偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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40☆私は左手

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ああ、・・・なる、ほど?
夢うつつ、まるで自分のことのように濃くなった記憶が、おおまかな人間関係を告げていく。

心配性のサフラとお姉さんぶったユオは、師弟関係で、あたたかな仲良し、だった。

私が言うのもなんだけど、最初に釦を掛け違えたのはユオの方だろうと、予測が立つ。

散らばっている記憶だけでも、サフラの力借りたら、ユオのチープな体はいくぶんマシになったはずだとわかるもの。

自分のやらかしで怒り狂ったサフラをなだめろとか。むちゃぶりもいいところだ。
まったく、ポンコツさんですね、本体のユオは。

まぁ、サフラの力を借りたらだめな理由が、他にもあるのだろうけれど。
記憶の欠片をいくつかは、そんな雰囲気を醸していた気がする。

狭間に落ちた後のユオの叫び声なんて思い出してみると、ね。

「ダメってばぁっ。私が居なくなったってのに、なんだって能力が上がるのよぉっ」

サフラの能力が怒りのあまりさらに跳ね上がるのを見て。狭間の中の、ユオは・・私の本体は・・自分の体も顧みず叫びまわっていたから。

どうみても自分の心配した方がよさげだったのに。
割れた次元の欠片とか、デプリ化した気の塊とか、狭間で壊れた生き物の狂気とかに、ざくざくと体を刻まれていますよ?

せっかくクレーム係さんに壊れた体を直してもらっても、これじゃ、本体ユオが召されるのは時間の問題にみえたけれど。

クレーム係さんは、さすがに神様枠というだけのことはあった。
ユオの周りに結界を張ってくれて、それから、ユオの声を、サフラに届けられるようにと、ユオとサフラの間に糸電話もどきのチューブ?を結んでくれた。

でも、頼みの綱の糸電話と来たら、完全に逆一方通行状態。

糸電話を伝って来るのは、サフラの慟哭とサフラの後悔とサフラの煩悶の濁流。
ユオの怒鳴り声など、サフラの咆哮の前にあっさりと霧散している。

狭間にいるユオと、サフラの間では、いくつもの次元が挟まったりぶつかったりこすれたりしていたけれど、ある時、サフラは、その姦しい場所を出て、自分で作った次元に引きこもった。

ユオと二人になるために、サフラが遊びで作った空間。歪だし狭いし不安定だけれど、綺麗な雪山に小屋を建てて、お気に入りの場所だった。

で、この空間。偶然にも今ユオがいる狭間のご近所だった模様。
雑音が減って、サフラの気配まで感じて、糸電話を辿れば通り抜けできそうな錯覚に陥る。

なるほど。これは、誘惑だわ。

サフラの感情濁流の圧力に負けて届かないとはいえ、ユオが糸電話に向かって話すと、サフラが一生懸命それを辿ろうとするのだ。

ただ、ね、心底、危ない。

気配を辿ってなごんでくれるならよかったのだけれど。サフラは逆にどんどん荒んでいった。ユオの気配を辿って荒れる時はサフラのいる次元だろうがよその次元だろうが踏みつぶしそうな勢いだし、たまに雪山から出て行ったと思うと、血まみれで帰って来るし。

そんなサフラをみていたユオが、ついにキレた。

そして。

「あー、もうっ!だめだってばぁ!・・・サフラをなだめてっ!とりあえずなだめるのよっっ!」

ユオは、そう言うと、私を・・・自分の左手首から先を、強引にねじり切って、雪山の次元にいるサフラに向かって、勢いよく、投げたのだ。

「死んだり消えたりする姿はサフラに見せないで。おねがいよ」

この、猟奇娘め。
いくら声が届かないからって、自分の手をひねってひきちぎるとか、力技が過ぎる。
痛いじゃないのよ、もちろんあんたがね。

ちゃんと戦略あるんでしょうねぇ?

最後にそんなことを思ったけれど、本体から離れた私の意識は薄くなって、軽くなって。細いパスをすいすいとおって、次元的にはご近所らしい雪山へとすり抜ける。

軌跡が、揺らぎが、飛行機雲みたいで。きれいだな、とか、のんきなことを思った。

・・・

そうか。私は、こうやって手紙に、なったのか。
私は、本体がちぎり投げた左手。
至上命題はサフラのケア。

だけど、記憶の奥にはもうひとつ、大事な役目が埋められていた。

『サフラにうんと愛されてね。優しくしてもらって。私がここから出る、唯一の方法だから』

確かにそう言ったのだ。
やれやれ、出る方法があるに、なんだってもう少し強調してくれなかったかなぁ。成功率がめちゃ低だと思った?

追加の情報を求め、最新の注意をはらって、その記憶の周りをぐるぐる回る。
それは本当に本当に小さな声で、つぶやかれていた。まるで見つかってほしくないとでも言うほどのひそやかさで。

もしもたまたま万が一。消えずにサフラのもとに行けて、伝言もできてすべてがうまくいったなら。
呼び水に、なってもらえるかしら。
サフラに、優しくしてもらってちょうだい。私が引っ張られる位たくさん。

やっと見つけたユオの声は、そう言っていた。

・・・あんたねー、わかりやすい指示出しをしなさいよね。
この左手さんは、ちゃんと二兎ぐらい追ってあげられるんだから。
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