【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
3 / 84
第1章 ブラン家

3 婚約者の来訪 ①

しおりを挟む
 
 エリーと別れ、馬車に乗ったルイーズは帰路についた。

 ルイーズは、エリーからもらった紙袋を、胸の前で大切そうに抱えている。
 その紙袋の中からは、ハーブの穏やかな香りがほんのりと漂ってきた。
 ルイーズは、馬車内に広がるその香りを芳香浴で楽しんだ。

 しばらくそんな時間を過ごしていたら、ハーブティーを飲むことが楽しみになってきたようだ。だいぶ気持ちも落ちついてきたのだろう。

 庭園のカフェから馬車に乗り、1時間ほどの時間が過ぎただろうか。馬車の窓から外の景色を見れば、見慣れた屋敷が見えてきた。他のお屋敷と比べると小さいが、焦げ茶色のレンガでつくられた建物は、緑に囲まれ郷愁的な雰囲気に包まれている。古臭いなどと言う人もいるが、ルイーズは凛と佇むその姿が、昔から大好きなのだ。

 門を潜り敷地内に入ると、屋敷の正面玄関の横には、見慣れた馬車が停まっていた。
 馬車を二度見するルイーズ。

(……噓でしょ。今日の今日で、家に来るってどういうこと? もしかして、婚約解消をしに来たのかしら。でも、先ほどの様子だと、そこまでする関係性には見えなかったわ……)

 ようやく落ち着きを取り戻したころ、婚約者本人かその関係者の来訪。
 ルイーズが馬車から降りると、執事のトーマスが玄関前で出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、ルイーズお嬢様」

「ただいま戻りました。トーマス、お出迎えありがとう。でも、私の帰りを待っていたら、いつになるかわからないから、その時間は休憩してね」

「ありがとうございます、ルイーズお嬢様。私は、皆さまが健やかに朗らかに、過ごされる姿を見守ることが、一番の幸せなのです。ですから、毎日このお出迎えはさせていただきとうございます」

「わかったわ、トーマス。いつもありがとう」


 父親から「トーマスも歳のせいか、最近は足腰の衰えが目に付くようになった」と話には聞いていた。小さな頃から、穏やかな笑顔で出迎えてくれるトーマスは、ルイーズにとって祖父のような存在なのだ。無理をしてほしくないから、ついつい余計なことを言ってしまうのだろう。毎度毎度このやり取りをするたびに、ルイーズは切なくなる。


「とんでもないことでございます。それはさておき、先ほどお嬢様の婚約者様がお越しになりました。今は、旦那様とお話をなされています。お帰りになって早々申し訳ございませんが、そのまま応接室に向かっていただけますか」

「ええ、このまま向かうわ」

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

【完結】空気にされた青の令嬢は、自由を志す

Na20
恋愛
ここはカラフリア王国。 乙女ゲーム"この花束を君に"、通称『ハナキミ』の世界。 どうやら私はこの世界にいわゆる異世界転生してしまったようだ。 これは家族に疎まれ居ないものとして扱われてきた私が自由を手に入れるお話。 ※恋愛要素薄目です

処理中です...