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80、外堀を埋めることにした
しおりを挟む翌朝は5時過ぎに目が覚めた。
昨夜はディナーから部屋に戻ってから何度も激しく愛されて、たぶん午前2時頃に気を失うようにして眠ったのだと思う。
その辺りのことは朦朧としていてあまり記憶にないけれど……。
隣を見ると天馬はまだ眠っていて、その右腕は楓花の首の下に置かれている。先に眠ってしまった楓花に腕枕をしてくれたらしい。
美形は寝顔も美しい。楓花は天馬の顔を覗き込むと、人差し指をそっと伸ばして触れてみた。
キリッとした男らしい眉毛にバシバシの長い睫毛。スッと筋が通った高い鼻梁をなぞって薄い唇に辿り着くと、輪郭をなぞってからフニフニと 突いてみた。
途端に形のいい唇がフッと緩み、眉と目が綺麗なアーチを描く。
「フッ……何やってんの?」
「あっ、タヌキ寝入り!」
「ちげーよ、楓花が俺で遊んでるから……」
首に腕が回ってきてグイッと引き寄せられたと思うと、唇が強く押しつけられる。
「ん……ふっ……んんっ……」
舌で口内をひと舐めし、最後にチュッと音をさせて離すと、グルンと楓花の上に乗って上から見下ろしてきた。
「俺の彼女は寝てる俺で遊ぶのが本当に好きだな。おちおち寝てもいられない」
「いやっ、決して遊んでたわけじゃ……ただ寝顔が綺麗だな…って……」
「ならもっと近くで見れば?」
再び顔が近付いて、チュッチュとバードキスが降って来る。
「ちょっ、天に……天馬っ!」
「おっ、一晩叫び続けた成果が出たな……ちゃんと名前を呼べるようになった」
ご褒美だ……ともう一度ねっとりしたキスをされて、体の芯が蕩けそうになった。
恋人になった天馬はどこまでも甘くて優しい。意地悪な言葉を吐いて激しく攻め立てる時でさえ、その唇や指先全てで愛を伝えてくれている。
ーー幸せだな……
天馬の胸に顔を埋めて甘々な空気に浸っていると、不意に天馬のスマホから着信音がした。
楓花の肩を抱いたまま片手でスマホに手を伸ばした天馬が、画面を見るなり「茜からメールだ……」と呟いた。
「えっ、茜ちゃん?!」
楓花もバッと顔を起こして、一緒に画面を覗き込む。
『大河が、『楓花は何処に行ったんだ!』、『あの2人はどうなってるんだ!』ってギャーギャーうるさいから、『あの2人は付き合ってる』って言ってやったわよ。『付き合ってる』でいいのよね?』
茜からの文章を読んで、2人で顔を見合わせる。
天馬が柔らかく微笑むと、素早く茜宛の文章を打ち込んだ。
『ああ、大正解だ。俺と楓花は付き合ってる』
「これでいい?」
確認を求められ、楓花が「うん」と頷くと、それはそのまま送信される。
だけどメールのやり取りはそれで終わらず、天馬が引き続き文章を打ち込み始める。
ーーえっ?
『……そうだな、今夜……仕事が終わってから挨拶に行く。大河にもそう伝えておいてくれ』
「ええっ?!」
文章を送信し終えると、天馬は楓花を見つめてニカッと白い歯を見せた。
「……そういうことだ」
「そっ、そういうことって、どういうこと?!」
「お前が逃げられないように、外堀を埋めることにした。大河に俺たちのことを話す」
ーーええっ! お兄ちゃんに?!
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