偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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83☆呼吸が苦い

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僕にしがみついて眠るユオをぼんやりと眺める。

どこまでが、夢、だったろうか。

ユオの覇気がなくなっていくのを、ただただ見ていたのは。
ユオが僕の八つ当たりで、自らを炎で包む程傷ついたのは。

いや、確かに現実だった。

神経がむき出しになったみたいなユオが、平気だと言って僕を気遣う。
飲み物すらろくに受け付けないのに、もう大丈夫と、元気だよという。

痛みに疲れすぎたユオに、神が、いつでも今の生をやめていいとつげたのだと思う。
記憶とこころの退行が目立ち始め、僕の治癒は役立たずだった。もちろん医者の薬も。

つき歩くしかできない僕に同情したのか、ソファとベッドを往復するしかない毎日になってやっと、ユオはキルヤさまの精神誘導を受けることを承諾してくれた。

たったの一度。たったの一時間。たったそれだけで。

キルヤ様は、笑顔のユオを部屋から連れ出してきた。10年前から変わらずに輝くあの瞳を取り戻して。

白昼夢だと思った。
泣きだしたいほど、ありがたかった。
キスマークに気づいたけれど、嫉妬もできない程。

それでも、ユオがキルヤ様の後ろについて玄関に向かうのを見るのは、心に激痛を伴った。

ユオがそのまま出て行ってしまうとしても、引き止められない。

せめてユオが振り返ってくれることを祈りながら息を詰めていると、振り返ったのはキルヤ様で。

「見送り不要だ、病人。さっさとサフラにメシ食わせてもらえ。その栄養状態、まじに一刻を争うだろが」

そういって、左手をぎゅっと握る握手をした。

「がるるるる」

ユオがとぼけた威嚇音を口ずさんで。キルヤ様がそれを笑って。

キルヤ様だけが、部屋を出た。

ユオは軽く伸びをして、僕を見て『お待たせ』といい、ぬるくなったお粥をそのままお茶わんによそった。

1時間前までが嘘のように、スムーズな動きで。

お粥をあるだけ平らげたユオも、僕の腕の中を寝場所に選んだユオも、おとぎ話のよう。

ユオが、身じろぎをして、億劫そうに目を開ける。

「おはよぉ、サフラ」

「・・・僕が、視界に入っても大丈夫ですか」

「サフラ、寝ぼけー?怒ってるならも一回寝るよー」

「おこってなんて、いません」

ちろん、と見上げたユオの顔つきは、まだねむそうで。

「敬語じゃん」

と顔をしかめ、

「えーと、パニック発症したのは、胸糞のサンギグループをとっ捕まえる時にトラブってキャパオーバーだったせいで。サフラのせいじゃないので誤解のないように」

僕のせいでないわけがない。あんなに泣いて。自分の半身を、焼き落としかけて。

僕よりもキルヤ様のほうが、圧倒的にユオを癒せる。
キルヤ様といれば、ユオは、笑っていられる。
そしてキルヤ様も、多分、ユオが好きだ。

それは、気が狂いそうな敗北感を伴う事実ではあるけれど、僕からユオを守れる人がいてよかったとも思う。

呼吸が苦い。
ユオの長いまつ毛も、赤みの戻った唇も、何度も僕を抱きしめてくれた腕も。
自分がユオの一番ではない日々が、どれほど苦しいか、想像させて余りある。
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