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一学期
とある日の手紙書き
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小遣いがピンチだからといって、オシャレな便箋や手紙を買う余裕すらないかと言えば……本当のところ全く持ってない。
バイトが禁止の高校生の悲しいところである。しかし、読まなくなったマンガを売ることでなんとか捻出できた。受験が近いから勉強の妨げになりそうなものを売りに行きたいと遥が相談すると遥の母親は仕事で疲れているだろうに車を出して売却の手続きまでしてくれた。
遥はなんとなく申し訳なり、売る予定のなかったマンガも全部うってしまう事にした。ドドがまだ読んでいた気がするが、遥の知るところでは無い。
「遥様! マンガがないんですが!?」
「仁のプレゼントのために犠牲になった」
「おっ、あっ、えっ、ぐっ……そ、そうですか」
遥が家に帰り事実に戻ると早速ドドがマンガを探してさまよっている所に出くわした。ドドは遥を見つけると遥に駆け寄りマンガの所在を確認するが……遥の答えに複雑そうな表情になる。ドドの横を通り勉強机に座り、買ったばかりのレターセットを取り出す。どうせ手紙を書くなら拘りたい……紙は数枚あるので少しなら失敗できるが、念には念を入れてバランスを見ながらノートに下書きを始める。
「ラブレターですか?」
「今までの感謝を込めた手紙だよ……それ以上でもそれ以下でもない」
「それ、電子メールでも良くないですか? 何故紙にこだわる必要が?」
出鼻をくじかれた遥は少しむすっとしながらドドに向き直るがドドは本当に分からない、不思議そうな表情で遥を見ていた。なんとなく毒気を抜かれて、遥は楽な姿勢になる。
「ドドは手書きってどう思う?」
「非効率的で資源の無駄かと、地球にある技術で思いを伝えるだけならボクは間違いなく電子メールか電話を選ぶと思います」
「うん、だいたいあってる。俺だってそう思う」
遥だって、面倒くさい。スマホなら漢字を間違えることは無いし、字も綺麗で誰だって読める。直接会わなくても直ぐに届く。手紙が電子メールに勝っている点はほとんどないと言っていい。
「なら、なぜ手紙なんです? 電子メールでも十分プレゼントになるのでは? 伝えてることは同じですよね?」
「非効率で資源を無駄にしてでも、伝えたいことだからだよ」
その昔、手紙でしかやり取り出来なかったころとは違う、今でしかない価値が手紙にはあると遥は……先生に教えてもらった。
「電子メールはどこでも見ることが出来る。スマホでもパソコンでもね……手紙に書かれた内容はこの手紙からしか読み取れない。この手紙は書かれた思いを伝えるためだけに存在する」
哲学的な話ではあるが、その先生の言葉で遥はしばらく国語が好きになった時期があった。長続きはしなかったが、今でも思い出せる。遥が作文の宿題をスマホで書いて印刷したものを持って言った時、先生は怒るでもなく諭してくれた。
「まぁ、めんどくさいのは本当だから出来ればやりたくないけど」
「ははぁ……なるほど……確かに手紙はスタンドアローンですから……消すにも手紙そのものを消さないと消えないですね」
ドドは納得したように頷く。遥は少し気分が良くなったのでレターセットから便箋と1枚の紙をドドに渡す。
「気が向いたらドドも記念に書いたらどうだ?」
「そうですね。ありがとうございます」
ドドが遥の机の隅の方を間借りしてボールペンを走らせる。宇宙人の文字に興味があった遥は紙を見つめていたが、しっかりと日本語もラーニングした後だったのか文字は漢字がところどころ混じる平仮名だった。なんとなく引っ掛かりを覚えたが遥は自分の手紙に向き直ることにした。
バイトが禁止の高校生の悲しいところである。しかし、読まなくなったマンガを売ることでなんとか捻出できた。受験が近いから勉強の妨げになりそうなものを売りに行きたいと遥が相談すると遥の母親は仕事で疲れているだろうに車を出して売却の手続きまでしてくれた。
遥はなんとなく申し訳なり、売る予定のなかったマンガも全部うってしまう事にした。ドドがまだ読んでいた気がするが、遥の知るところでは無い。
「遥様! マンガがないんですが!?」
「仁のプレゼントのために犠牲になった」
「おっ、あっ、えっ、ぐっ……そ、そうですか」
遥が家に帰り事実に戻ると早速ドドがマンガを探してさまよっている所に出くわした。ドドは遥を見つけると遥に駆け寄りマンガの所在を確認するが……遥の答えに複雑そうな表情になる。ドドの横を通り勉強机に座り、買ったばかりのレターセットを取り出す。どうせ手紙を書くなら拘りたい……紙は数枚あるので少しなら失敗できるが、念には念を入れてバランスを見ながらノートに下書きを始める。
「ラブレターですか?」
「今までの感謝を込めた手紙だよ……それ以上でもそれ以下でもない」
「それ、電子メールでも良くないですか? 何故紙にこだわる必要が?」
出鼻をくじかれた遥は少しむすっとしながらドドに向き直るがドドは本当に分からない、不思議そうな表情で遥を見ていた。なんとなく毒気を抜かれて、遥は楽な姿勢になる。
「ドドは手書きってどう思う?」
「非効率的で資源の無駄かと、地球にある技術で思いを伝えるだけならボクは間違いなく電子メールか電話を選ぶと思います」
「うん、だいたいあってる。俺だってそう思う」
遥だって、面倒くさい。スマホなら漢字を間違えることは無いし、字も綺麗で誰だって読める。直接会わなくても直ぐに届く。手紙が電子メールに勝っている点はほとんどないと言っていい。
「なら、なぜ手紙なんです? 電子メールでも十分プレゼントになるのでは? 伝えてることは同じですよね?」
「非効率で資源を無駄にしてでも、伝えたいことだからだよ」
その昔、手紙でしかやり取り出来なかったころとは違う、今でしかない価値が手紙にはあると遥は……先生に教えてもらった。
「電子メールはどこでも見ることが出来る。スマホでもパソコンでもね……手紙に書かれた内容はこの手紙からしか読み取れない。この手紙は書かれた思いを伝えるためだけに存在する」
哲学的な話ではあるが、その先生の言葉で遥はしばらく国語が好きになった時期があった。長続きはしなかったが、今でも思い出せる。遥が作文の宿題をスマホで書いて印刷したものを持って言った時、先生は怒るでもなく諭してくれた。
「まぁ、めんどくさいのは本当だから出来ればやりたくないけど」
「ははぁ……なるほど……確かに手紙はスタンドアローンですから……消すにも手紙そのものを消さないと消えないですね」
ドドは納得したように頷く。遥は少し気分が良くなったのでレターセットから便箋と1枚の紙をドドに渡す。
「気が向いたらドドも記念に書いたらどうだ?」
「そうですね。ありがとうございます」
ドドが遥の机の隅の方を間借りしてボールペンを走らせる。宇宙人の文字に興味があった遥は紙を見つめていたが、しっかりと日本語もラーニングした後だったのか文字は漢字がところどころ混じる平仮名だった。なんとなく引っ掛かりを覚えたが遥は自分の手紙に向き直ることにした。
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