【R-18】キスからはじまるエトセトラ【完結】

田沢みん

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14、彼のお見合いと別れのキス (1)

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 それは4年前。楓花18歳、大河と天馬25歳の春。

 大学卒業後に事務用品を扱う会社で営業として働いていた大河が、高校時代から付き合っていた茜とめでたく結婚する事になった。
 名古屋のホテルで行われた披露宴には、両家の家族や親戚の他に、沢山の親友が集まっていた。


「父さん母さん、じいちゃんばあちゃん、それから楓花も、今日はありがとうな。俺はこれから友人だけ集めた2次会だから、もう行くよ」

「お兄ちゃん、本当におめでとう。茜ちゃんと仲良くね!」
「おう、もちろん! 楓花も向こうの短大で頑張れよ!」
「うん」

 招待客でごった返す披露宴後のロビーで、楓花は兄と別れの挨拶を交わしていた。
 楓花は明日の朝、東京の短大に行くため名古屋を離れる。大河が新婚旅行先のハワイから帰って来た時にはもう家にいないのだ。


「それにしても、大河が結婚したと思ったら、翌日には楓花がいなくなっちゃうなんて……寂しくなるわ」

「おいおい、俺と茜が同居するんだから、寂しいなんて言うなよな!」
「ふふっ、 そうね」

 母親の言葉に大河が突っ込んで場が盛り上がったところで、大河が楓花の両肩に手を乗せ、優しい兄の顔になる。

「健康に気をつけて。たまには帰って来いよ」
「うん、ありがとう」

「もしかしたら、お前が次に来る時は天馬の結婚式かもな」
「えっ?!」

 不意打ちの衝撃発言に楓花の心臓がドクンと鳴った。


「アイツ、お見合いしたんだよ……って言うか、 相手は医学部時代の同期で、前から知ってるひとなんだけどさ」
「うそ…… 」

 楓花が思わずそう呟くと、

「嘘じゃないって」
 大河がこちらを向いたまま、ロビーの隅の方に固まっている集団を親指で示した。

「ほら、あそこで天馬の隣にいる黒いドレスの綺麗な子。水瀬椿みなせつばきって言ったかな…… 2回くらい天馬と彼女と一緒に飲みに行ったことがあるけど、美男美女でお似合いだったよ」

 その女性は、華やかな集団の中でも一際目立っていた。身長は165センチはあるだろうか。ヒールを履いているせいか、もう少し高く見える。
毛先に緩くカールがかかったブランジュカラーのロングヘアーは大人っぽい雰囲気を醸し出していて、少し冷たそうに見えるシャープな顔立ちととても似合っていた。

--ああ、本当だ。とってもお似合い……。

 高身長の天馬と並ぶと迫力のある美男美女で、これからモデルの撮影会だと言われても誰も疑わないだろう。

 お見合い…… 結婚……医学部の同期……。

 大河の言葉がグサグサと胸に突き刺さる。
 天馬は昔からモテていた。女の子と並んで歩いている姿だって何度も見てきている。

 だけど、いつも相手がコロコロ変わっていたし、特定の彼女がいるとも聞いたことが無かったから、彼が誰かと付き合うという事に現実味がなくて、具体的に考えたこともなかった。
 つまり油断していた所に現実を突きつけられて、今更ながら狼狽えていて……。

ーーそうか……とうとう……。

 天馬は医者の家の次男坊。長男も医師だけど、次男の天馬が家業を継ぐ可能性だってあるし、そうでなくてもいずれは開業するかも知れない。
 だとしたら妻となる人もそれなりの人……そう、例えば隣に立っている彼女のように同じ医師だったり、教授の娘さんなんかが相応しいんだろう。

 結婚してしまったら、今までみたいに気軽に頭を撫でてもらえなくなるのかな。
 自分が使っていたスプーンでバニラアイスを食べさせてくれることも無くなるのかな……。


 楓花は家に帰ると、ベッドに横になりながら考えた。

ーー告白しよう……天にいが結婚してしまう前に。

 どうせ失恋するのなら、最後に弟分の『颯太』じゃなくて『楓花』として、気持ちだけは伝えておきたい。
 大丈夫、どうせ私は明日には東京だ。その前に天にいにサラッと伝えてしまえばいい。

『記念受験』っていうのがあるように、私も『記念告白』をするだけのこと……。

 楓花はそう決意して、告白の言葉をあれこれ考えながら寝付けない夜を過ごしたのだった。
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