紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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散らされて 六

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「ほほほほ。おまえの可愛い坊やは本当に素直じゃな。よしよし、い子じゃ。覚えておけ、これからは、妾がおまえの主じゃ。妾の許しがなければ、起きてはいけないのじゃ。わかったな」
 最後の一言はアレクサンダー自身にぶつけられていた。
 一瞬、さらにピロテスの指の力は強まり、すぐにゆるくなる。
 卑しい相手の指にいいようにされ、振りまわされる悔しさにアレクサンダーは耐えなければならないのだ。
 呼吸は荒くなり、背はふるえる。だが、ピロテスは許してくれない。
「おお、泣きべそかきはじめて。かわいいのぅ。よしよし、妾は怖くないぞ。坊が良い子にしておれば、たんと可愛がって喜ばせてやろうに。今日は妾が可愛がってやりたいが、アレクサンダーに最後までさせるか。アレクサンダーはこういうことに慣れねばならぬからな」
 その言葉にアレクサンダーはぞっとした。
 この羞恥の責め苦と屈辱の地獄はこれからもつづくのだ。
 この残酷な異形の男は、アレクサンダーをとことんいたぶり抜くつもりなのだ。
「ほほほほ。そんな怖い顔をするものでない。客を前にしたときは、もっと色気を振りまくものじゃぞ」
 自分は殿下と呼ばれる男に捧げられる白蓮だと言われていたのに、そう聞かされアレクサンダーはいっそう困惑し、そして怒らずにいられない。
 だが、それはいっそうピロテスを喜ばせるだけだった。
「いや、おまえはその怒った顔も捨てがたいのぅ。そういうのを好む客もおるし。そうじゃ、怒りながらでよい。さぁ、手を動かし、最後までやり抜くがよい。ここで見ていてやろう」
「くぅ……、卑怯者ども! こんなことをして、ただですむと思うな!」
 なるべく口を聞かないように努力していたが、箍が外れたように叫んでしまう。
「ほほほほ。活きの良い奴隷をこのむ客には、もってこいじゃな。ほれ、どうした? はようせぬか」
 はらわたが捻じれるような怒りと憎悪のなかで、アレクサンダーは手を動かしつづけるしかない。
 そして頭の片隅で悟っていた。
 この責め苦が終われば、また新たな責め苦が始まることを。自分は抜け出せない蟻地獄に落ちてしまったのだと。 
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