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公開初夜 五
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そうだった。あの日、槍の試合で負かした相手こそは、アビラ子爵の三男だった。
けっして恨みや憎しみがあってしたことではない。騎士道精神にのっとり、正々堂々、全力で戦って負かしたのだ。だが、父親である子爵にしては面白くないだろう。借金のことで互いにわだかまりもある。我が子に恥をかかせたアベルが、今、こんな不様な姿を晒しているのだ。もし、ここで子爵が介添え人をやることになれば……、アベルの屈辱と苦痛はさらに深くなり、いっそう耐えがたいものになるだろう。
「な、アベル、いい子だから。……こんなことを、他の誰にもさせたくないのだ」
怯えて隠れている子猫を誘い出すような甘い声でエゴイに説得され、アベルはもはや屈するしかなかった。これ以上抗ったところで、どの道アベルには逃れようがないのだ。
(ああ……)
寝台の上に膝をつき、みずからふるえる手で裾をまくりあげた。
「ほら、もっとお尻をあげて。何をしているんですか? 下着もたくしあげてください」
褥に汗を落としながら、アベルは嗚咽しそうになるのをこらえて、カイに言われたとおりにするしかない。
頭や上半身はすっぽりと布でおおったままで、尻だけを突きだし晒す恰好は、傍目にはさぞ浅ましく卑猥なものに見えるだろう。さらに晒した足には、足首まで守っている、薄手の白い足布が脱げずに残っており、それが、言い知れぬほどに淫らだ。
アベルはいっそ舌を噛み切りたい欲求とたたかいながら、命じられたことを遂行するため額に汗を増やした。
「ほら、もっと。それでは見えないでしょう」
カイにせかされ、さらに裾を広げてみる。
褥に付けている脚や膝が震えていることを悟られているだろう。いや、それよりも、裾の内の布をエゴイに見られてしまう恐怖にアベルは目を閉じた。
「……綺麗な下着だな。おまえに似合っているぞ、アベル」
(くっ……!)
カイの言葉責めよりもディエゴの揶揄をふくんだ賛辞の方が、アベルにはきびしい拷問だった。たまらなくなって、上半身を起こして振り向いてしまった。
「あ、ああ! み、見ないでくれ、エゴイ!」
旧知のエゴイにこんなみっともない姿――尻を突きだし、女ものの下着をみずからたくしあげている様――を見られる苦しさに、アベルは叫ばずにいられない。
「おっと、待った。そこには卵が入っているんだぜ」
アーミナの言葉に、エゴイのみならず、すぐ近くで様子を見ている王や宦官長、アイーシャやカッサンドラまでもが身じろぐ気配を感じて、アベルは失神しそうになった。
客たちにも声が伝わったようで、最前列の客たちは、よく見ようと身を乗り出す。
けっして恨みや憎しみがあってしたことではない。騎士道精神にのっとり、正々堂々、全力で戦って負かしたのだ。だが、父親である子爵にしては面白くないだろう。借金のことで互いにわだかまりもある。我が子に恥をかかせたアベルが、今、こんな不様な姿を晒しているのだ。もし、ここで子爵が介添え人をやることになれば……、アベルの屈辱と苦痛はさらに深くなり、いっそう耐えがたいものになるだろう。
「な、アベル、いい子だから。……こんなことを、他の誰にもさせたくないのだ」
怯えて隠れている子猫を誘い出すような甘い声でエゴイに説得され、アベルはもはや屈するしかなかった。これ以上抗ったところで、どの道アベルには逃れようがないのだ。
(ああ……)
寝台の上に膝をつき、みずからふるえる手で裾をまくりあげた。
「ほら、もっとお尻をあげて。何をしているんですか? 下着もたくしあげてください」
褥に汗を落としながら、アベルは嗚咽しそうになるのをこらえて、カイに言われたとおりにするしかない。
頭や上半身はすっぽりと布でおおったままで、尻だけを突きだし晒す恰好は、傍目にはさぞ浅ましく卑猥なものに見えるだろう。さらに晒した足には、足首まで守っている、薄手の白い足布が脱げずに残っており、それが、言い知れぬほどに淫らだ。
アベルはいっそ舌を噛み切りたい欲求とたたかいながら、命じられたことを遂行するため額に汗を増やした。
「ほら、もっと。それでは見えないでしょう」
カイにせかされ、さらに裾を広げてみる。
褥に付けている脚や膝が震えていることを悟られているだろう。いや、それよりも、裾の内の布をエゴイに見られてしまう恐怖にアベルは目を閉じた。
「……綺麗な下着だな。おまえに似合っているぞ、アベル」
(くっ……!)
カイの言葉責めよりもディエゴの揶揄をふくんだ賛辞の方が、アベルにはきびしい拷問だった。たまらなくなって、上半身を起こして振り向いてしまった。
「あ、ああ! み、見ないでくれ、エゴイ!」
旧知のエゴイにこんなみっともない姿――尻を突きだし、女ものの下着をみずからたくしあげている様――を見られる苦しさに、アベルは叫ばずにいられない。
「おっと、待った。そこには卵が入っているんだぜ」
アーミナの言葉に、エゴイのみならず、すぐ近くで様子を見ている王や宦官長、アイーシャやカッサンドラまでもが身じろぐ気配を感じて、アベルは失神しそうになった。
客たちにも声が伝わったようで、最前列の客たちは、よく見ようと身を乗り出す。
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