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第25話 そりゃ男だから喧嘩ぐらいするわ
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祐輝の中にある「戦い」の才能。
しかしそれは不良とも言える。
祐輝は格闘技ではなく、野球をやっているのだ。
エースとして名門校を目指すなら喧嘩はしてはいけない。
当然の事だった。
週末になりナインズの練習に行く。
「おー祐輝。 ランニングからやれい。 ストレッチしてピッチング入るぞ。」
「はい。」
「なんだてめえその返事は?」
「はい!」
「よーし。 行け!」
佐藤コーチ。
祐輝に野球の楽しさを教えてくれた大切な存在だ。
そんな佐藤コーチもまた。
かつては不良でもあった。
「はあ・・・はあ・・・佐藤コーチ。 終わりました。」
「おーし。 ストレッチやれい!」
「はい!」
「そうだお前。 喧嘩とかするのか?」
「・・・・・・えっと・・・」
「お前してんな?」
怒られると思った祐輝は目をそらしてストレッチをしている。
しかし佐藤コーチはニヤニヤとしながらタバコに火をつけている。
何やら楽しげにしている。
「女いるか?」
「ええ!? い、いないです。」
「裸見た事あんのか?」
「・・・そ、それはまあ・・・」
「はっはっはっは!!!! なんだお前意外と純粋じゃねえか。」
「ストレッチ終わりました。」
「よーし。」
佐藤コーチはピッチャーマウンドへと歩いていく。
そして祐輝も後ろについてピッチャーマウンドへと行く。
キャッチャーには同じ1年生の健太が座った。
そして佐藤コーチは腕を組んで見ている。
祐輝は投球練習を始めた。
速いストレートを投げると健太はまるで捕球できずにいた。
顔を歪めた祐輝はボールを握って健太を見ている。
健太はもう一度キャッチャーミットを構えた。
「そうだ。 コーチ。 なんで俺が喧嘩しているのか聞いたんですか?」
「おいコラッ!! てめえここ何処だと思ってんだ!!! マウンドはな。 ピッチャーの聖地なんだよ。 外野まで走ってこい!!!」
「!!!!!」
驚いた祐輝は外野まで全力疾走して戻って来た。
呼吸を整えて祐輝はもう一度健太に向かってボールを投げた。
しかし健太は捕球できなかった。
険しい表情で健太を見ている。
そしてもう一度投げた。
だが捕れない。
苛立ちを隠せない祐輝は不貞腐れ始める。
「祐輝悪い。 もう一度。」
「ちゃんと捕れよ。」
「おいコラッ!!」
「!!!!」
「てめえなんだその言いぐさは? てめえの投げたボールも健太の構えた所にいってねえぞ!!! 外野まで走ってこい!!!」
「は、はい!!」
ピッチャーとして素晴らしいデビューを飾った祐輝だったが日頃の練習は過酷そのものだった。
佐藤コーチの厳しさは尋常ではなく走っては投球をしての繰り返しだった。
ピッチャーとは下半身の筋力が求められるポジションである。
当然腕や腹筋も大事だが何よりも下半身。
試合では主役の様に輝くポジションだが、日頃の練習は地味で苦しい練習ばかりだった。
クタクタになって1日の練習を終えた祐輝はストレッチをしている。
するとニヤニヤしながら佐藤コーチが話しかけてくる。
「おー祐輝。 いい球だったぞ。」
「ありがとうございます。」
「マウンドは聖地。 忘れるなよ。」
「はい。」
「ここは聖地じゃねえ。 グラウンドの外だからな。 立派な野球人は切り替えが大事なんだよ。 はっはっはっはっは!!!」
普段は陽気で優しい佐藤コーチ。
しかし甲子園に出た経験のある佐藤コーチは野球となるとまるで別人になる。
特に祐輝達の様に若く未来のある少年には格別に厳しかった。
野球をやるにはまず取り組み姿勢が求められる。
中学1年生とは思えないストレートを投げようが、同級生より体が大きかろうが。
野球への取り組み姿勢がなっていない者は認めない。
それが佐藤コーチの野球哲学だった。
「お前がマウンドでヘラヘラする様に女の話しをしたんだ。」
「すいません!!」
「切り替えだぞ切り替え。 野球には真面目にな。 喧嘩したっていいさ。 中学生のガキは喧嘩するぐらいがいいんだよ。」
「はい。」
「それで。 女の裸見た事あるのかお前!?」
佐藤コーチは厳しかった。
しかし祐輝は嬉しかった。
真面目に自分に向き合ってくれる。
