黄金郷の夢

文月 沙織

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公開初夜 六

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「ほう。では、これを入れる前に、まずその卵を出さないとな」
 淫虐な異国の遊戯にエゴイはとまどうこともなく面白そうに言いながら、アベルの白い臀部を撫であげてきた。その感触にアベルは飛び上がりそうになる。
「さ、触るな!」
「この期におよんで往生際が悪いぞ、アベル。こうなったら、もう仕方ないだろう? さ、俺の前で卵を出してみろ」
 言うや、エゴイはアベルの腹のあたりをまさぐる。
「ひっ!」
 たまらなくなってエゴイの腕から逃れようとしたアベルだが、すぐにおさえこまれ、背に相手の重みと熱を感じさせられてしまう。
「アベル、お前も騎士ならここは覚悟して耐えしのべ」
 耳元に低く囁かれ、アベルは褥につっぷした形で首を振った。無理だ。
「大丈夫だ。俺を信じろ。必ず助けてやるから」
 エゴイは、一見敵に迎合したかに見せて、アベルを救出するつもりなのだろう。その言葉に救いを感じたが、だが、それまでに死にも勝る屈辱に耐えなければならないのだ。いっそ、殺して欲しいぐらいだ。
「ああ、エゴイ……、私を殺して」
「駄目だ。お前は生きて俺と祖国へ帰るのだ」
 小声でのやりとりが終わると、エゴイは、身を起こし、伏せているアベルの腰を引き上げさせ、ふたたび臀部を晒す恰好を強いる。
「さ、卵を出してみろ」
「うう……!」
 歯軋りしながら、アベルは従うしかなかった。四つん這いよりも屈辱的な姿勢で、尻を突き上げ、自尊心を押し殺し、本来なら人目に触れず個室でおこなうべき動作を取るべく必死の努力した。
「あ、見えてきた!」
 アーミナが上げた声に、客たちがさらに身を乗り出す。最前列で、さらによく見ようと身を乗り出した外国大使たちのなかには、アビラ子爵もいるはずだ。
 客たちの熱をふくんだ溜息が広間に満ちていく。
 もはや、彼らにとっては完全に、これは淫猥な見世物であり、アベルは芸をしこまれた獣よろしく、調教師の指示によって客たちの前で珍芸を披露させられるのだ。
「ううっ、ううっ、ああっ、あああ!」
 ヴェール越しに響く声は、いっそう仇っぽく、震える下肢の白さは見物人たちの目を刺激する。人々は固唾かたずを飲んで、後宮千人の美女にも勝る異郷の美男がめすに墜ちていくのを見守った。

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