70 / 80
5.光と闇
鳥も翔ぶ
しおりを挟む
ジタバタッ、ジタバタッ
(いやだーっ、はなせーっ)
「もー、奈緒ってば。あまり暴れないでくれる?」
手足で蹴ってもがいても、空中を掻くだけで擦りもしない。
今の俺には爪があるから、引っ掛けるとケガしちゃうかもしれない。
だけど、今の俺にはそんなことに構ってる余裕はない。
今、選択を誤ると乙女ゲームのバッドエンドのように悲惨な未来が待っている事だろう。
え、なぜ乙女ゲームの事に詳しいかって?
そりゃ、友達の家に遊びに行ったときに、友達の姉ちゃんが「推しがーっ」ってリビングで叫んでいるのをよく聞いてたからね……。
あれは本当に悲しそうだったなー。
「ねえ、余所見しちゃって、何考えてるの?」
(ぎゃーっ、ばれてるっ)
うわーっ、そんな顔を近くに寄せないでっ!!
ひゃあ、くすぐったい!!
スン、スン
「はあーっ、奈緒、おひさまの香りだね。
良い香りになっちゃったね。」
いや、いやそんな美声で爽やかに囁かれてもっ!!
そして、嗅ぐなしっ!!
地味に恥ずかしいじゃねーかっ。
「それにしても、随分と港近くに降りてきたんだね。
帰りは坂になるから、しんどいよー。」
そりゃ、俺を抱っこしてるからな。
ん?ってことは、俺が重いってことか?
馬鹿にしてムカつく!俺を置いてけー、ドロボー!
俺の必死の反撃にビクともせずに歩き出す総。
港が近いこともあって海鳥の鳴き声がこの通りまで響いている。
俺たちの頭上を何かの鳥の影が通り過ぎていった。
「すみません、そこのお兄さん。」
「ん?はい?」
総は誰かに後ろから話しかけられたようで、その歩みを止める。
ナイス、通行人!そのまま俺から総の意識を惹きつけておいてくれ。
上手くいけば、この腕から逃れられるぞっ!!
俺はもぞもぞと動きながら巻きつけられた腕からの脱出を試みる。
にしても、通行人の声……。
聞き覚えがあるようなー、ないようなー。
「すみません、実はうちの猫が迷子になってしまいまして。
そちらの猫ちゃんとそっくりなので見せて頂けませんか?」
「えっと……。」
「少し抱かせて頂ければ、分かりますので。
お願いします。」
どうやら、周囲の目も多く、総は無理に断れないようだ。
俺の身体はその人の方へと向けられた。
俺もさっきまでの抵抗をやめた。
というか、驚きで辞めざるを得なかった。
だって、そこには――。
日よけで被っている布から覗く金色に輝く髪と碧の瞳。
俺が待ちに望んだ助けと言えるような言えないような……?
いや、今は完全に救世主だと考えよう。
ヒデト!!よく来てくれたっ!!
ヒデトとセットで付いてくるあの忌まわしい男の事は今は忘れよう。
だから、お願い助けてくださいーっ!!
そして、総は一瞬だけならと思ったのだろう。
俺をヒデトへと手渡した。
俺はもう待ちきれなくて、ヒデトの肩へとぎゅっと抱き着く。
「ああ、やはり、奈緒様でしたか。
御無事で何よりです。」
ああー、ヒデトーっ!!
良く気づいてくれたっ、俺だよー!!
おーおーあーたーりーっ!!
なんて、感激している場合じゃない!!
はやく逃げてーっ!!
―――ヒーローは眩しく輝く―――
ヒデトの手記
猫に変身した奈緒様は
興奮なさると、瞳孔が開き
とても可愛いお顔をされるので
誰かにお持ち帰りされないように
注意が必要である。
(いやだーっ、はなせーっ)
「もー、奈緒ってば。あまり暴れないでくれる?」
手足で蹴ってもがいても、空中を掻くだけで擦りもしない。
今の俺には爪があるから、引っ掛けるとケガしちゃうかもしれない。
だけど、今の俺にはそんなことに構ってる余裕はない。
今、選択を誤ると乙女ゲームのバッドエンドのように悲惨な未来が待っている事だろう。
え、なぜ乙女ゲームの事に詳しいかって?
そりゃ、友達の家に遊びに行ったときに、友達の姉ちゃんが「推しがーっ」ってリビングで叫んでいるのをよく聞いてたからね……。
あれは本当に悲しそうだったなー。
「ねえ、余所見しちゃって、何考えてるの?」
(ぎゃーっ、ばれてるっ)
うわーっ、そんな顔を近くに寄せないでっ!!
ひゃあ、くすぐったい!!
スン、スン
「はあーっ、奈緒、おひさまの香りだね。
良い香りになっちゃったね。」
いや、いやそんな美声で爽やかに囁かれてもっ!!
そして、嗅ぐなしっ!!
地味に恥ずかしいじゃねーかっ。
「それにしても、随分と港近くに降りてきたんだね。
帰りは坂になるから、しんどいよー。」
そりゃ、俺を抱っこしてるからな。
ん?ってことは、俺が重いってことか?
馬鹿にしてムカつく!俺を置いてけー、ドロボー!
俺の必死の反撃にビクともせずに歩き出す総。
港が近いこともあって海鳥の鳴き声がこの通りまで響いている。
俺たちの頭上を何かの鳥の影が通り過ぎていった。
「すみません、そこのお兄さん。」
「ん?はい?」
総は誰かに後ろから話しかけられたようで、その歩みを止める。
ナイス、通行人!そのまま俺から総の意識を惹きつけておいてくれ。
上手くいけば、この腕から逃れられるぞっ!!
俺はもぞもぞと動きながら巻きつけられた腕からの脱出を試みる。
にしても、通行人の声……。
聞き覚えがあるようなー、ないようなー。
「すみません、実はうちの猫が迷子になってしまいまして。
そちらの猫ちゃんとそっくりなので見せて頂けませんか?」
「えっと……。」
「少し抱かせて頂ければ、分かりますので。
お願いします。」
どうやら、周囲の目も多く、総は無理に断れないようだ。
俺の身体はその人の方へと向けられた。
俺もさっきまでの抵抗をやめた。
というか、驚きで辞めざるを得なかった。
だって、そこには――。
日よけで被っている布から覗く金色に輝く髪と碧の瞳。
俺が待ちに望んだ助けと言えるような言えないような……?
いや、今は完全に救世主だと考えよう。
ヒデト!!よく来てくれたっ!!
ヒデトとセットで付いてくるあの忌まわしい男の事は今は忘れよう。
だから、お願い助けてくださいーっ!!
そして、総は一瞬だけならと思ったのだろう。
俺をヒデトへと手渡した。
俺はもう待ちきれなくて、ヒデトの肩へとぎゅっと抱き着く。
「ああ、やはり、奈緒様でしたか。
御無事で何よりです。」
ああー、ヒデトーっ!!
良く気づいてくれたっ、俺だよー!!
おーおーあーたーりーっ!!
なんて、感激している場合じゃない!!
はやく逃げてーっ!!
―――ヒーローは眩しく輝く―――
ヒデトの手記
猫に変身した奈緒様は
興奮なさると、瞳孔が開き
とても可愛いお顔をされるので
誰かにお持ち帰りされないように
注意が必要である。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる