上 下
19 / 188

第19話 昇格試験

しおりを挟む
それから3ヶ月が経ち、俺はついに”器用”のスキルランクがSになった。

効果としては、「ただ器用になった。」としか言いようがない。



左手で文字が書けるようになったり、上下左右逆に文字が書けるようになった。



…というのもあるが、戦闘で大いに役立っている。

例えば武器の扱いが若干うまくなったり、”投てき”がより遠くまで当たるようになった。



また、”錬金”はCランクになった。

効果としてはHP、MP、TP回復ポーションそれぞれCランクの物まで生成できるようになった。

それぞれ一本でHP、MP、TPを3000回復できる。



”器用”がSになったら冒険者ランクF→Eの昇格試験を受けるつもりだったのでカウンターに受験手続をした。



「ダグラス君やっと昇格試験受けるんだね。なにかきっかけでもあったの?」



「そろそろ新しいクエストをやりたいなと思いまして。」



「君なら受かると思うよ。私は人を見る目はあるんだ!」



「ありがとうございます。ところで、試験について説明はもらえますか?」



「いいよ。ちょっと待っててね。」



ギルド職員が試験についての紙を持ってきて、説明してくれた。

試験はCランク冒険者とギルド職員の2名が試験監督となり3日にわたって行う。



初日と二日目はどちらか1日で指定されたクエストを行い、最終日はCランク冒険者との実践だ。

成績はA~Eの5段愛評価で、平均がCを超えたら合格だそうだ。



「はい。これが受験票。1週間後に始まるからその時にこれを持ってギルドに来てね!」



「ありがとうございます。全力で挑みます。」



それからいつも通り過ごし、試験の日がやってきた。

ギルドに着くと、そこには受験者が30人くらいいた。



「今日の試験監督を担当する”新芽の息吹”所属 Cランク冒険者のサイモンだ。よろしくな。」



「私はギルド職員のドミニクです。よろしくお願いします。」



「では早速試験を始めます。」



「ちょっと待ってください!俺試験のこととか何も聞いていないんですけど!」



「俺も!説明してください!」



「僕も!」



多くの受験者がなんの説明もなく試験を始めることに困惑し、批判した。

すると、



「黙れ!お前たちは自分から試験のことを調べようとしたか?これはクエストと同じだ!

事前に知識を詰め込んでいない奴はこれから先長生きできないぞ!」



サイモン試験官が怒鳴ると、静かになった。

俺は確かに試験官の言っている通りだと思った。



「分かったならいい。」



そして試験が始まった。



「今日は試験番号1~15の人のクエスト進行の状態を見る。クエストは”ゴブリン討伐”だ。

1番の人は早速準備しろ。前の番号の人が帰ってきたら次の人の試験が始まるから準備しておけ!」



『この試験官何気に試験内容説明してるし…ってそうじゃなくって。

俺の試験番号は15番なので今日の最後だ。まあ待ってても暇だし訓練しているか。』



そう思い、ギルドの中にある武道場で訓練を始めた。

流石にいつものように訓練すると疲れるので、”器用S”がどのような場面で生かせるかについていろいろ実験していた。



そして俺の番がやってきた。



「次、ダグラス!準備はいいか?」



「はい!」



「よし、ではいくぞ!」



ギルドを出て、森林の入口まで来た。



「いつも通り”ゴブリン討伐”のクエストをやるだけだ。緊張しなくていいぞ!全力を出せるように頑張れ!」



サイモン試験官めちゃくちゃ優しいなおい…



「ありがとうございます!では早速行かせてもらいます!」



”魔力感知”をして近くに4体の集団を見つけたので、俺は全速力で向かった。



そしていつも通り近くで気配を殺し、”投てき”で二体の頭を確実に抜いて仕留め、残り2体が混乱している隙に片手剣スキル” ツヴァイスラッシュ”で仕留めた。



試験官の反応が気になり後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。



「…っ!!サイモン試験官…!?どこに…」



”魔力探知”をすると、試験官は森林から入って少しのところにいた。



『なるほど。何らかのスキルでそこから見ているのか。じゃあ遠慮なく次行きますか!』



そう思い、全速力でゴブリン残り6体を仕留めた。

”ゴブリン討伐”のクエストを達成したので試験官のもとに向かった。



「サイモン試験官!”ゴブリン討伐”のクエスト終了しました!」



「き、君!どこに行っていたんだ?って…え?まだ初めて1時間も経ってないけど…」



「え、サイモン試験官は森林の入り口から見ていたんじゃないんですか?あと、これギルドカードです。」



「本当にクリアしているじゃないか…君は「では行かせてもらいます!」って言ったあと突然消えたんだよ。」



まさか俺が突然全力で走り始めたから見失っていたとは…



「じゃあ試験はどうなりますか?」



「うーん…監督できなかったのは俺の責任だ。

だけど君が不正してる可能性もあるしなんとも言えないなぁ…すまない。一緒に冒険者ギルドに来てくれないか?」



「分かりました…」



『はぁ…面倒くさいなぁ…まあ仕方ないか。』



そう思いつつも、俺とサイモン試験官はギルドへ向かった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...