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一学期
ある日のスピーチ拝聴
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遥がマイクの方へ移動するのを見送るしかない2人。ここにドドがいればまた何か違ったのかもしれないが、ドドは現在おいしい料理を頬張るので忙しいようでこの場にはいない。
「何をいうか順は聞いてないのか」
「聞いてるわけないだろ。俺だって初耳なんだからよ」
2人の関係は数か月前に友達からライバルに変わっている。
順には誕生日プレゼントは自分と一緒に用意するから個人的なものは渡されないはずと安心していたのにスピーチを用意しているという闇討ちに近い衝撃が走っている。
仁には遥が自分のために手紙を準備してくれていたという事実がただ嬉しいが……何を言われるかわからず……無自覚な刃が襲ってくるのではないかという恐怖があった。
『おそらく、一緒の学校に通うのは今年で最後になると思うから』
「んぐふっ……いや、遥の頭なら僕と一緒の所に通うことだって夢じゃないんだぞ」
「……諦めろ、オレがめっちゃ遊びに誘いまくってやるぜ」
早速無自覚な刃が仁を襲う。これについては遥は全く悪くない。仁が勝手に計画を立てて勝手に遥の頭を良くしようとしているだけなのである。
『幼稚園を卒業するころのアルバムを開いたら、俺の隣には絶対にお前がいて――』
「あの頃から親友だったからな……順と違って」
「べ、別に悔しくねぇし……」
「今度アルバムみせてやろうか。遥が見たであろう写真ももちろんあるぞ」
「絶対にみねぇ!」
順がぐぎぎと歯噛みする。先ほどの仕返しと言わんばかりに順を煽る仁。煽られて更に悔しそうな表情をしており、煽りは成功している。周りにいる人たちは順を気にし始める程度に順が不機嫌になっている。
『どこいく時も3人一緒だったよな。それは今でも変わっていないし、できればこれからも変えたくない』
「んぐふっ」
「んげっ」
次の遥の言葉は2人に同等のダメージを与える。しかし、これは同時に現段階ではどちらにも靡いていないということなのである。これまで以上に努力し……遊びに誘ってアプローチをしていけばあるいはどちらかに靡くかもしれない。同時に相手が遥と2人きりにならないように邪魔をしていけば……なんとかなるかもしれないということ……かもしれない。
『修学旅行で迷子になって知らない土地を一緒に歩き回った』
「……そういえば、なんか2人して怒られてるなとは思ったけどよ。ずるくね? ん? まて、おい、これか、お前これが原因か?」
「……黙秘する」
「おい、モクヒってなんだ。あとで遥に意味を聞くぞ」
「えげつない脅しをしかけるんじゃない。お前にいう必要がないって意味だ」
「いう必要がない意味ってなんだよ。おい、全然意味が解らんぞ。馬鹿にしてんのか」
「悪かった。順は馬鹿だったな。そうだよ。そこだよ。でも、積み重なったものだからな、もっといろいろあるんだよ。あくまでとどめを刺されたのがそこだっただけだ」
順の野生の勘が働いて、仁が遥に惚れた瞬間がいつだったか予測され……黙秘権を行使しようとした仁だったが、順が馬鹿であったばかりに却下される。面倒くさくなった仁はそこだと白状したものの、あくまで積み重なったモノだという。
『一番は……やはり、受験だと思う。あの時は本当に迷惑をかけたし、ほんとうに感謝してる』
「……それはオレからもありがとう」
「……ライバルになることがわかっていたら手伝わなかったかもしれん」
「おいっ!」
「……いや、手伝ったか……好きなものが同じ人間というのがかなり重要だと数か月でわかってもきてる。遥にまとわりついてる悪友で僕にとっても友達程度だったが……ようやく親友に格上げだ」
「なんでおまえが上から目線だよっ……こっちはダチだってずっとおもってるっての」
遥が手元の手紙を読み終えて手紙を畳むのが見える。会場の人達が拍手の準備をするために手をあげる。しかし、遥は拍手の前に一言を付け加えた。
『次、こういう手紙を書くのは仁の結婚式ぐらいにしたい。できるだけ遠い方がいい。以上』
「…………だとよ。仁。振られてるんじゃね?」
「……僕の計画ではまだここは惚れさせる準備段階、助走だからな……べ、べつに、大丈夫だ……」
