上 下
28 / 80
一学期

ある日のお料理教室作戦会議

しおりを挟む
「くひひひひひひひひっ! 遥様はもう学校中で彼氏持ちだと思われてるとかっ! ボクも頑張ってきた甲斐があったというものですねっ! はぁ、お腹痛いです……それで、お料理はどうするんですか?」
「どうするもこうするも……教えるけどさ」

 遥はバカ笑いしているドドを尻目に連絡先を交換した瀧男との料理教室の打ち合わせを軽くすると同時に噂について聞いてみた。

 遥には彼氏がいる。
 瀧男に詳しく聞いたところ、どうやら4月の終わりぐらいからこの噂が出始めたらしい。そして、ゴールデンウィークが終わった今朝にデートの目撃情報が一気に増えたことから、噂が真実味を帯び、学校中に知れ渡る事になったらしい。
 そのデートの目撃情報では彼氏に弁当を作って持っていっていたとか、2人の彼氏を侍らせていたとか、胃袋で彼氏をものにしていた等、色んな噂があったようである。
 
「んー。しかし、お料理教室ですか……」
「弁当の作り方を教えるだけだけどな。唐揚げとハンバーグ……弁当にするには難易度高いけど教えがいがある」

 ゴールデンウィークの間、作りまくったメニューである。この2つに関しては経験値がかなり溜まっている。

「確かにアレは絶品でしたね。ボクもお弁当ということで外で食べさせて頂きましたが……なかなかどうして風景と一緒に食べるという感覚というのでしょうか」
「あまりもんだったが、そう言われると悪い気はしない……が、最近、富士山頂近くで2度ほど未確認飛行物体が目撃されたらしいぞ」
「………………あとで記憶を消しておきましょう」


 瀧男はこのUFOの話をゴールデンウィーク明けの教室で話そうと思っていたらしい。しかし、その噂が霞んでしまうほど、遥に……男子校で付き合っているクラスメイトがいるかもしれないという衝撃は凄かったのだろう。

「そうだ、そのお料理教室、おふたりが居たら何か不都合ありますか?」
「……いや、ないけど」
「では、こちらで偶然予定が空くように調整しますね!」

 偶然予定が空くように調整……日本語として間違っていないのに根本から間違っているように感じる言葉である。

「それなら、瀧男には何か食材じゃなくお土産を持ってくるように言っておく」
「はいっお任せ下さい!」

 ぺこぺこ。

 丁度、瀧男から連絡が来る。先輩相手でも物怖じしない性格なのだろう。内容は先程から世間話になっている。

『そういえば、センパイ知ってます? アメリカでもUFOが目撃されてたんですよ。牛を1匹連れ去った、いわゆるキャトルミューティレーションがあったって、動画も残ってるみたいで、見ますか?』
『そうなのか、すごく興味をそそられるので知ってる限り色々教えてくれると助かる。それと、食材はこっちでなんとかするからお菓子があると助かる。今、外国の子がホームステイしてて、是非ともそいつにも宇宙人の話をしてやってくれ』

 遥は無表情で瀧男に連絡を返す。たぶん、違うだろうと思いながらも念の為確認する。

「ドド、この間、弁当に使わせてもらった肉ってアメリカの牛か?」
「えっ!? わかるんですか? お腹に入ればなんでも同じそうな年齢なのにグルメなんですね。和牛がいいなら次のお料理教室の時は用意しますよ?」

 遥は疲れた表情で瀧男から遅れてきたUFOの動画を突きつける。
 不思議なことに次の日には、世間に溢れる動画どころか瀧男とのやり取りもほとんどきれいさっぱり……UFOに関する発言だけ無くなっていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

さよならイクサ

現代文学 / 完結 24h.ポイント:994pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:518pt お気に入り:0

息抜き庭キャンプ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,128pt お気に入り:8

飯がうまそうなミステリ

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:0

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:404pt お気に入り:1

梓山神社のみこ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:426pt お気に入り:0

呂布奉先という男

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,385pt お気に入り:1

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:0

処理中です...