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一学期
ある日の居残りひみつきち
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遥は用事を思い出したと言って、ひみつきちだった場所から逃げるように出ていってしまった。ここに残されたのは仁と順の2人だった。
ふたりの間にはなんとも言えない空気が流れている。目の前にいる幼なじみは果たして自分のライバルなのか、そうだとしたらどの程度進んでいるのか。
「……で? 順はいつからなんだ?」
「……別にお前にはカンケーないし」
口火を切ったのは仁だった。順は仁の質問にイラッとしたのを表情に出しながらそっぽを向く。
「都合が悪くなると人の顔を見ないのは変わらないな……ちょっと失礼するぞ」
「あ、おいっ」
仁はタイムカプセルの茶筒を開けて中から自分に宛てた手紙を取り出す。10年後に宛てた物でもう少し先に開けるべきものだが、仁は躊躇なく手紙を開ける。
『10年後の自分へ。
僕のことだから地元からなるべく離れないいい大学に進んでいると思います。遥の学力アップ作戦が功を奏していれば同じ高校で、同じ大学に進んだことでしょう。
遥に告白する最低限の準備としていい企業に就職する……あと2年以内に叶いそうですか? 覚えていると思いますが、挫けそうならこの言葉を思い出してください。遥の夢である主夫を叶えるのは僕だと。
今年、12歳の自分より
PS:順とは腐れ縁が続いてると思うが数少ないふざけられる友達なので大切にしろ」
「ふむ……改めて考えると遥はこの頃から主夫になりたいなんて夢があるのか無いのかよく分からないことを言ってたんだな」
「おまっ……この頃からなのか!?」
「あぁ、そうだぞ。正確には10歳ぐらいの時からか……」
手紙を読み終わると堪らず順が驚きの声をあげる。12歳の少年が10年後の自分にあてて書くには余りにもキッチリとしすぎた手紙。人生設計が順調に進んでいるかの確認の手紙である。
「一応聞いておく。僕を応援する気はあるのか?」
「いや、ねぇけど」
「なら、邪魔するつもりは?」
「…………それもねぇ」
「どうしてだ?」
「あぁ、もううっせぇな! わかった! オレも遥が好き! それでいいだろうが! だから、応援はしねぇし、邪魔もする!」
順が吹っ切れたように大声を出す。今はしっかりと仁の顔を見据えで怯えた子犬のように震えながらの宣言だ。
「オレはオレのやり方で、遥をモノにしてやる! 仁の計画なんか知ったことか!」
順の知る限り……仁は約束を守るし、言ったことを全て実現させてきた、有言実行の男だ。だから、仁がそう言った計画を立てているなら本当に実現されそうで怖かった。
仁も順をしっかりと見ていたが、同時にとても困っていた。しかし、それを悟られまいと負けじと声を大きくする。
「遥はモノではないからな……決めるのは遥だ」
順が中学時代に荒れて悪い奴らとつるんでいる間も遥は順とずっと友達でいた。仁は詳しく知らないが、高校受験直前で順が高校を受験すると言い始めた。遥もせっかく学力を上げたのに順と同じ高校を受験すると言い始めたのだ。
決めるのは遥。そういう意味では仁は一度、順に負けていた。仕方なく、順の勉強を手伝って仁が学力を落として受験してもギリギリ不自然では無い高校レベルまで引き上げることになった。
2人にとってライバルになる幼なじみは強敵に思えたが、お互いに自信があった。
「順には悪いが負ける気はしない」
「オレだってそうだ」
何故なら。
「「最近、遥からのボディタッチが多い気がするからな」」
見事にハモった。しばしの間、沈黙が流れる。
「そうか、お前もか」
「ま、まぁ、そうだな、オレもそうだ」
こうして2人はようやく、ライバルを目の当たりにし競争心に火がつくのであった。
ふたりの間にはなんとも言えない空気が流れている。目の前にいる幼なじみは果たして自分のライバルなのか、そうだとしたらどの程度進んでいるのか。
「……で? 順はいつからなんだ?」
「……別にお前にはカンケーないし」
口火を切ったのは仁だった。順は仁の質問にイラッとしたのを表情に出しながらそっぽを向く。
「都合が悪くなると人の顔を見ないのは変わらないな……ちょっと失礼するぞ」
「あ、おいっ」
仁はタイムカプセルの茶筒を開けて中から自分に宛てた手紙を取り出す。10年後に宛てた物でもう少し先に開けるべきものだが、仁は躊躇なく手紙を開ける。
『10年後の自分へ。
僕のことだから地元からなるべく離れないいい大学に進んでいると思います。遥の学力アップ作戦が功を奏していれば同じ高校で、同じ大学に進んだことでしょう。
遥に告白する最低限の準備としていい企業に就職する……あと2年以内に叶いそうですか? 覚えていると思いますが、挫けそうならこの言葉を思い出してください。遥の夢である主夫を叶えるのは僕だと。
今年、12歳の自分より
PS:順とは腐れ縁が続いてると思うが数少ないふざけられる友達なので大切にしろ」
「ふむ……改めて考えると遥はこの頃から主夫になりたいなんて夢があるのか無いのかよく分からないことを言ってたんだな」
「おまっ……この頃からなのか!?」
「あぁ、そうだぞ。正確には10歳ぐらいの時からか……」
手紙を読み終わると堪らず順が驚きの声をあげる。12歳の少年が10年後の自分にあてて書くには余りにもキッチリとしすぎた手紙。人生設計が順調に進んでいるかの確認の手紙である。
「一応聞いておく。僕を応援する気はあるのか?」
「いや、ねぇけど」
「なら、邪魔するつもりは?」
「…………それもねぇ」
「どうしてだ?」
「あぁ、もううっせぇな! わかった! オレも遥が好き! それでいいだろうが! だから、応援はしねぇし、邪魔もする!」
順が吹っ切れたように大声を出す。今はしっかりと仁の顔を見据えで怯えた子犬のように震えながらの宣言だ。
「オレはオレのやり方で、遥をモノにしてやる! 仁の計画なんか知ったことか!」
順の知る限り……仁は約束を守るし、言ったことを全て実現させてきた、有言実行の男だ。だから、仁がそう言った計画を立てているなら本当に実現されそうで怖かった。
仁も順をしっかりと見ていたが、同時にとても困っていた。しかし、それを悟られまいと負けじと声を大きくする。
「遥はモノではないからな……決めるのは遥だ」
順が中学時代に荒れて悪い奴らとつるんでいる間も遥は順とずっと友達でいた。仁は詳しく知らないが、高校受験直前で順が高校を受験すると言い始めた。遥もせっかく学力を上げたのに順と同じ高校を受験すると言い始めたのだ。
決めるのは遥。そういう意味では仁は一度、順に負けていた。仕方なく、順の勉強を手伝って仁が学力を落として受験してもギリギリ不自然では無い高校レベルまで引き上げることになった。
2人にとってライバルになる幼なじみは強敵に思えたが、お互いに自信があった。
「順には悪いが負ける気はしない」
「オレだってそうだ」
何故なら。
「「最近、遥からのボディタッチが多い気がするからな」」
見事にハモった。しばしの間、沈黙が流れる。
「そうか、お前もか」
「ま、まぁ、そうだな、オレもそうだ」
こうして2人はようやく、ライバルを目の当たりにし競争心に火がつくのであった。
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