強くて弱いキミとオレ

黒井かのえ

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公平の本音2

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 薫が、ぱっと顔つきを変えた。
 なんだか嬉しそうだ。
 その顔を見て、公平もなんだか嬉しくなる。
 
「そーなんか?」
「そ」
「俺に?」
「そ。お前に」
 
 言うなり、唇を重ねた。
 柔らかな感触を確かめる。
 
 うわあ、と思う。
 
 予想外に心臓がどきどきと弾んでいた。
 この間の軽いキスとは違う。
 親愛の情以上のものがあった。
 
 ぎゅっと抱きしめられる。
 自然と薄く開いた唇の間から、薫の舌が滑り込んできた。
 余裕があるわけではないのに、お互い探るようなゆっくりとした動き。
 それがよけいに公平の体を熱くさせる。
 
 もっと。
 
 体の熱に後押しされ、徐々に舌をからませあうことに夢中になっていく。
 薫の舌と自分の舌が触れるたび、痺れるような感覚が背中を走り抜けていた。
 息苦しさに薫の体を押しのけようとしたが、薫は公平の体を抱きしめてそれを許さない。
 
「ん……っ」
 
 わずかにできた隙間から声が漏れる。
 上顎を舐められ、初めての感覚に眩暈を覚えた。
 女性との体験もほとんどないに等しい公平は、本気のキスを受けたことがない。
 キスからこんなにも相手の想いが流れこんでくるとは思ってもみなかった。
 
 脳みそ蕩けそう。
 
 薫に抱きしめられていなければ立っていられない。
 公平はなかば薫の胸にしがみついていた。
 初めて薫とキスをした時には「嫌じゃねぇな」としか思わなかったのに、今は薫とキスをするのが好きになってしまいそうだ。
 ようやく薫が唇を開放してくれる。
 
「そんな顔、俺以外のヤツには見せんじゃねぇぞ、コオくん」
 
 そんな顔と言われても、自分で自分の顔は見られない。
 ちらっと机の上の鏡に視線をおくる。
 
「わっ」
 
 慌てて薫から離れた。
 酔いの回ったような顔。
 頬を紅潮させ、とろんとした目つき。
 
「や、ヤメた! やっぱヤメ!」
 
 ベッドに飛び込んで布団をかぶってしまおう。
 思って、薫に背を向けたところで後ろから抱きしめられてしまう。
 
「コオくん、俺ンこと、好きだろ。な、そうなんだろ?」
「ば、バッカ、てめぇ! 自分に都合のいいコト言ってんじゃねぇよ」
 
 腰に回された腕を離させようと暴れるが、薫は離そうとしない。
 
「本当に嫌なら俺ンこと、叩きのめせばいいじゃん。コオくん、俺よか強ぇんだしよ」
 
 できるものなら言われるまでもなく、すでにやっている。
 薫にもわかっているはずだ。
 後ろから腰を抱きしめられていても、公平ならば簡単に薫をのしてしまえる。
 できないのは。
 
「てめぇ、俺の嫌がることはしたかねぇっつってたんじゃねぇのか?!」
 
 後ろから、ゆるく耳をかまれる。
 びくーっと体が硬直した。
 
「だぁかぁらぁ、ホントにイヤなら、俺ぁ、とっくに床にのびてるってコトぉ」
 
 耳の後ろを舐められ、体中がぞくぞくする。
 
「…………ぁあ……」
 
 勝手に声が出た。
 
「コオくんらしくもねぇ。悪あがきしねぇでさ」
 
 いつになく男っぽい声で薫は公平の耳に囁く。
 
「オチろよ、もう」
 
 ちくしょう。
 
 わかっているくせに、と思った。
 背中に薫の硬くなったアレの存在を感じた瞬間、公平の体も変化している。
 薫はわかっていて公平のソコには触れないのだ。
 公平の口から言わせたいに違いない。
 
「好きだ、コオくん、大好き。好き」
 
 言いながら、薫は公平の首筋を舌で舐め上げる。
 
「ん……っ」
 
 体がびくっと震えた。
 もうダメだ。
 公平は観念して口を開く。
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