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なんだか疲れたわ……
殿下との話し合いが終わった。
ようやく言ってやった!という気持ちと、彼も被害者だったのにと憐れむ気持ち。
魅了などなければ、彼は道を踏み外すことはなかっただろう。ずっと優しい殿下のまま──
それを知っているのに、私は彼がやり直す手助けをしないのだ。結婚の誓いで病める時も健やかなる時もと誓うが、ある意味この一年間、殿下は病んでいたのだろう。魅了という外的要素で狂わされた心の病。そこまで分かっていて助けない私は、本当に結婚する覚悟が足りなかったのだろう。
私は殿下を許さない。だから、殿下も私を許さなくていいわ……最後まで愛せなくてごめんなさい。
このまま部屋に戻ってしまいたいけど、先輩を待たせているのよね。なぜ今日だったのかしら。
殿下に絆されると思った?信用が無いのね。
疲れたせいか、思考がマイナス方向に振り切ってる気がする。
……本当は今話をしたくない。荒んだ心のまま先輩を傷付けてしまいそう。
「先輩、お待たせしました」
部屋に入ると、先輩が慌てて駆け寄ってくる。
「大丈夫だったか?」
あなたの殿下への態度が大丈夫じゃなかったです。そう思いつつも、冷静に説明するよう努力して口を開く。
「はい、無事話し合いは終わりました。父が殿下と共に王宮に向かいました。陛下に謁見が許されたら、殿下の症状を説明して下さる予定です」
「……すまない、怒ってるよな」
何に対して?駄目、やっぱり冷静になれない。
「殿下が私にしたことに怒ってくれるのは嬉しいです。でも彼は王子です。いくら同級生とはいえ、先輩の行動は許されません。許しも得ず部屋に乱入するなんて!不敬罪で捕らえなかった護衛の方に感謝して下さい」
そう、部屋の前には殿下の護衛騎士がいた。それを押し退けて乱入して来たのだ。武器を持たない学生だったことと、突然の愛の告白で危険は無いと生温かい目で様子を見てくれたことに感謝するべきだ。
「ごめん」
「私は愛がすべてだとは思いません。愛があればなんでも許されるわけないんです。こんなことで先輩の一生を駄目にしたら泣くに泣けません!」
いつも飄々としている先輩が珍しく落ち込んでいる。だいたいなぜそんなにも余裕が無くなってるのかしら。
「……先程の告白ですが、申し訳ありませんが今すぐにお答えはできません。今日はもう疲れてしまって考えがまとまらないのです」
お願い、そんな顔をしないで。責められてると感じてしまう。あなたの優しさに答えもせず、甘えていた私が悪いのは分かってる。
でも、殿下と過ごした愛しかった日々が私の決断を遅らせた。
まだ彼を想うと涙が出そうになる。覚悟が足りなかったけど、拙い恋だったけど、本当に好きだったの。
ようやく終わらせたけど、その日のうちにじゃあ次の恋の話を、だなんて無理よ……
「悪かった。あれは忘れてくれ、間違えた」
そう言って私の返事も聞かず、目も合わせずに部屋を出ていく先輩の背中を呆然と見送る。
間違えたって何を?まさか恋じゃなかった?
もしそうなら、確かに恥ずかしくて顔も見ずに帰るのは分かる気がする。
……そっか、チャンスはその時に掴まないとあっという間に消え去るモノなのね。
ううん、返事をしてなくてよかったのよ。好きだと言っても、ごめんなさいと言っても恥ずかしさしかない。
ああ、全部なくしちゃったのかぁ
ぼんやりと天井を眺める。
ううん、全部じゃない。家族がいるし、ビアンカ達は友達のままのはず。婚約白紙になったけど、身に付けた知識は失ってない。
うん、大丈夫。さっき自分で言ったじゃない。愛がすべてじゃない。大事なものはたくさんあるわ。
お母様に結果報告しなきゃ。ユリアーナも心配してくれていたからみんなでお茶でもしようかな。
今あるものを大事にしよう。
お茶を誘いに行くとお母様達が優しく抱きしめてくれた。心配かけてごめんね、これからはもっと強くなるから。
夜になってようやくお父様が帰って来た。少し疲れた顔をしている。
「あなた大丈夫ですか?」
お母様も心配なようだ。
「大丈夫だ、ありがとう。少し話がしたいがいいかい?」
お父様が優しい瞳で聞いてくる。殿下の話なのね。
「もちろんよ。お茶を用意しましょう」
お母様と一緒に話を聞いた。
「王妃様が?」
「あぁ、あの方だけが魔法のせいではなく殿下のもともとの性質だと言うのだよ」
そう言って殿下の幼かった頃の話をした。
「そんな小さい頃の出来事で?」
「あぁ、たったそれだけだ。だが、王妃は母である自分には分かると言って譲らなくてね。魔法のせいで本性が顕になったから隠さないといけないと思ったそうだよ」
たった一度、殿下が子猫に執着したから?でも、それからは一度もそんな姿は見せていないのに?
