体術を行使して対応した。



「なんと!!ダグラス選手、3つの武技を同時に行使しています!!」



「あれは一体どんな修行をすればできるようになるんでしょうか…」



しかし、このままではじり貧だ。

俺は体術B”三日月蹴り”を行使して体術士を倒した。

また、その勢いで体術C”流水蹴”を行使して両手剣士も倒した。



「ダグラス選手、窮地を脱しましたーーー!!!」



Sランクパーティの方を見てみたが、追加の影分身は生成されていない。

”鑑定”で詳しく調べると、作った分身が全滅するまで”影分身”を行使できない制約があるようだ。

また、本体を倒せば分身は消えるようだ。



「ここからダグラス選手の快進撃が始まるのかーーーー!!!!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...