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第二章
73話 どこもかしこも
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「かぁーっ!やってられませんなぁ!」
ベルボルトがいきなり背後で叫んだので、俺はその場で飛び上がった。
「な、何?」
年が明け、春休みも終わり、新学期が始まってから数日が経っていた。
今は昼休みで、食堂に向かう途中である。
俺は振り返り、ベルボルトの視線の先にいる人たちを見て、納得した。
男性が二人、仲良く手を繋いで寄り添っているのである。
最近では珍しくない光景だった。
「見たことない組合せだね。付き合い始めたのかな?」
階級テストの際に、同じ班になり苦難を乗り越えた人たちや、魔物暴走事件で助け合った人たちの間で、交際ラッシュが続いていた。
あれだな。吊橋効果ってやつだな。
「あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャ!それを見せられる方の身にもなって欲しいもんやわ!」
くわっ、とベルボルトが憤慨している。
うん。羨ましいんだね。
「嫌なら見なけりゃいいだろ」
イドが興味なさそうに言った。
「そうは言っても、な。どうしても視界に入る」
スヴェンは苦笑している。
ベルボルトの気持ちも分からなくはないってことだろうか。
スヴェンもイドと同じで、恋愛には興味なさそうなんだけどな。
まぁ、お年頃だしね。
この交際ラッシュの波は俺の身近でも起き、二つのカップルが成立していた。
一組目は、俺と同じ班だった班長と謎解き先輩だ。
意外だ。特に恋愛から遠そうな謎解き先輩に恋人ができるとは。
交際を迫ったのは班長の方らしい。
『頭は良いのに、あの怖がりでほっとけない感じにやられちゃった』
そ、そうなんですね。お幸せに。
二組目は、双剣使いの先輩とアンリ先輩。
アンリ先輩は、自分の異父兄弟である兄が今回の魔物暴走事件に関与していたことで、相当落ち込んでいた。
それを慰めたのが、双剣使いの先輩だったそうで、その後二人は交際に発展したらしい。
『初めはフィンのことをいいなって思ってたんだけど、リリアーナ様に取られちゃったからね。代わりにってわけじゃないよ?弱ってるアンリのことが可哀想で可愛くて。ドロドロに甘やかしてあげたくなったんだ』
そう言って、双剣使いの先輩は爽やかに笑った。
んんっ。所々、聞こえない言葉があったような?
何はともあれ、おめでとうございます。
アンリ先輩を泣かしたら許しませんからね。
そんな感じで、あちこちでカップルができていて、たまにチュッチュしているところも校内で目撃してしまい、この国の交際はオープンなんだなと実感した。
それも多数が男同士だ。
初めは驚いたが、嫌悪感は感じなかった。
まぁ、俺もヴィルヘルムとは口づけしてる仲だしな。
誓いの口づけ以降、会うたびに隙を見ては口づけられるようになってしまった。
『お前を補充しておかないと頑張れない。たまにしか会えないんだ。これくらい良いだろう?』
どこでそんなおねだり覚えてきたんだ!
少しでも抵抗するとそう言われてしまい、俺は敢えなく撃沈する。
そして、いつも最後には呪文のように囁かれた。
『早く俺を好きになれ、フィン』
ヴィル。
暴君のようだけど、本当はとても優しい。
素直に愛情表現するようになったヴィルヘルムに、俺が落ちる日は近いのかもしれない。
「はぁ。会いたくなっちゃったな」
俺の呟きは小さすぎて、イドが首を傾げた。
「何か言ったか?」
「ううん。お腹空いちゃったなって。早くご飯食べに行こう。ほら、ベルボルトも!嫌ならいつまでも見てないで、早く食堂に行こうよ!」
感じた思いを振り払い、俺は友人の手を引っ張った。
ベルボルトがいきなり背後で叫んだので、俺はその場で飛び上がった。
「な、何?」
年が明け、春休みも終わり、新学期が始まってから数日が経っていた。
今は昼休みで、食堂に向かう途中である。
俺は振り返り、ベルボルトの視線の先にいる人たちを見て、納得した。
男性が二人、仲良く手を繋いで寄り添っているのである。
最近では珍しくない光景だった。
「見たことない組合せだね。付き合い始めたのかな?」
階級テストの際に、同じ班になり苦難を乗り越えた人たちや、魔物暴走事件で助け合った人たちの間で、交際ラッシュが続いていた。
あれだな。吊橋効果ってやつだな。
「あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャ!それを見せられる方の身にもなって欲しいもんやわ!」
くわっ、とベルボルトが憤慨している。
うん。羨ましいんだね。
「嫌なら見なけりゃいいだろ」
イドが興味なさそうに言った。
「そうは言っても、な。どうしても視界に入る」
スヴェンは苦笑している。
ベルボルトの気持ちも分からなくはないってことだろうか。
スヴェンもイドと同じで、恋愛には興味なさそうなんだけどな。
まぁ、お年頃だしね。
この交際ラッシュの波は俺の身近でも起き、二つのカップルが成立していた。
一組目は、俺と同じ班だった班長と謎解き先輩だ。
意外だ。特に恋愛から遠そうな謎解き先輩に恋人ができるとは。
交際を迫ったのは班長の方らしい。
『頭は良いのに、あの怖がりでほっとけない感じにやられちゃった』
そ、そうなんですね。お幸せに。
二組目は、双剣使いの先輩とアンリ先輩。
アンリ先輩は、自分の異父兄弟である兄が今回の魔物暴走事件に関与していたことで、相当落ち込んでいた。
それを慰めたのが、双剣使いの先輩だったそうで、その後二人は交際に発展したらしい。
『初めはフィンのことをいいなって思ってたんだけど、リリアーナ様に取られちゃったからね。代わりにってわけじゃないよ?弱ってるアンリのことが可哀想で可愛くて。ドロドロに甘やかしてあげたくなったんだ』
そう言って、双剣使いの先輩は爽やかに笑った。
んんっ。所々、聞こえない言葉があったような?
何はともあれ、おめでとうございます。
アンリ先輩を泣かしたら許しませんからね。
そんな感じで、あちこちでカップルができていて、たまにチュッチュしているところも校内で目撃してしまい、この国の交際はオープンなんだなと実感した。
それも多数が男同士だ。
初めは驚いたが、嫌悪感は感じなかった。
まぁ、俺もヴィルヘルムとは口づけしてる仲だしな。
誓いの口づけ以降、会うたびに隙を見ては口づけられるようになってしまった。
『お前を補充しておかないと頑張れない。たまにしか会えないんだ。これくらい良いだろう?』
どこでそんなおねだり覚えてきたんだ!
少しでも抵抗するとそう言われてしまい、俺は敢えなく撃沈する。
そして、いつも最後には呪文のように囁かれた。
『早く俺を好きになれ、フィン』
ヴィル。
暴君のようだけど、本当はとても優しい。
素直に愛情表現するようになったヴィルヘルムに、俺が落ちる日は近いのかもしれない。
「はぁ。会いたくなっちゃったな」
俺の呟きは小さすぎて、イドが首を傾げた。
「何か言ったか?」
「ううん。お腹空いちゃったなって。早くご飯食べに行こう。ほら、ベルボルトも!嫌ならいつまでも見てないで、早く食堂に行こうよ!」
感じた思いを振り払い、俺は友人の手を引っ張った。
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