「結局魅了とはどんな魔法でしたの?」
そうね、それが一番に知りたいわ。
「それが分からないんだ。マルティナ公女自身、幸せになれるお呪いだと言っているそうだ。だから魔法など掛けていないと言っているらしい。
ただ魔法であることは間違いない。殿下が魔法を解いた時、公女に魔力が跳ね返ったそうだ。体中の激痛と内臓への負担で吐血し倒れた。今でも頭痛と耳鳴りが止まず、右目の視力も失ったらしい。
彼女への罰が幽閉のみなのは、すでに身体的罰が神に与えられているからみたいだな」
本人さえ知らない魔法だなんて。
そして自身さえ不幸にするお呪い。最低だ。
殿下との話し合いが終わった。
ようやく言ってやった!という気持ちと、彼も被害者だったのにと憐れむ気持ち。
魅了などなければ、彼は道を踏み外すことはなかっただろう。ずっと優しい殿下のまま──
それを知っているのに、私は彼がやり直す手助けをしないのだ。結婚の誓いで病める時も健やかなる時もと誓うが、ある意味この一年間、殿下は病んでいたのだろう。魅了という外的要素で狂わされた心の病。そこまで分かっていて助けない私は、本当に結婚する覚悟が足りなかったのだろう。
私は殿下を許さない。だから、殿下も私を許さなくていいわ……最後まで愛せなくてごめんなさい。
このまま部屋に戻ってしまいたいけど、先輩を待たせているのよね。なぜ今日だったのかしら。
殿下に絆されると思った?信用が無いのね。
疲れたせいか、思考がマイナス方向に振り切ってる気がする。
……本当は今話をしたくない。荒んだ心のまま先輩を傷付けてしまいそう。
「先輩、お待たせしました」
部屋に入ると、先輩が慌てて駆け寄ってくる。
「大丈夫だったか?」
あなたの殿下への態度が大丈夫じゃなかったです。そう思いつつも、冷静に説明するよう努力して口を開く。
「はい、無事話し合いは終わりました。父が殿下と共に王宮に向かいました。陛下に謁見が許されたら、殿下の症状を説明して下さる予定です」
「……すまない、怒ってるよな」
何に対して?駄目、やっぱり冷静になれない。
「殿下が私にしたことに怒ってくれるのは嬉しいです。でも彼は王子です。いくら同級生とはいえ、先輩の行動は許されません。許しも得ず部屋に乱入するなんて!不敬罪で捕らえなかった護衛の方に感謝して下さい」
そう、部屋の前には殿下の護衛騎士がいた。それを押し退けて乱入して来たのだ。武器を持たない学生だったことと、突然の愛の告白で危険は無いと生温かい目で様子を見てくれたことに感謝するべきだ。
「ごめん」
「私は愛がすべてだとは思いません。愛があればなんでも許されるわけないんです。こんなことで先輩の一生を駄目にしたら泣くに泣けません!」
いつも飄々としている先輩が珍しく落ち込んでいる。だいたいなぜそんなにも余裕が無くなってるのかしら。
「……先程の告白ですが、申し訳ありませんが今すぐにお答えはできません。今日はもう疲れてしまって考えがまとまらないのです」
お願い、そんな顔をしないで。責められてると感じてしまう。あなたの優しさに答えもせず、甘えていた私が悪いのは分かってる。
でも、殿下と過ごした愛しかった日々が私の決断を遅らせた。
まだ彼を想うと涙が出そうになる。覚悟が足りなかったけど、拙い恋だったけど、本当に好きだったの。
ようやく終わらせたけど、その日のうちにじゃあ次の恋の話を、だなんて無理よ……
「悪かった。あれは忘れてくれ、間違えた」
そう言って私の返事も聞かず、目も合わせずに部屋を出ていく先輩の背中を呆然と見送る。
間違えたって何を?まさか恋じゃなかった?
もしそうなら、確かに恥ずかしくて顔も見ずに帰るのは分かる気がする。
……そっか、チャンスはその時に掴まないとあっという間に消え去るモノなのね。
ううん、返事をしてなくてよかったのよ。好きだと言っても、ごめんなさいと言っても恥ずかしさしかない。
ああ、全部なくしちゃったのかぁ
ぼんやりと天井を眺める。
ううん、全部じゃない。家族がいるし、ビアンカ達は友達のままのはず。婚約白紙になったけど、身に付けた知識は失ってない。
うん、大丈夫。さっき自分で言ったじゃない。愛がすべてじゃない。大事なものはたくさんあるわ。
お母様に結果報告しなきゃ。ユリアーナも心配してくれていたからみんなでお茶でもしようかな。
今あるものを大事にしよう。
お茶を誘いに行くとお母様達が優しく抱きしめてくれた。心配かけてごめんね、これからはもっと強くなるから。
夜になってようやくお父様が帰って来た。少し疲れた顔をしている。
「あなた大丈夫ですか?」
お母様も心配なようだ。
「大丈夫だ、ありがとう。少し話がしたいがいいかい?」
お父様が優しい瞳で聞いてくる。殿下の話なのね。
「もちろんよ。お茶を用意しましょう」
お母様と一緒に話を聞いた。
「王妃様が?」
「あぁ、あの方だけが魔法のせいではなく殿下のもともとの性質だと言うのだよ」
そう言って殿下の幼かった頃の話をした。
「そんな小さい頃の出来事で?」
「あぁ、たったそれだけだ。だが、王妃は母である自分には分かると言って譲らなくてね。魔法のせいで本性が顕になったから隠さないといけないと思ったそうだよ」
たった一度、殿下が子猫に執着したから?でも、それからは一度もそんな姿は見せていないのに?
「結局魅了とはどんな魔法でしたの?」
そうね、それが一番に知りたいわ。
「それが分からないんだ。マルティナ公女自身、幸せになれるお呪いだと言っているそうだ。だから魔法など掛けていないと言っているらしい。
ただ魔法であることは間違いない。殿下が魔法を解いた時、公女に魔力が跳ね返ったそうだ。体中の激痛と内臓への負担で吐血し倒れた。今でも頭痛と耳鳴りが止まず、右目の視力も失ったらしい。
彼女への罰が幽閉のみなのは、すでに身体的罰が神に与えられているからみたいだな」
本人さえ知らない魔法だなんて。
そして自身さえ不幸にするお呪い。最低だ。
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