「大丈夫なら拍手してやれ、拍手」
仁はほんのりダメージを受け、順はそのダメージを受けた仁を少しだけ気遣ってやりながら、遥に向かって大きく拍手をするのであった。
「何をいうか順は聞いてないのか」
「聞いてるわけないだろ。俺だって初耳なんだからよ」
2人の関係は数か月前に友達からライバルに変わっている。
順には誕生日プレゼントは自分と一緒に用意するから個人的なものは渡されないはずと安心していたのにスピーチを用意しているという闇討ちに近い衝撃が走っている。
仁には遥が自分のために手紙を準備してくれていたという事実がただ嬉しいが……何を言われるかわからず……無自覚な刃が襲ってくるのではないかという恐怖があった。
『おそらく、一緒の学校に通うのは今年で最後になると思うから』
「んぐふっ……いや、遥の頭なら僕と一緒の所に通うことだって夢じゃないんだぞ」
「……諦めろ、オレがめっちゃ遊びに誘いまくってやるぜ」
早速無自覚な刃が仁を襲う。これについては遥は全く悪くない。仁が勝手に計画を立てて勝手に遥の頭を良くしようとしているだけなのである。
『幼稚園を卒業するころのアルバムを開いたら、俺の隣には絶対にお前がいて――』
「あの頃から親友だったからな……順と違って」
「べ、別に悔しくねぇし……」
「今度アルバムみせてやろうか。遥が見たであろう写真ももちろんあるぞ」
「絶対にみねぇ!」
順がぐぎぎと歯噛みする。先ほどの仕返しと言わんばかりに順を煽る仁。煽られて更に悔しそうな表情をしており、煽りは成功している。周りにいる人たちは順を気にし始める程度に順が不機嫌になっている。
『どこいく時も3人一緒だったよな。それは今でも変わっていないし、できればこれからも変えたくない』
「んぐふっ」
「んげっ」
次の遥の言葉は2人に同等のダメージを与える。しかし、これは同時に現段階ではどちらにも靡いていないということなのである。これまで以上に努力し……遊びに誘ってアプローチをしていけばあるいはどちらかに靡くかもしれない。同時に相手が遥と2人きりにならないように邪魔をしていけば……なんとかなるかもしれないということ……かもしれない。
『修学旅行で迷子になって知らない土地を一緒に歩き回った』
「……そういえば、なんか2人して怒られてるなとは思ったけどよ。ずるくね? ん? まて、おい、これか、お前これが原因か?」
「……黙秘する」
「おい、モクヒってなんだ。あとで遥に意味を聞くぞ」
「えげつない脅しをしかけるんじゃない。お前にいう必要がないって意味だ」
「いう必要がない意味ってなんだよ。おい、全然意味が解らんぞ。馬鹿にしてんのか」
「悪かった。順は馬鹿だったな。そうだよ。そこだよ。でも、積み重なったものだからな、もっといろいろあるんだよ。あくまでとどめを刺されたのがそこだっただけだ」
順の野生の勘が働いて、仁が遥に惚れた瞬間がいつだったか予測され……黙秘権を行使しようとした仁だったが、順が馬鹿であったばかりに却下される。面倒くさくなった仁はそこだと白状したものの、あくまで積み重なったモノだという。
『一番は……やはり、受験だと思う。あの時は本当に迷惑をかけたし、ほんとうに感謝してる』
「……それはオレからもありがとう」
「……ライバルになることがわかっていたら手伝わなかったかもしれん」
「おいっ!」
「……いや、手伝ったか……好きなものが同じ人間というのがかなり重要だと数か月でわかってもきてる。遥にまとわりついてる悪友で僕にとっても友達程度だったが……ようやく親友に格上げだ」
「なんでおまえが上から目線だよっ……こっちはダチだってずっとおもってるっての」
遥が手元の手紙を読み終えて手紙を畳むのが見える。会場の人達が拍手の準備をするために手をあげる。しかし、遥は拍手の前に一言を付け加えた。
『次、こういう手紙を書くのは仁の結婚式ぐらいにしたい。できるだけ遠い方がいい。以上』
「…………だとよ。仁。振られてるんじゃね?」
「……僕の計画ではまだここは惚れさせる準備段階、助走だからな……べ、べつに、大丈夫だ……」
「大丈夫なら拍手してやれ、拍手」
仁はほんのりダメージを受け、順はそのダメージを受けた仁を少しだけ気遣ってやりながら、遥に向かって大きく拍手をするのであった。
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