【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第1章 ブラン家

4 婚約者の来訪 ②

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 玄関から屋敷に入り、右側にある廊下を少し進むと応接室がある。普段は快適に感じるこの距離も、今日に限っては憂鬱そうだ。

 心を落ち着けながら、応接室のドアをノックする。

「ただいま戻りました、ルイーズです。お呼びでしょうか」

「入っていいよ」

 部屋の中からは父親の返事が聞こえてきた。ルイーズがドアを開けて中に入ると、見知った顔の人物が、目の前のソファーに座っていた。婚約者のオスカーと、その父親のジャンだ。

 ルイーズの父ルーベルトとオスカーの父ジャンは、王立学園の同窓であり、幼馴染である。
 子爵と男爵で爵位が近く、領地が隣り合っているため、昔から家族ぐるみの付き合いだ。

 以前は子爵家の一人娘だったルイーズが、この子爵家の跡継ぎとされていたが、それから数年後に年の離れた弟が生まれたことにより、男爵家嫡男のオスカーと婚約が結ばれた。

 そのような事情があることから、この婚約が解消になることはないと誰しもが思っていた。だが、ここにきての不安定な状況。この婚約は、経済的支援や領地がらみの契約は交わされていないようだ。破棄したところで、わだかまりが残るようなものでもない。しかも、爵位の差はほとんどなく、父親同士の仲が良い。そのような背景があるため、青二才のオスカーは、すぐにでも婚約は解消できると考えたのだろう。しかし契約は契約だ。ここでわだかまりが残らないように、動かねばならない。

 ルイーズは、気持ちを固めてから男爵に挨拶をした。

「お久しぶりでございます。本日はいかがなさいましたか」

「久しぶりだね。今日は突然の訪問ですまないね。実は、婚約に関することで話があって伺ったのだよ」

「婚約の話……ですか?」

 ルイーズの問いに答えるように、オスカーが言葉を引き継いだ。

「ルイーズ、ごめんね。僕は、どうしても君を一人の女性として見ることができなくて……。僕は嫡男だから、それでは困るだろう? これから先も、その思いは変わらないと思う。だから、婚約を解消したいと思っているんだ」

 オスカーは、金髪碧眼で世間一般の美男子の部類には入るのだろう。きっと自分でも自覚しているはずだ。それでも、中身が残念すぎる。

(——こんな無神経な人だったかしら)

 ルイーズは、オスカーから視線を外して父親を見る。困惑してはいるが、仕方がないという表情だ。仲の良い父親たちが結んだ婚約。父親の曖昧な態度を少し残念にも思ったが、ルイーズ自身、浮かれた様子の幼馴染との婚約を続ける気持ちはさらさらない。ルイーズは、この婚約に終止符を打つ覚悟をした。

「婚約についてのお話はわかりました。私としては、契約を無効としていただいてかまいません。ですが、解消だと慰謝料が発生する場合もあるかと思うのですが、白紙ではなくてよろしいのでしょうか」

「ルイーズちゃんありがとう。愚息が本当に申し訳ない。こちらとしても、婚約は白紙にしていただきたいと思っている。ルーベルト、どうだろう」

「ああ、そうだな。こちらとしては、ルイーズが納得しているならそれでいい」

 男爵は頭を下げ、息子の不義理を何度も詫びた。常識人だと思っていた男爵でも、やはり息子には甘いようだ。しかし、思ったよりも早い段階で話がまとまったことに、ルイーズは胸を撫でおろした。

「父さん! 白紙じゃだめだ! 解消か破棄じゃないと!!」

 これで一件落着かと思いきや、オスカーが意味不明なことを叫びだした。オスカー以外の者たちは何事かと彼に目を向けた。

「お前は一体何を言っているんだ!! 自分が身勝手な要求をしているにもかかわらず、ふざけたことを抜かすな! いい加減にしろ!!」

 激怒した男爵が、オスカーを怒鳴りつけた。
 男爵は、それでも反省しないオスカーを、馬車に乗せておくようにと侍従に連れて行かせた。

 ルーベルトとルイーズは固まったまま、二人のやりとりを見守ることしか出来なかった。

 
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