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第104話 ありがとな
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試合終了。
あの怖かった3年生達が子供の様に泣いている。
だがそれ以上に泣いていたのは祐輝だった。
自分が誰かのためにここまで泣けるとは思わなかった。
泣きながらスタンドを降りていくとベンチから出てくる3年生達が同じく泣いていた。
監督が3年生の頭をなでながら「良くやったぞ」と声を震わせながら褒めていた。
そして最後の挨拶が行われた。
千野が選手全員に向かって深々と一礼した。
「こんな俺についてきてくれて本当にありがとう。 お前ら頑張れよ。」
完結な言葉だった。
後を託された後輩達は先輩のためにも強くならなくてはならない。
だがそれ以上に2年生達は解放感に包まれていた。
やっと俺達の天下だと。
解散して各々が帰宅していく中で3年生達は近くのレストランで食事をする事になった。
祐輝は最後に千野の前に立った。
すると千野は無邪気な子供の様な笑顔で「ありがとな」と祐輝の肩をポンポンと叩いた。
千野は笑っていた。
号泣している祐輝の表情とはあまりに対称的だった。
「お世話になりました・・・」
思い返してみると短い時間だった。
だが祐輝にとっては素晴らしい時間だった。
そしてこう思った。
もう二度とここまで尊敬する人はいないだろうと。
横柄で暴力的だったが、強い信念を持った千野は実に漢らしく輝いて見えた。
祐輝も駅に向かって歩いていくと次の試合に挑む別の高校が集団で歩いてきた。
「祐輝君!?」
聞き慣れた声に思わず顔を上げるとそこにはミズキが立っていた。
女子高生の制服が非常に似合っている。
スカートも短くして美脚を活かしていた。
驚いた祐輝はミズキの顔を見ていた。
「久しぶり。」
「祐輝君野球部だったんだね!!」
「もう投げられないけどな。」
「そっか・・・でも祐輝君が野球好きで良かったよお。」
嬉しそうに話しているミズキは少し大人っぽくなっていた。
髪型もショートカットに変えている。
ずっとロングだったミズキがショートカットに変えていたがとても似合っていた。
そして祐輝は「ここで何しているの?」と尋ねると「私はマネージャーなんだよね」と微笑んでいた。
ミズキの後ろで歩いていく選手達はとても体が大きく、屈強な選手だった。
東京の超名門高校である関東高校へ進学したミズキは東京で一番の球児達と野球をしていた。
「そっかあ・・・」
「祐輝君がいれば絶対に甲子園に行けたのに。」
「そんな事ねえよ。」
「ミズキ行くぞ。 誰?」
ミズキの隣に立っている大きな体の球児は祐輝を見ている。
「私の幼馴染だよ」と返すと球児はペコリと一礼したがどこか上から目線にも見えた。
「早く行くぞミズキ」と口にしながら仲間と共に歩いていった。
「ご、ごめんね。 もう行かなくちゃ。」
「ミズキまたな。」
「うん! また会おうね!」
いつだってミズキは励ましてくれた。
「祐輝君がいれば甲子園に行けた」という言葉が脳裏に焼き付いていた。
もし自分が関東高校へ進学できてそこでエースになり、ミズキと共に甲子園に行ければ人生で最高の思い出になった。
「まあ現実は甘くないか。」
だが皮肉な事にその年の甲子園には関東高校が出場した。
ミズキはスタンドで見ていたが1年生にして聖地甲子園に行ってしまった。
家のテレビで何度も映るミズキを無言で見ていた。
あの怖かった3年生達が子供の様に泣いている。
だがそれ以上に泣いていたのは祐輝だった。
自分が誰かのためにここまで泣けるとは思わなかった。
泣きながらスタンドを降りていくとベンチから出てくる3年生達が同じく泣いていた。
監督が3年生の頭をなでながら「良くやったぞ」と声を震わせながら褒めていた。
そして最後の挨拶が行われた。
千野が選手全員に向かって深々と一礼した。
「こんな俺についてきてくれて本当にありがとう。 お前ら頑張れよ。」
完結な言葉だった。
後を託された後輩達は先輩のためにも強くならなくてはならない。
だがそれ以上に2年生達は解放感に包まれていた。
やっと俺達の天下だと。
解散して各々が帰宅していく中で3年生達は近くのレストランで食事をする事になった。
祐輝は最後に千野の前に立った。
すると千野は無邪気な子供の様な笑顔で「ありがとな」と祐輝の肩をポンポンと叩いた。
千野は笑っていた。
号泣している祐輝の表情とはあまりに対称的だった。
「お世話になりました・・・」
思い返してみると短い時間だった。
だが祐輝にとっては素晴らしい時間だった。
そしてこう思った。
もう二度とここまで尊敬する人はいないだろうと。
横柄で暴力的だったが、強い信念を持った千野は実に漢らしく輝いて見えた。
祐輝も駅に向かって歩いていくと次の試合に挑む別の高校が集団で歩いてきた。
「祐輝君!?」
聞き慣れた声に思わず顔を上げるとそこにはミズキが立っていた。
女子高生の制服が非常に似合っている。
スカートも短くして美脚を活かしていた。
驚いた祐輝はミズキの顔を見ていた。
「久しぶり。」
「祐輝君野球部だったんだね!!」
「もう投げられないけどな。」
「そっか・・・でも祐輝君が野球好きで良かったよお。」
嬉しそうに話しているミズキは少し大人っぽくなっていた。
髪型もショートカットに変えている。
ずっとロングだったミズキがショートカットに変えていたがとても似合っていた。
そして祐輝は「ここで何しているの?」と尋ねると「私はマネージャーなんだよね」と微笑んでいた。
ミズキの後ろで歩いていく選手達はとても体が大きく、屈強な選手だった。
東京の超名門高校である関東高校へ進学したミズキは東京で一番の球児達と野球をしていた。
「そっかあ・・・」
「祐輝君がいれば絶対に甲子園に行けたのに。」
「そんな事ねえよ。」
「ミズキ行くぞ。 誰?」
ミズキの隣に立っている大きな体の球児は祐輝を見ている。
「私の幼馴染だよ」と返すと球児はペコリと一礼したがどこか上から目線にも見えた。
「早く行くぞミズキ」と口にしながら仲間と共に歩いていった。
「ご、ごめんね。 もう行かなくちゃ。」
「ミズキまたな。」
「うん! また会おうね!」
いつだってミズキは励ましてくれた。
「祐輝君がいれば甲子園に行けた」という言葉が脳裏に焼き付いていた。
もし自分が関東高校へ進学できてそこでエースになり、ミズキと共に甲子園に行ければ人生で最高の思い出になった。
「まあ現実は甘くないか。」
だが皮肉な事にその年の甲子園には関東高校が出場した。
ミズキはスタンドで見ていたが1年生にして聖地甲子園に行ってしまった。
家のテレビで何度も映るミズキを無言で見ていた。
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