成長を褒めてくれるし間違っている事は本気で叱ってくれる。
ずっと求めていた事だった。
しかしそれは不良とも言える。
祐輝は格闘技ではなく、野球をやっているのだ。
エースとして名門校を目指すなら喧嘩はしてはいけない。
当然の事だった。
週末になりナインズの練習に行く。
「おー祐輝。 ランニングからやれい。 ストレッチしてピッチング入るぞ。」
「はい。」
「なんだてめえその返事は?」
「はい!」
「よーし。 行け!」
佐藤コーチ。
祐輝に野球の楽しさを教えてくれた大切な存在だ。
そんな佐藤コーチもまた。
かつては不良でもあった。
「はあ・・・はあ・・・佐藤コーチ。 終わりました。」
「おーし。 ストレッチやれい!」
「はい!」
「そうだお前。 喧嘩とかするのか?」
「・・・・・・えっと・・・」
「お前してんな?」
怒られると思った祐輝は目をそらしてストレッチをしている。
しかし佐藤コーチはニヤニヤとしながらタバコに火をつけている。
何やら楽しげにしている。
「女いるか?」
「ええ!? い、いないです。」
「裸見た事あんのか?」
「・・・そ、それはまあ・・・」
「はっはっはっは!!!! なんだお前意外と純粋じゃねえか。」
「ストレッチ終わりました。」
「よーし。」
佐藤コーチはピッチャーマウンドへと歩いていく。
そして祐輝も後ろについてピッチャーマウンドへと行く。
キャッチャーには同じ1年生の健太が座った。
そして佐藤コーチは腕を組んで見ている。
祐輝は投球練習を始めた。
速いストレートを投げると健太はまるで捕球できずにいた。
顔を歪めた祐輝はボールを握って健太を見ている。
健太はもう一度キャッチャーミットを構えた。
「そうだ。 コーチ。 なんで俺が喧嘩しているのか聞いたんですか?」
「おいコラッ!! てめえここ何処だと思ってんだ!!! マウンドはな。 ピッチャーの聖地なんだよ。 外野まで走ってこい!!!」
「!!!!!」
驚いた祐輝は外野まで全力疾走して戻って来た。
呼吸を整えて祐輝はもう一度健太に向かってボールを投げた。
しかし健太は捕球できなかった。
険しい表情で健太を見ている。
そしてもう一度投げた。
だが捕れない。
苛立ちを隠せない祐輝は不貞腐れ始める。
「祐輝悪い。 もう一度。」
「ちゃんと捕れよ。」
「おいコラッ!!」
「!!!!」
「てめえなんだその言いぐさは? てめえの投げたボールも健太の構えた所にいってねえぞ!!! 外野まで走ってこい!!!」
「は、はい!!」
ピッチャーとして素晴らしいデビューを飾った祐輝だったが日頃の練習は過酷そのものだった。
佐藤コーチの厳しさは尋常ではなく走っては投球をしての繰り返しだった。
ピッチャーとは下半身の筋力が求められるポジションである。
当然腕や腹筋も大事だが何よりも下半身。
試合では主役の様に輝くポジションだが、日頃の練習は地味で苦しい練習ばかりだった。
クタクタになって1日の練習を終えた祐輝はストレッチをしている。
するとニヤニヤしながら佐藤コーチが話しかけてくる。
「おー祐輝。 いい球だったぞ。」
「ありがとうございます。」
「マウンドは聖地。 忘れるなよ。」
「はい。」
「ここは聖地じゃねえ。 グラウンドの外だからな。 立派な野球人は切り替えが大事なんだよ。 はっはっはっはっは!!!」
普段は陽気で優しい佐藤コーチ。
しかし甲子園に出た経験のある佐藤コーチは野球となるとまるで別人になる。
特に祐輝達の様に若く未来のある少年には格別に厳しかった。
野球をやるにはまず取り組み姿勢が求められる。
中学1年生とは思えないストレートを投げようが、同級生より体が大きかろうが。
野球への取り組み姿勢がなっていない者は認めない。
それが佐藤コーチの野球哲学だった。
「お前がマウンドでヘラヘラする様に女の話しをしたんだ。」
「すいません!!」
「切り替えだぞ切り替え。 野球には真面目にな。 喧嘩したっていいさ。 中学生のガキは喧嘩するぐらいがいいんだよ。」
「はい。」
「それで。 女の裸見た事あるのかお前!?」
佐藤コーチは厳しかった。
しかし祐輝は嬉しかった。
真面目に自分に向き合ってくれる。
成長を褒めてくれるし間違っている事は本気で叱ってくれる。
ずっと求めていた事だった。
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